「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選」に寄せた著名人のコメントが到着した。
37年の生涯で40本以上もの作品を手がけ、ヴィム・ヴェンダース、ヴェルナー・ヘルツォークらと並んで“ニュー・ジャーマン・シネマ”の代表格と称されたドイツの映画監督
翻訳家で文芸評論家の鴻巣友季子は「マリア・ブラウンの結婚」について「なんて美しく残酷な物語だろう。大戦からの復興期は『愛に向かない時代』だった。マリアのそれのように、したたかに見えて壊れやすい愛を無数に踏みつけていった」と述べ、映画文筆家の児玉美月は「不安は魂を食いつくす」について「ファスビンダーの紡ぐ残酷に美しい映像が、こんな汚れた街で魂はいかに存在できるのかと問う」とつづった。
また作家で演出家の
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選は、7月28日より東京のBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次開催。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選
2023年7月28日(金)~ 東京都 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか
<上映作品一覧>
「不安は魂を食いつくす」
「天使の影」
「マリア・ブラウンの結婚」
鴻巣友季子(翻訳家 / 文芸評論家)コメント
「マリア・ブラウンの結婚」に寄せて
なんて美しく残酷な物語だろう。大戦からの復興期は「愛に向かない時代」だった。
マリアのそれのように、したたかに見えて壊れやすい愛を無数に踏みつけていった。
児玉美月(映画文筆家)コメント
「不安は魂を食いつくす」に寄せて
老境に差しかかった女と、彼女より二十も下の移民の男。
世界に私たち二人だけだったならよかったのに、と女は切なげに呟き、
悪意に満ちたまなざしを向けられつづける暴力性に、恋人たちの関係はただ摩滅してゆく。
ファスビンダーの紡ぐ残酷に美しい映像が、こんな汚れた街で魂はいかに存在できるのかと問う。
千木良悠子(作家 / 演出家)コメント
「天使の影」に寄せて
私は2013年と2015年、この映画の原作である演劇の戯曲「ゴミ、都市そして死」を何の気なしに制作・演出し、その結果、ベルリンに4年半も住む羽目になりました。今改めて見ると、これはメロドラマの体裁を借りてはいるが、抽象化されたドイツの現実そのものです。ドイツで近代に神が死んだとされ、史上最悪の戦争犯罪が遂行された後に来た現代を、ファスビンダーは国家と欲望と資本主義の三者が奏でるオペラとして、正確に描き出しました。東西ドイツ統一後もこの「悪夢=現実」の霧は濃くなる一方で、日本もまた同様です。皆様もぜひご覧になって、運命の歯車を狂わされてみてください。
中原昌也(ミュージシャン / 作家)
入院生活が長くて、ぱーっとファスビンダーが見たい! どれも軽快とは程遠い恋愛劇
猫沢エミ(ミュージシャン / 文筆家)
「不安は魂を食いつくす」に寄せて
「なんだよエミ~!? アリにクスクスくらい作ってやれよ!!」と私と同名の女に叫びつつ、
やっぱり私はファスビンダーの《獣道》を観て以来、彼の描く、反吐が出るほど頭が
悪くて純粋な人間群像が大好きなんだなと再確認した次第。
真魚八重子(映画評論家)
サディスティックなファスビンダーの映画が重んじたのは“愛”だった。一方的な感情は屈辱や嘲笑で返され、優しさを求めて貢いでも微笑すら戻らない。だが残酷な運命を辿ろうと、生きる原動力こそ無償の愛なのだ。
🕊️⛵️🌴🥥鴻巣友季子(『灯台へ』『老いぼれを燃やせ』『ほんのささやかなこと』 @yukikonosu
ファズビンダーの「マリア・ブラウンの結婚」じつに40数年ぶりに再見いたしました!コメントを書きましたのでごらんください。
昭和55年の初公開時は「フランス映画社Bowシリーズ」提供でした🎬 https://t.co/L2nevsfh6q