本作は、亡き妻への思いを捨てきれない男と、その男に恋した女の物語。患者の話に耳を傾けてくれると評判の精神科医・貴志は、6年前に死んだ妻・薫のことを思ってむせび泣き、薬で精神を安定させる日々を過ごしていた。そんな彼のもとに患者としてやってきた女・綾子は立場を超えて貴志と気持ちを通い合わせるようになる。しかし綾子は、貴志の妻への断ち切れぬ思いや彼の息子の存在を知って嫉妬心にさいなまれ、薫の弟・茂に近付いていく。
貴志役で
「UN LOVED」「接吻」にも出演した仲村は「過去の万田組の現場の雰囲気と共通していたのは涼しさより少し冷たさに近いような、ひんやりとした緊張感、でしょうか。ただそれも、過去の現場にあった張りつめていたものが、時に歪んだり捻じれたりするような新鮮な瞬間が何度もありました」と「愛のまなざしを」の撮影を振り返っている。
仲村トオル コメント
「答えは其処にしかないのです」と説得され切った「UN LOVED」。
「答えはひとつではないのです」と自由さに戸惑った「接吻」。
「愛のまなざしを」の撮影現場は過去の自分が出演した万田邦敏監督の作品と比べると
「答えなど最初からないのです」と言われ、「迷宮を駆け抜けたような」日々でした。
過去の万田組の現場の雰囲気と共通していたのは涼しさより少し冷たさに近いような、ひんやりとした緊張感、でしょうか。ただそれも、過去の現場にあった張りつめていたものが、時に歪んだり捻じれたりするような新鮮な瞬間が何度もありました。
万田邦敏 コメント
本作のラストをどうするか、じつは撮影中に二転三転した。決定稿では、主人公の男女は最後まで闇の中に宙づりにされたままだった。ところが、撮影中にそれではこの二人がなんだか可哀想に思えてきた。救いがなさ過ぎると思った。男も女も本気で愛し合ったのだし、本気で憎み合ったのだ。その本気を最後に突き放したままでいいのだろうか。そう思わせたのは、役を演じる目の前の仲村さんと杉野さんの身体が、意識せぬまま、己が演じる男と女の救済に向けて動き、発話し、沈黙していたからなのだと思う。初めは、二人自身も私もそのことに気付かなかった。二人の結末に最初に違和感を感じたのは、ずうっと撮影を見続けていた脚本を書いた珠実そのひとだった。愛する者が苦しんでいるのなら、その苦しみを分かち合いたい、苦しみから救ってあげたい。珠実は、仲村さんと杉野さんの芝居する身体が発するサインを目ざとく読み取ったのだ。撮影の合間を縫って二人に相談してみると、「そういうことだったのか」と二人も納得。だったらあれは、これはといろいろとアイデアは出てくるし、二人の身体にもそれまで以上に開放感、伸びやかさ、自由さが増した。こうして、映画の最後(それは撮影終了日でもあった)に杉野さん演じる綾子は満面の笑みを見せることになった。決定稿とは真逆の結末に、私たちはみな満足してクランクアップしたのである。
てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
“脚本は過去作「UN LOVED」「接吻」と同じく万田珠実と万田邦敏が共同で手がけた”/仲村トオル、杉野希妃、斎藤工、中村ゆりが万田邦敏の新作「愛のまなざしを」で共演 - 映画ナタリー https://t.co/60nrpzkzv9