「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」が6月に東京のシアター・イメージフォーラムで公開される。
本作は、香港の歌手
ウィリアムズは「私が気付いたのは、デニスの人生が、そのまま香港の歴史に重なるということだ。政治的な浮き沈み、締め付けを緩めようとしない中国共産党の動向が、その都度、反映されている」とコメントしている。
スー・ウィリアムズ コメント
初めてデニス・ホーに会ったのは2017年夏。私はそれまで彼女の名前を聞いたことがなかった。長く香港に滞在中だったにもかかわらず、彼女がスターの座にあった香港ポップスについても、何も知らずにいたのだ。初対面での彼女は、どちらかと言えば物静かで控えめな女性という印象で、アジアンポップ界の大スターにして同性愛者の権利を求める活動家、さらに香港の市民社会を支持し、その揺るぎない擁護者というイメージとは、かけ離れたものだった。
ところがデニスがステージに立つと、その場は一変する。数カ月後、ロンドンで開かれたライブを目にしたとき、この伝説のスタジアム公演で知られる、恐れ知らずのカリスマ的魅力を放つスターの姿に圧倒され、彼女を題材にした映画を作りたくなったのだ。
本作の制作開始は2018年。2014年の雨傘運動に参加して逮捕され、中国のブラックリスト入りしたデニスは、新しいキャリアを築こうとしている最中だった。曲を作り、ツアーで各地を回り、数々の国際的な人権フォーラムで発言する彼女をカメラで追った。ちょうど本作を編集中だった2019年、抗議デモは激化し、デニスは再びほかのデモ参加者とともに通りに出る。冷静さを保ちながら正義を要求し、国連やアメリカ議会で訴え、もちろん音楽を作ることも忘れない。
私が気付いたのは、デニスの人生が、そのまま香港の歴史に重なるということだ。政治的な浮き沈み、締め付けを緩めようとしない中国共産党の動向が、その都度、反映されている。ほかの香港人と比べてデニスが際立つ点は、彼女いわく、10代の日々を過ごしたモントリオールの地で、学び吸収した民主主義の原則と、その価値観への揺るぎない信念だ。キャリアや資産を危険にさらし、逮捕され、スポンサーを失い、友人と思っていた人々が離れていく。そんな苦境を恐れ、言動を控える人々が多い中、何百万人にのぼる香港市民の思いを伝えようと声を上げ、自由と民主主義のために戦う姿勢を公の場で表明する彼女の強さは、この固い信念があるからこそだ。「
本作の完成後、中国は新たに香港国家安全法を施行。広範囲に渡り、容赦ない圧力と威嚇であらゆる抗議や反対意見を黙らせ、押さえ込みにかかっている。活動家や政治家、一般の人々は口をつぐんだが、彼らの基本的な市民の自由への希望は、失われることはない。
映画ナタリー @eiga_natalie
香港ポップスのアイコンが民主活動家へ、デニス・ホーのドキュメンタリー6月公開(コメントあり)
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