「
本作の主人公は、妻の奈津美と5歳の娘と暮らす山田厚久。彼が奈津美の浮気を知ったことから、幼なじみの武田を含めた3人の関係性がゆがんでいくさまが描かれる。仲野が厚久、大島が奈津美を演じ、若葉が武田に扮した。
「日本社会が抱えている問題をそのまま映画にしてみようというのが始まりでした」と切り出した石井は、「言葉にならないすさまじいラストシーンを作ってみたいというのもこの作品を撮った動機です」と回想。そして、原点回帰と至上の愛という本作のテーマに触れつつ「愛と衝動と魂だけで映画を作っていた時代もありましたが、今はビジネス的な要素も入ってくる。もちろんこれはよいことでもあります。でも、本質に立ち返るべきだと思ったんです」と本作に込めた思いを伝えた。
石井が3日で書き上げた本作の脚本。初めて読んだときのことを仲野は「しびれました……。作家が本当に思っている言葉が並んでいると思いました」と振り返り、「熱量と切実な思いが伝わってきたんです。演じたら、絶対に言い訳ができない状況になるんじゃないかと思って、気合いを入れて挑みました。全部出しちゃっているので、自信を持って今ここにいることができます」と胸を張る。また、自身が演じた厚久を「思ったことが言えない人間」と説明し「今の世の中、本音を言ったら何かが壊れてしまうという空気がある。厚久という人間を通して、今の社会を描いています。自分自身の本音を込めて演技をしないとダメだなと思っていました」と真摯に語った。
脚本を初めて読んだときのことを「小説を読んでいるようでした」と思い返すのは大島。「通常ト書きは役柄の説明だったり物語の補足だったりします。でも、この作品のシナリオで書かれているト書きは、物語に絶対必要なものばかり。役者として試されているような気がしましたね」と言い、「『仏のようにいろんな感情をむき出しにする』というト書きを読んだときには、どう演じればいいんだろう?と悩みました。読んでいて高揚する台本でした」と当時感じた興奮を伝えた。続く若葉は「果たし状が来たと思いました。脚本はパソコンで打たれていたものでしたが、手書きで書いているような熱量が伝わってきた。これはメガネを掛けて読むものじゃないなと思って裸眼で読みました」と述懐する。
仲野は「この映画は運命を描いた映画だと思っています。世の中には抗うことができない流れがあって、そこに巻き込まれた人の話」と紹介し、「3人が出会ったことがすべてだったということに尽きる。観た人がいろいろな解釈をすると思いますが、武田と厚久の関係もまぎれもなく愛。理屈で愛を解釈して演じたというより今、目の前にいる人に思いを馳せるということを大切に演じました」とコメント。若葉も同意し、「武田と厚久の関係に対して、いろんな解釈をする人がいると思いますが、カテゴライズできないのが愛。型にはまりきらないから愛だと思うんです。カテゴライズしてほしくないですね」と言葉に力を込めた。
10代の頃から友人だという仲野と若葉。仲野は「僕が中学生の頃に、自転車に乗って高校生の若葉くんの家に遊びに行っていました。コーヒー牛乳を飲みながら、一緒に映画を観て文句を言ったり(笑)。『ガッツリ共演したいね』と話していたので、こういう形で結実してうれしいです」と笑みをこぼし、若葉も笑顔を返す。
イベント中盤には、ラストシーンの撮影について石井が振り返る場面も。「実力のある俳優が本気を出したときの姿は想像しきれなかった。ラストシーンはすごすぎました。正直引きました。演出家としては、ここまでの芝居が撮れたら傲慢にならざるを得ない。傲慢になっちゃった(笑)」と茶目っ気たっぷりに言及した。
最後に仲野は「力強く生きるということを伝えている映画です。観ていただいて、いろんなものを持ち帰ってもらえればと思っています」と呼びかけ、石井は「完成した作品を観たとき、すごく疲れました。だから今日観ていただいた方もすごく疲れていると思います。疲労感が取れたら何度でも観に来てほしいです。3人の俳優の迫力と熱気が充満している作品です」とアピールし、イベントの幕を引いた。
「生きちゃった」は、全国で公開中。「All the Things We Never Said」という英題で、中国、香港、台湾、マカオなどでも上映される。
仲野太賀の映画作品
関連商品
優子angel @angelyukoonly1
「生きちゃった」で仲野太賀と若葉竜也の夢が結実、石井裕也は「傲慢になっちゃった」(写真12枚) #生きちゃった #大島優子 #仲野太賀 #若葉竜也 #石井裕也 https://t.co/MBrMa9gQL0