「
妻の奈津美と5歳の娘と暮らす山田厚久を主人公に据えた本作。ある日厚久が奈津美の浮気を知ったことで、幼なじみの武田を含めた3人の関係性がゆがんでいくさまを追う。仲野が厚久、大島が奈津美を演じ、若葉は武田に扮した。
まず最初に登壇した石井は「初期衝動を込めるような映画作りをもう1回やってみたい、やらないといけないと思った」と本作への思いを語る。3人の起用については「作ると決めてからクランクインまで2カ月だった。普通そういうスピード感ではいいキャストの方は見つけられないが、偶然3人のスケジュールが空いていて、この無謀な試みに賛同してくれた。この映画のすごみは俳優の身体の迫力、熱気、魂でしかない。3人だからこそ、それが可能でした」と熱を込めて話した。
続いて仲野たちが舞台へ。奈津美が叫ぶシーンについて、石井から大島に質問が飛んだ。脚本には叫ぶようト書きがあったが、大島からは「本番では叫ばないかもしれない」と石井に伝えられていたという。「そのシーンでどういう感情になるのかなと撮影前に考えたときは、叫ばないかなと思いました」と大島は話すも「でも、いざそのシーンに取り掛かると、どんどん気持ちが高揚して。その瞬間に芽生えたのは死に対する恐怖や大事なものをなくす恐怖。奈津美としてあの瞬間を生きたときは、叫びというものが自然と出てしまって……」と振り返った。このシーンについて仲野は「大島さんの人生の中で溜め込んできたものが現場で噴出した気がする」とコメント。石井も「叫ぶって芝居の中では簡単なものだけど、あの叫びに関してはちょっと次元が違う」とうなずくと、大島は「爆発するものを信じました」と述べる。
また厚久と武田のラストシーンを大島は「愛のぶつけ合い」と表現。「初めてもらい泣きしちゃった」と回想した石井は、「撮ってるとき泣いてるんです。2人の芝居を観て、冷静ではいられなくなっちゃった。あれこそ映画の原点というか、魂なんじゃないかなって思ったんですよね」と当時の心境を明かした。
仲野が本作のクランクイン前から「僕の代表作になります」と宣言していたという話も飛び出した。「その確信はどこにあった?」と石井に尋ねられると、仲野は「10代のときに出会った石井監督の存在ってものすごく大きくて。1人の男として大きな影響を与えてくれたし、俳優の面ではいろんな気付きをもたらしてくれました。役者としていろいろと思う中で芸名を変えた節目のタイミングで石井組参加の機会が回ってきて、大きな転換点になると思ったんです」と述懐する。さらに「普段石井監督が感じていることや表現したいことが、あらゆるしがらみをなしにしてこの脚本にぶつけられているということは読めばすぐにわかりました」「そのうえで若葉さんとご一緒するというのも、感慨深いものがたくさんあって、確信したんです」と説明した。
脚本を作るうえで、武田の存在は“穴”だったと石井は語る。「3日間で脚本を書いたんですが、正直穴がいっぱいあった。その一番大きな穴が武田で、彼だけ書き込まれてないんです。実体験で俺は武田の立場になったことがあるので彼の気持ちはわかるんだけど、脚本上では積み切れてない。だから誰がやるかは重要だった」と述べ、「太賀と若葉くんに個人的な付き合いがあるとは聞いていたんだけど、若葉くんの太賀に対するまなざしや思いが見えたときに『大丈夫だ』と思った。だから若葉くんには負荷がかかってるんです」と明かした。
車中シーンについて若葉は「東京から僕が運転して、監督とカメラマンさんと太賀と4人でカメラを回しながら地方に行ったんです。僕らは午後に撮るって聞いてたんですが、石井さんが『今撮っちゃおう』って。でもあの形で撮らなかったら……」とその判断をたたえた。対する石井は「そのときに壮絶に生きた証しか映画に残らない。操作できないことがあって、そういうものだけで今回の映画は成立したような感じがするんです」と分析している。
「生きちゃった」は10月3日に東京・ユーロスペースほか全国で公開。「All the Things We Never Said」という英題で、中国、香港、台湾、マカオなどでも上映される。
※「生きちゃった」はR15+指定作品
仲野太賀の映画作品
関連商品
優子angel @angelyukoonly1
仲野太賀と若葉竜也の「生きちゃった」共演シーンを大島優子が語る「愛のぶつけ合い」 #生きちゃった #大島優子 #仲野太賀 #若葉竜也 #石井裕也 #ぴあフィルムフェスティバル #PFF https://t.co/0LT1nnQ6uc