“死の天使”に寵愛された男が真の地獄を語る、ドキュメンタリー「メンゲレと私」公開

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「ホロコースト証言シリーズ」第3弾にして最終作となるドキュメンタリー映画「A Boy's Life」の邦題が「メンゲレと私」に決定。12月3日より東京・東京都写真美術館ホールで公開され、以降、大阪・第七藝術劇場、沖縄・桜坂劇場で上映されることがわかった。

「メンゲレと私」より、ダニエル・ハノッホ。

「メンゲレと私」より、ダニエル・ハノッホ。

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「メンゲレと私」場面写真

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本作の語り部はリトアニア出身のユダヤ人、ダニエル・ハノッホ。彼は9歳でカウナス郊外のゲットーに送られ、12歳でアウシュヴィッツ強制収容所に連行された。金髪の美少年だったハノッホはそこで、非人道的な人体実験を行い“死の天使”と呼ばれた医師ヨーゼフ・メンゲレの寵愛を受け、特異な収容所生活を送る。しかしハノッホが見た真の地獄は、連合軍の攻勢から逃れるため強制的に連れていかれた“死の行進”だった。彼は暴力、伝染病、カニバリズムが横行する人類史の最暗部を目撃する。YouTubeでは特報が公開中だ。

左からブルンヒルデ・ポムゼル、ダニエル・ハノッホ、マルコ・ファインゴルト。

左からブルンヒルデ・ポムゼル、ダニエル・ハノッホ、マルコ・ファインゴルト。[拡大]

「ホロコースト証言シリーズ」はオーストリア・ウィーンを拠点に活動している製作プロダクション「ブラックボックス・フィルム」のクリスティアン・クレーネスフロリアン・ヴァイゲンザマーが手がけるドキュメンタリーシリーズ。3部作で構成されており、1本につき1名の証言者が登場し、異なる立場から戦争の記憶を証言する。第1弾「ゲッベルスと私」には、ナチス宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書を3年間務めたブルンヒルデ・ポムゼルが登場。第2弾「ユダヤ人の私」では、4つの強制収容所に送られるもかろうじて生還したマルコ・ファインゴルトが自身の数奇な体験を語った。

なおハノッホをイスラエル・テルアビブから日本に招き、シリーズ3部作の劇場公開を完結させ、さらにBlu-rayボックスを製作するためのクラウドファンディングをCAMPFIRE(キャンプファイヤー)で展開。ハノッホのコメント映像がYouTubeで公開されている。来日に向けて届いた各劇場担当者からのコメントは以下の通り。

中村浩美、遠山樹里(東京都写真美術館)コメント

昨今美術界では、文字史料のみに依らず、当事者へのインタヴューを介した口述史料<オーラル・ヒストリー>が注目されています。その理由はふたつ。当事者の個人的な記憶を人類の記憶として共有する術となり得ること、そしてそれを次代へと継承する意義があること。微力ながら、当館での上映+トークがその一助となれば幸いです。

小坂誠(第七藝術劇場・支配人)コメント

岩波ホールの閉館により日本での完結が危ぶまれた「ホロコースト証言シリーズ」ですが、サニーフィルムの有田さんから今回のプロジェクトを聞いた時、この映画にとって最善の未来が見えました。元・岩波ホールの矢本さんと共に新しい「日本公開」のかたちにチャレンジされます。本プロジェクトにより来日される証言者ダニエル・ハノッホ氏と監督は、大阪の観客にも戦争の圧倒的な現実を伝えてくれることでしょう。我々の映画館からその影響を日本の社会に波紋のように広げられるよう努力します。

下地久美子(桜坂劇場)コメント

御歳91歳のダニエル・ハノッホ氏に、過酷な長旅をお願いしている状況には、正直「心苦しい」という思いが込み上げます。でもだからこそ、来日どころか来沖まで決断してくださったダニエルさんに、心からの感謝を込め、大切にお迎えさせていただきたいと思っています。78年ほど前、20万人以上の命が失われた戦争が終結した沖縄で、あるコメディアンが「命(ぬち)ぬ御祝儀(ぐすーじ)さびら」(命のお祝いをしましょう)と言って、芸を披露しては皆を笑わせていたという逸話があります。失った命を数えて泣き明かすのではなく、生き残った者同士で生き残った命を祝おう。沖縄はそうやって復興してきたんだよ、と我々は教わり育ってきました。ですから、ダニエルさんにお辛い体験をお話しいただいたその後は、感謝の意をこめ、一緒に「命ぬ御祝儀」ができたら嬉しいです。ホロコーストという地獄を生き延びたダニエルさんと、地上戦という地獄を経験した沖縄とで発信する平和の祈りが、「生」への祝福に満ちていたらいいなと思っています。

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