台北金馬映画祭に正式出品されている「
本作は伊丹が宮本の父親の葬式を主宰した経験をもとに、突然肉親の死に見舞われた俳優夫婦が、慌て戸惑いながらも無事に葬儀を終えるまでの3日間を描いた作品。1984年に初公開されるとヒットを飛ばし、日本アカデミー賞の最優秀作品賞ほか数多くの映画賞に輝いた。
このたび伊丹が遺した監督作、全10本の4Kデジタルリマスター化が実現。台北金馬映画祭では伊丹の回顧上映が行われており、「お葬式」もワールドプレミアが行われた。映画祭の全上映作品を対象にした観客賞のランキングでは、11月11日付けで「お葬式」のほか「タンポポ」「スーパーの女」がトップ20にランクイン。「メタモルフォーゼの縁側」も含めると宮本の出演作は4本も並んだ。
満席の会場には多くの若い観客が駆けつけ、宮本も「こんなに若い方たちに集まっていただけて。日本では、なかなか見られない光景。今日はとてもうれしいです」と挨拶。「お葬式」は伊丹が51歳のときに手がけた第1回監督作だ。俳優、エッセイスト、編集者、広告デザイナーと多彩な活躍をした伊丹が監督デビューを果たしたきっかけを問われると、宮本は「伊丹さんは、はじめは映画を撮るなんて考えていませんでした。映画監督の伊丹万作という偉大な父親がいたので『映画を撮ることはない』と言っておりました」と述懐。宮本の父の葬儀で火葬場の煙を見ていたときのことを振り返り「伊丹さんは『これは映画になる』と。『何か小津(安二郎)監督の映画に出てるみたいだ』というようなことを言いましてね。それから脚本を書き始めていきました」と、映画の原点となった思い出を明かす。
MCを務めた映画祭CEOの聞天祥(ウェン・テン・シャン)が「僕の作品には必ず宮本信子に出演してもらう」という伊丹の発言を載せた記事を読んだ記憶があると述べ「これは本当ですか?」と質問する場面も。宮本が「いや、初めて聞きましたけど(笑)」と答えると会場は笑いに包まれた。続けて「でも、伊丹さんはいつも『僕たちはジョン・カサヴェテスとジーナ・ローランズみたいに夫婦でずっと映画を作ってる。ほかに世界にいないよね』なんて言っておりましたね」と振り返る。「お葬式」で特に思い出に残っていることには、伊丹がカメラモニターやフードコーディネーターを日本の撮影現場にいち早く導入したことを挙げ「彼は『カメラを神聖化しない。画面をみんなで共有する』と言って撮影現場にモニターを持ち込みました。これは日本で最初だと思います。今までの日本映画界で当たり前ではなかったこと。新しいことをどんどん映画の中に取り入れていったのが印象に残っています」と話した。
最後に宮本は「彼が亡くなって25年以上経ちますけれど、4Kとなった10作がまるごと上映されるのは台湾が初めて。こんなに幸せなことはない。とてもうれしく思っております。本当に皆さんに感謝しております」と胸がいっぱいの様子。上映後には映画祭スタッフが観客に感想をインタビューすることが伝えられると、「いろんな感想や思いがありましたら、大きな声で、いや、小さな声でもいいので、ぜひお伝えいただけるとうれしいです」と呼びかけた。
台北金馬映画祭は11月20日まで開催。4Kデジタルリマスター化された伊丹の全10作は、2023年1月より日本映画専門チャンネル、日本映画+時代劇 4Kにてテレビ初、独占放送。
ナマケモノ🦥lazy sloth @lazysloth_taro
伊丹映画もっと観たかったですね https://t.co/4FQ0KJ0Z4T