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本作の舞台は、中世後期のイタリア・南アルプス。壁のようにそびえる岩山に光を遮られた不毛の地に住む男・アゴスティーノが、その地を追われ家族と離ればなれになりながらも、たった1人で山と対峙していく。
イベントでは、
ミケランジェロ・ブオナローティの作品を取り込むアイデアを得てイメージに沿うロケーションを探した結果、アルプスのとある山にたどり着いたナデリ。「そこを管理していた方は映画の構想を理解してくれましたが、私は山を壊すということを話しませんでした。2カ月ほどかけて親交を深めながら、彼のいないときに山を爆破することにしたんです(笑)」と明かすと観客から笑い声が上がる。続けてナデリは「結果として、本作はイタリアで成功しました。所有者の方と一緒に、山を壊す前と壊したあとの写真を見比べたりしました」と述べた。
黒澤はナデリの過去作がニューヨークや東京など都市を舞台にしたものが多かったことに触れながら「今回、中世の山を舞台にした理由はなんだったんでしょうか」と問いかける。ナデリは「イランで最後に作った映画『水、風、砂』をもう一度作りたいと思っていたんです。環境を変え、主人公にとってより困難な環境を作るために、日本もしくはイタリアの山で撮ろうとしたんです」と回答。「撮影開始から3日間はとても大変でした。私の指示する声が山のこだまに書き消えてしまって、白いスカーフや赤いカードを掲げたりしながら意思疎通を試みていたんです」と笑いながら語った。
本作を「CUT」の続編と語るナデリ。続く3作目も日本を舞台にした作品で、徳島の祖谷地方での撮影を希望していると語る。黒沢が「今度も破壊する映画ですか?」と冗談めかして聞くと、ナデリは「オーマイガー!」と天を仰ぎ「今度は作る映画です。私は人間的に成長しましたからね」と述べた。
「山〈モンテ〉」は全国にて順次公開。
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アミール・ナデリの映画作品
リンク
- 「山〈モンテ〉」公式サイト
- 「山〈モンテ〉」予告編
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Seiichi Yamada @maminpapa
『山<モンテ>』上映後は、アミール・ナデリ監督と黒沢清監督によるトークショー。黒沢監督による的確な作品解説に加え、貴重な製作時のお話も伺え、何よりも国境を超えた二人のフィルムメイカーの友情が美しかった。https://t.co/3DkrnpZD4M