本作はコロナ禍で青春を奪われた美術大学生の姿を描く物語。のん自ら卒業制作展の中止に直面する主人公のいつかを演じた。実際にコロナ禍では多くの卒業式や卒業制作展が中止となり、のんは「1年掛けて作った自分の作品がゴミのように思えてしまった」という美大生の言葉に衝撃を受けて映画を企画。学生たちの悲しみを目の当たりにしながら「これを書かなきゃいけない」という強い思いで取材を重ね、脚本を執筆した。
高校生の頃に絵を描くことに夢中になり、かつて美大のオープンキャンパスにも参加したことがあるというのん。いつかのキャラクターにはアーティストとして活動するのんのコロナ禍での経験も反映された。「いつかの持っているモヤモヤとか悔しさは、自分が共感した部分を描いています。私はコロナ禍の時期に、自分主催の音楽フェスを予定していたのですが、第1波が来て中止にしたことがあって、そのときの悔しさがすごく、美大生の方が卒業制作展ができなくて悔しかった思いと共鳴して、その気持ちを描きました」と明かす。
のんが「私の中ですごく大好きなモチーフ」と語る色とりどりのリボン。劇中では、いつかの負の感情と密接に関わるリボンが特撮によって表現された。のんは「かわいいイメージのものが違う魅力になって出てくるのがすごくいいなと思っていて。リボンが悔しそうに見えたり、怒っているように見えたり、一見ゴミみたいに見えるんだけど美しくも見えるという、そういうものになることを期待して、リボンを出しました」と意図を説明する。
会見では色使いや光の具合に岩井俊二からの影響を指摘される場面も。岩井は監督作「8日で死んだ怪獣の12日の物語―劇場版―」にのんを起用し、「Ribbon」にも予告編の編集担当として参加している。のんは「岩井監督の映画は大好き」と述べつつ「この脚本を書き始めたときに、岩井監督の映像のイメージがあったので研究し始めて『undo』を観ました。部屋の中が糸で絡まっているのが印象的で、一見不気味なんだけど美しく見えるという点ですごく影響されました」と続けた。
最後にのんはコロナの感染拡大が続く情勢を踏まえ「本当に命がおびやかされている方や医療従事者の方がいる中で、(アートやエンタメは)命には代えられないものだから、自分の苦悩を少なからず我慢していると思うんですね」とコメント。さらに「いろんなルールが一気に決まって、それまでと同じ状況ではいられない。その我慢がずっと解消されずに続いている気がしていて。その我慢を、リボンが代わりに叫んでくれてる、吐き出してくれている、そんな映画になっていると思います。みんなの悔しさやモヤモヤとかを晴らせるような、我慢が報われるような、映画になったらと思いますので、たくさんの方に届いてほしいです」と根底にある思いをつづった。
「Ribbon」は2月25日に東京・テアトル新宿ほか全国でロードショー。
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のんがコロナ禍の悔しさやモヤモヤ晴らす「Ribbon」、外国特派員協会で記者会見
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