是枝裕和が“トリロジー”のつながり語る、ソン・ガンホは撮影中に赤ちゃんと会話

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フランス現地時間5月27日、第75回カンヌ国際映画祭で「ベイビー・ブローカー」のフォトコールと記者会見が行われた。

「ベイビー・ブローカー」第75回カンヌ国際映画祭のフォトコールの様子。

「ベイビー・ブローカー」第75回カンヌ国際映画祭のフォトコールの様子。

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自らの手で育てられない赤ん坊を匿名で預けられる“赤ちゃんポスト”をきっかけに出会った人々の旅路を、是枝裕和が描いた本作。預けられた赤ん坊を横流ししてマージンを稼ぐベイビー・ブローカーのサンヒョンとドンスをソン・ガンホカン・ドンウォンが演じた。赤ちゃんポストに赤ん坊を預ける女ソヨンにイ・ジウンIU)、サンヒョンとドンスたちを追う2人の刑事にペ・ドゥナとイ・ジュヨンが扮している。

是枝裕和

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左から是枝裕和、ソン・ガンホ。

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是枝はまず「今作は、車に乗り込む者たちの疑似家族の旅を描こうと思ってプロットを書き始めました。乗り合わせる人たちは、一般的に考えられる普通の家族や親子というものから切り離されて生きています。彼らがほんの短い間同じ車に乗る話を書くことによって、私たちが考えている“家族”というものを捉え直したいという気持ちがありました」と制作経緯を説明。登場人物たちは犯罪者であるが、彼らの描き方にはヒューマニズムや優しさを感じたという意見が飛ぶと、「モチーフが深刻であればあるほど、ディテールの描写では人間が本来持っている存在のおかしみみたいなものを表現したいと思っています。そして、それを表現するにはソン・ガンホさんという役者さんは一番ぴったりですね」と述べた。

「そして父になる」「万引き家族」「ベイビー・ブローカー」をトリロジーとして捉える声が上がると、是枝は「つながりがあるといえばそうかもしれない。『そして父になる』を撮ったときのインタビューで『女性は子供を産むとみんな母親になれるけど、男性はなかなか実感が持てなくて、父親になるには何か階段を登っていかないとなれない』といった話をしたときに、友人から批判をされました。女性でも産んだ人たちがすぐに母になるわけではない。母性というものが生まれつき備わっているのだということ自体が偏見であるということを指摘されて、すごく反省しました。そのことから『万引き家族』の安藤サクラさんが演じた“産んでいないけれど母親になろうとする女性”と、今回イ・ジウンさんが演じた“産んだけれどいろんな事情で母になることをあきらめる女性”という2人の女性像が生まれました。僕の中で直線的に『そして父になる』『万引き家族』『ベイビー・ブローカー』はつながっていますね」と語る。

カン・ドンウォン

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イ・ジウン(IU)

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続いて俳優陣の演技、役作りが話題に。カン・ドンウォンは「ドンスは孤児で、赤ちゃんを売っている仲介役です。リサーチでは孤児院や似た環境で育った方にお話を伺いました。その方々の内に感じた痛みを映画の中で表現しようとしました」、イ・ジウンは「私にとって初めての母親役で、しかも未婚の母。シングルマザーという役は慣れ親しんだものではなく知識もなかったですが、お話をしたりいろんなインタビューやドキュメンタリーを観たりして、ある程度理解することができました。彼女たちが強いこと、でも社会が彼女たちを見下しているということ。この経験で私は彼女たちを見る目が変わりました」と述懐した。

ソン・ガンホ

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またソン・ガンホは「この映画のすべてのキャラクターは、今まで人生で幸せを感じていません。幸福だった過去もないし、今も幸福ではない」とし、「監督が描いたのは彼らの日常。それは普通の日常かもしれないが、同時にそこにある暴力性やその恐怖心、苦しみも描いている。それぞれの人生でそういったことが積み重なってきているわけです。ですが客観的な距離のある形でこの世界がどんなに冷たいものかを描きつつ、私たちの心を同時に溶かしてくれます。僕らみんなのキャラクターへのアプローチは、似たようなものがあったと思いますよ」とコメントした。

赤ちゃん役の俳優には、周囲の音に一番反応がいい子を選んだという是枝。コロナ禍ということで動画を観てキャスティングしたと言い、「撮影の現場では、ソン・ガンホさんが動くと目で追ったり、目の前にいる養父母役の女性の顔に触ったりすることが僕の演出ではなく起きていました。彼が電車の中でずっとカン・ドンウォンさんの手を握っていたりして、そういうことがたぶん大人のお芝居にも生きてきているのではないかと思います」と回想。是枝が「終盤のシーンで赤ちゃん役の俳優が大きな声を上げてソン・ガンホを見つめた」と話すと、ソン・ガンホも「赤ちゃんが僕を見て『ソンもういいんじゃない? テイク数、十分だと思うから撮影もうここでいいんじゃない?』と。僕も撮影はここでいいと思っていたので、まるで赤ちゃんと会話しているような気がしていました」と当時を振り返った。

「ベイビー・ブローカー」は6月24日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。

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naoko @konahiyo

私のファッション感覚が四半世紀前で止まっていることは認めるが、カン・ドンウォンの衣装はみんな抵抗ないのだろうか。
私にはパジャマか甚平にしかみえない😭 https://t.co/awzCLTI00q

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