「SR サイタマノラッパー」3部作で知られる
入江の故郷であり、出世作「SR サイタマノラッパー」も撮影された深谷。「シュシュシュの娘」の舞台となるのも、3部作と同じ深谷をもじった架空の田舎街“福谷”だ。主人公は寝たきりの祖父と暮らす25歳の女性・鴉丸未宇。ある恩人を自殺で失った彼女が、不正と闇がはびこる行政と闘うさまを描く“超娯楽エンタテインメント”と銘打たれた。台本の前書きには「商業映画では作れない、いびつで過激な映画を作りたい」という入江の所信表明も。画面はスタンダードサイズ、音声はモノラルと、日本の商業映画ではまずあり得ない形式を選択した。
そもそもの製作のきっかけは、入江が数年掛けて準備していた新作がコロナ禍で白紙になってしまったこと。その悔しさを原動力に、温めていた企画で即座に脚本を執筆。6月頭に出演者の募集をスタートさせてから、7月に製作発表会見とクラウドファンディングの開始、9月にキャスト発表とクランクイン、10月下旬にクランクアップという異例のスピードで進行し、2021年秋に全国のミニシアターでの劇場公開を目指している。
この日は深谷市北部に位置する鴉丸家のロケセットで撮影が行われていた。製作陣は全部で40人ほど。メインスタッフは日本映画界の第一線で活躍する人材で固めたが、初めて映画の現場に参加する学生ボランティアも多い。「コロナ禍で授業やアルバイトがなくなった、映画を志す学生が参加してくれてます」と入江。オーディションには落ちてしまったものの、裏方として手伝いたいという思いの若手俳優も参加している。業界内での認知度も高く、撮影を数日間だけ手伝いに来てくれる仲間も多いという。若いスタッフ陣にカチンコの打ち方など現場の基本を一から教えるため、朝から晩まで撮影を詰め込みすぎない余裕を持ったスケジューリングに。入江は「学生も多いからプロのスケジュールでやってしまうと事故も増える。ゆったりと撮影できてます」と話す。現場では1カットごとに複数の窓やドアを開け閉めし、換気も徹底。マスク姿の若いスタッフが、監督やベテランスタッフの指示を受け鴉丸家をテキパキと動き回っていた。
一般的に撮影現場の食事は弁当が多い。しかし「シュシュシュの娘」ではクラウドファンディングの支援の1つに「メシ奢ってやるよ券」が用意されており、ケータリングによる温かいご飯が振る舞われていた。また東京・下北沢のコーヒー専門店COFFEA EXLIBRISは、映画をイメージしたオリジナルブレンド「Shu3 Blend」を差し入れてくれたそう。予算の少ない自主映画でありながなら、食事面のケアが非常に充実している様子で、多くの人に支えられる形で撮影は進行していた。
入江が自身の監督作で単独ヒロインを主役に据えたのは、「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」以来9年ぶり。「ビジランテ」「ギャングース」などを念頭に置きながら、女性の主人公に決めた理由を「自分が男の話を書くと、どんどん沈没してどん詰まる話になる。この映画では来年、映画館に来てくれた人に前向きな気持ちになってもらいたい。軽やかに未来に向かっていってほしいという思いを主人公に託しています」と語る。
その思いを託されたのが、9月にフリーに転身したばかりの
福田曰く「シュシュシュの娘」の現場にいるのは「監督と映画を作りたいと思ってまっすぐに集結したキャストとスタッフ」。「だからこそ、どの部署もとても前のめりに映画作りに向き合ってます。監督が『何かをできなくても気にしない。ここで学んで覚えればいい』という現場の姿勢を最初に提示してくれた。現場を経験しながら術を学ぶ。それを監督が身を持って実践していて、そばで見ていてとても勇気付けられる映画作り。自分が芝居をするうえでもとても希望を感じています」と順調に進む撮影の雰囲気を明かしてくれた。
「シュシュシュの娘」は、10月22日の撮影をもってクランクアップ。福田のほか、吉岡睦雄、根矢涼香、宇野祥平、井浦新らが出演した。MotionGalleryでのクラウドファンディングは本日10月29日23時59分まで実施中。現在新たな目標額1400万円の達成を目指している。
※「Shu3 Blend」のShu3はShuの3乗が正式表記
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