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アミール・ナデリが入江悠の新作「ギャングース」を隅々まで絶賛、暴力性に関する話も

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第19回東京フィルメックスにて、左から入江悠、通訳を務めたショーレ・ゴルパリアン、アミール・ナデリ、映画祭ディレクターの市山尚三。

第19回東京フィルメックスにて、左から入江悠、通訳を務めたショーレ・ゴルパリアン、アミール・ナデリ、映画祭ディレクターの市山尚三。

「駆ける少年」などで知られるイランの映画監督アミール・ナデリ入江悠のトークイベントが、本日11月19日、第19回東京フィルメックスが開催中の東京・有楽町朝日ホールスクエアで行われた。

入江の最新作「ギャングース」を鑑賞したナデリが、同作を気に入ったことから実現したこのイベント。ナデリは海外映画祭で「日々ロック」を鑑賞し、初めて入江作品に触れた際のことを「こんなにエネルギーがいっぱいの映像をしばらく観ていなかったから驚きました」と回想する。そして「ギャングース」について「狂気の部分と地に足のついたキャラクターを描くバランスがうまく取れていた。それに舞台挨拶に登壇した役者さんたちは、映画の中とは正反対でした。それも監督の腕がないと撮れない」と手放しで褒め称えた。

さらにナデリは音楽、編集、ロケーション、脚本など、5分以上にわたりノンストップで隅々まで絶賛して「私が好む映画は自分で作れない映画なんです」と敬服。また本作において「一番の驚きは沈黙があったこと」というナデリの指摘に、入江は「僕は過剰さが好きなので、そのバランスを取るのに悩みました」と明かす。脚本を書くうえで迷った際は「撮影場所に足を運んで風景を見るようにしました。風景の中にキャラを立たせてみると、言葉はあまり必要じゃなく思えてきました」と話す入江。映画オリジナルキャラクターとして登場させた少女の存在をナデリから褒められると「彼女がしゃべらないことでお客さんが想像できる余地があったのかなと、今思いました」と新たな気付きを口にした。

そしてトークは、互いの作中で描写される“暴力性”にまつわる話へ。入江は「自分の中の暴力的な衝動を出せない人間が映画で表現するんだと思う」と持論を展開。入江が「かつて映画の中で描いていた暴力表現はもう自分の中では終わったんですか?」と尋ねると、ナデリは「コントロールはできているのかなと思う。あの頃の怒りはもっと深くまで入ってきていたけど、(今は)そのエネルギーが変わってしまった」と述べる。

また「Cut」の冒頭でバスター・キートンの映画が映し出されることから、入江が「(キートン作品が)お好きなんですよね?」と問うと、ナデリは「新作の『マジック・ランタン』でもキートンを感じさせるような映像作りをしました。現実から始まって、空想の世界に行き、また現実に戻る。この旅がすごく好きで、いつも映像に入れたいと思っています」と回答。入江が「現実に戻るの部分が難しい。どうすれば撮れるようになりますか?」と相談すると、ナデリは「経験」と一言。そして「22、23歳くらい(になれば撮れる)」と答えるナデリを、入江は「そんなに若いんですか!?」と信じられないような目で見つめていた。

ナデリから「一番好きな映画は?」とふいに聞かれた入江は「僕も同じように“自分が撮れない映画“が好き。日本だと溝口健二、特に『近松物語』が好きです」と答える。ナデリは「世界で一番の作品だ!」と同意し、入江と握手。「暴力を描く映画を何本か撮ったあと、そこから離れた映画を作り出すのに影響を受けた監督がいました。それは溝口監督とロベール・ブレッソン」と打ち明け、入江は「溝口監督も肉体的な暴力より、制度や社会的な暴力を描いてましたね」と分析した。このあとも映画トークは盛り上がり、2人は黒澤明の映画から編集を学んだ話などを披露した。

入江が監督を務め、高杉真宙、加藤諒、渡辺大知が出演した「ギャングース」は11月23日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。なお第19回東京フィルメックスでは「特集 アミール・ナデリ」が展開されており、明日11月20日はナデリの新作「マジック・ランタン」が上映される。

※「ギャングース」はR15+指定作品

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