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全編奈良で撮影された本作は、幻の薬草“Vision”を探すフランス人エッセイスト・ジャンヌと、吉野の山守・智が心を通わせていくさまを描く物語。ジャンヌ役をビノシュ、智役を永瀬が務め、不思議な力を持つ老女・アキを夏木、智と共同生活を送ることになる青年・鈴を岩田、ジャンヌのアシスタント・花を美波が演じた。
ビノシュは、観客に向けて日本語で「こんにちは、皆さん愛してます」と挨拶。電車に乗って吉野にやってきたジャンヌが涙を流すシーンについて、河瀬が「シナリオには涙を流す描写はなかったのに、ジュリエットは涙を流した。その意味をみんなで共有して、心が震えるような気持ちになりました」と回想すると、ビノシュは「いつも日本に来ると東京、大阪、京都といった都会を訪れることが多いのですが、今回は吉野の奥深い森に招待され、大切なものをシェアできた。だからあの涙は、もしかしたら喜びの涙だったのかもしれません」と説明した。
撮影期間中、河瀬のはからいでビノシュと神社や森でデートした永瀬は、彼女の様子を「森や木を見ながらずっと美しいとおっしゃっていた姿がジャンヌとリンクしました」と振り返る。ビノシュはそのときの心境を「空気、風、色彩、光、小さなディテールを感じていました。もっと深く言うと、生きているなということ、生きててうれしいなということを考えていました」と解説した。
本作で英語のセリフにも挑戦した岩田。「台本を読んで英語のセリフがあったときは、本当にどうしようかと思いました」と明かすも、ビノシュとの共演シーンを「決まりごとではなく、アドリブのような感じ。日常生活を切り取るように撮影しました」と述懐する。現在はドラマ「崖っぷちホテル!」に主演している岩田は、河瀬に「ドラマとはまったく違う岩田くんが観られますので。今ドラマを観ている方はぜひ『Vision』の劇場にも足を運んでいただければ」と宣伝されると「同じくそう思います」と付け足して笑いを誘う。さらにビノシュに「最初から『なんだかこの人を知ってる、また会えたな』という気持ちがしていましたよ。日本に息子がいるなんて思ってもいなかったけど、そんな気持ちになりました」と言われた岩田は、即座に「僕も、フランスのお母さんだと思っています」と返した。
以前のイベントでもう一度会いたい人を聞かれ、ビノシュの名前を挙げた夏木。「現場では私語厳禁だったので、先程再会して初めて笑顔でご挨拶しました。何年か前に『絵でも演技でも、動くことから始まる』とおっしゃっていた。このあとの移動の時間なんかに、そのことについて徹底的に話したい」と宣言する。「ジュリエットさんの役作りや役者としてのスタイルを徹底的に盗みたいと思っていた」と明かした美波は、ビノシュと多くの時間をともに過ごした感想を「想像よりもはるかに深く日本のことを知ろうとされていた。神道のこと、古事記のこと、空海のこと……徹底的に勉強して来られていて。聞かれても答えられなくて、日本人なのに恥ずかしいと思うくらいでした」と尊敬を込めて語った。
終盤には永瀬からビノシュへ、特製の和傘をプレゼント。共演者たちとハグしてその喜びを表現したビノシュは、「Vision」のロゴが入った和傘を広げ「こんなに大切な和傘を、パリの街で差す勇気があるのかしらと思いますけど……やってみようかな(笑)。とってもうれしいです」とコメントする。そして観客に向けて「誰もが自分の中にある暗闇を明るくしたいと思っているはず。そのためには自分と向き合わなければならない。そんなことを描いたこの『Vision』は1つの大きな神話のようであり、可能性に関するシンボルなんじゃないかと思います」と語りかける。また河瀬は、カンヌ国際映画祭でビノシュが言った「映画は光だ」という言葉を繰り返し「光がなければ私たちは存在することもないし、何かを見ることもできない。その原点に立ち返って、10作目の映画『Vision』を作りました」と作品に込めた思いを述べた。
※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記
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- 「Vision」予告編第2弾
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ひのえ茶屋 @HinoeChaya
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「Vision」ジュリエット・ビノシュ来日、岩田剛典は「日本の息子」
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