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本作の主人公は、7年前に理不尽な交通事故で夫を亡くした田中良子。劇中では弱者ほど生きにくい時代に翻弄されながらも、子供へのあふれんばかりの愛を抱えて気丈に振る舞う良子と、いじめに遭いながらも母を気遣って日々の屈辱を耐え過ごす13歳の息子・純平の姿が描かれる。
コロナ禍をテーマに、2020年8月に撮影された本作。脚本も手がけた石井は「こういう大変な状況でないがしろにされている個人の感情を、映画監督としてどうしても描かなきゃいけないと思いました。誰もが世の中の理不尽さに怒りを覚えている。今の時代にしか描けない愛や希望を映画にしたいと思いました」と制作背景を明かす。尾野演じる良子の夫・陽一役のオダギリは、初回の緊急事態宣言後に初めて参加した本作の現場を「本番ギリギリ前までフェイスシールドを着けていたり、ごはんのときもなるべくしゃべらないようにしたり、今までのシステムがすべてひっくり返ったようでした」と回想した。
良子を見守る風俗店の店長役の永瀬は、尾野に関して「お芝居は鬼気迫るものがありましたが、それ以外のところでは現場を温かくしよう、なんとかこの現場を守り続けようという感じがしました」と証言。それを受け尾野は「こんなときだから、いっぱい気をつけないといけないことがある。だったら距離が遠くてもニコニコしてれば、もどかしい気持ちが少しでも晴れるんじゃないかと思って」と現場を振り返った。
またオダギリは、尾野との関係を「10年以上前から共演していて、おおげさにいうと同期みたいな、同じ時代を歩んできた仲間」と説明。彼女の過去作と比較して「これが一番。尾野さんの作品の中でもダントツ」とその芝居を絶賛するが「本人に『悪いことも言ってくれ』と言われたので1つ申し上げますと……どうしても眉間にしわが寄る癖があるんですよね。でもこの作品においてはそれも戦う表情にみえたので、悪いところはないです」と続けて、笑いを起こした。
最後に尾野は「この映画を撮る前に、監督に『命懸けでがんばります』と言いました。コロナ禍でもう仕事ができないんじゃないかと考えているときに、この台本が飛び込んできて、『今やらんと。ここで止まってたらあかん』と背中を押してもらいました」と熱い思いを明かす。そして一部地域に緊急事態宣言が出ている状況を踏まえ「自分にとって最高の映画だと思っています。ぜひ映画館で観れるようになってほしい、そういう気持ちです」と締めくくった。
「茜色に焼かれる」は5月21日に東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開。
※「茜色に焼かれる」はR15+指定作品
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楽しみです。
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