綾小路翔

ファッションから生き方まで…綾小路翔が「ビー・バップ・ハイスクール」から受けた影響

学ランもMVもバームクーヘンも、すべての原点は「ビーバップ」

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トオルとヒロシのボンタン、思ったより太くねえんだな

冒頭では映画「ビーバップ」との、そして変型学生服との出会いが語られた。綾小路は学ランコレクターとしても知られているが、その原点は「ビーバップ」だったようだ。そしてこのコレクションが、氣志團の衣装につながっていく。

「『ビーバップ』は服装の描き方もうまいんですよね。それこそ『高校与太郎完結篇』で五中のカブとか二中のリョウとかが出てきて。中学生の俺たちにとってリアルだったのはやっぱりあっちのファッションなんです。ポップなものに憧れてたんで。主要キャラだとヒロシがダントツで人気でしたね。あのリーゼントのパーマ感と短ランがかっこよくて。コミックの巻頭折り込みにトオルとヒロシのボンタンと学ランの図解があって、『トオルがワタリ40でヒロシが38? 思ったより太くねえんだな』とか『コンポラ派ってなんだ?』なんて言ってね。(編集部注:当時の図解には『中ラン派トオル』『コンポラ派ヒロシ』と書かれていた。コンポラとは『コンテンポラリー(Contemporary)』の略で、『現代風の』といった意味)」

「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇」より、ヒロシ ©︎東映

「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇」より、ヒロシ ©︎東映 [高画質で見る]

「衝撃だったのはヒロシの短ランのボタンが4つという部分。痺れましたよね。ちなみにうちのランマくんの学ランはそのモデルをベースに作られてるので4つボタンです。丈はヒロシよりほんの少し長くて63cm。雪之丞(無期限休止中のメンバーである白鳥雪之丞)が中坊の頃に着ていたやつをもとにしています。僕の短ランは58cmなんですが、デビュー当時のトミーくん(西園寺瞳)が着ています。ついでに言うと、トミーのドカンはヒロシと同じベルトレス仕様。粋ですよね。氣志團の衣装は、もとは全部僕らが中高生のときに着ていたものをそのまま使っていたんです。

僕らは学生時代に学ランをめちゃくちゃ買ったし、作ったし。メーカーのものをさらにカスタマイズしたり、時には生地をテーラーに持ち込んでフルオーダーしたこともありました。そういえば、うちの中学の最初のセルフカスタマイズは、まず学校指定のジャージをボンタンにするところからスタート。太もも部分に小学校の卒業アルバムを無理矢理押し込んでアイロンをかけると伸びるんです。そのぶん丈が縮むので、ブカブカの大きいサイズを買うという知恵が付いたり。裾は独特の詰め方があって、中学の家庭科レベルで簡単にできるのですが、めちゃくちゃ裁縫のうまいヤンキーがいて、いくらか出すとそいつがきれいにミシンで縫ってくれたりして。彼は一時期、それだけでけっこうなお小遣いを稼いでましたね(笑)」

コレクションの学ランをステージ衣装に

「映画『ビーバップ』で衣装協力してたメーカーは『ヤーバン(YAHVAN)』だったと記憶しています。カタログもまだ実家にあるはず。ヤーバンはコミックが実写化するときに、よく協賛して登場人物の着用モデルを作っていたんです。『名門!多古西応援団』とか『ろくでなしBLUES』とか。

僕の現在の学ランは『名門!多古西応援団』の団長・橘薫(たちばなかおる)モデルをベースにしています。驚異の7つボタン、着丈120cm、襟7cmの長ランですね。これは氣志團のデビュー前に『在庫があったら譲ってもらえませんか?』って全国手当たり次第に電話して手に入れたものです。ほかにも(『ろくでなしBLUES』の)前田太尊モデルの中ランとかも持っています。前述したヒロシモデルや愛徳のボタン、左京の長ランや桂の短ランなど、ほかの『多古西応援団』モデルも欲しかったんですけどメーカーの方にも『もうないんです』と言われて。

『ビーバップ』が大流行していた頃、一部のちゃんとした学生服メーカーも、そのノウハウを生かしてサイドビジネスとして変型学生服を作っていたらしいんです。ちなみに標準学生服の場合、素材はウールがほとんど。ウールは上質ですけど、テカりやすくて形崩れしやすい。値段も高価なうえに夏は暑い。対して変型学生服はポリエステルが主流。形が崩れづらくてアイロンをかけなくてもいいという利点に加え、値段もリーズナブルなので、学生が買い替えやすかった。我々も普段はポリエステルのものを着用して、先輩たちの卒業式とか、大事なときにウールで決める。ウールはその重さで落ちて独特なシルエットに変わるんです。そこが大人っぽくてね。あの感じはポリでは再現できないものなので」

綾小路翔

綾小路翔 [高画質で見る]

ヤンキーファッションの終焉とアシンメトリーの台頭

「あくまで綾小路調べですが、全国区的に僕らの1個、2個下ぐらいから一気に制服のブレザー化が進むんです。私立の学校がブランディングの一環でデザイナーズの制服に変えたりもありましたし、単純に学校側が学生服を改造しづらいようにオリジナルのチェックを採用したりと。この流れも相まり、90年代中盤から変型学生服文化が終焉を迎えていったように感じました。

ヤンキーファッションが消えていった理由には諸説ありますが、まず世の中のモードが大きく変わったことに加え、綾小路的には資生堂が主力商品を切り替えたことも大きいと言い張っています。80年代の資生堂は髪がバッチバチに固まる『ルポ(Rupo)』っていうスタイリング剤を売り出していたんですが、バンドブームの終焉とともに“無造作ヘア”を売りにした『ウーノ(uno)』に変わっていくんです。それまではヤンキーもバンドマンもとにかく立てる、固めることが男の美学だったんですけど、もっとソフトに、しかも忙しい朝、1時間もセットに時間掛けてらんないよね~って人のために、3分あれば指先でセットができる商品が投入された。シンメトリーからアシンメトリーの時代に移るわけです。それまでヤンキーがかっこいいと思うのはリーゼントしかり、デコトラしかり、左右対称のものでしたから」

「ビー・バップ・ドリームス」が最高の名曲なんですよね

続いては音楽面の話も聞いてみたい。氣志團のシングル「恋人」(2000年)のカップリングには、ヒロシ役で知られる清水宏次朗による「Love Balladeは歌えない」(カバーではなく本人の歌唱バージョン)と、「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」挿入歌である「ビーバップ・パラダイス」のカバーを収録。このほかにはどんなオマージュを捧げているのかを聞いてみると、「自分は中学の頃から観察者だった」という自己分析も飛び出した。

「『ビーバップ』は日本人の中ではすっかり『ツッパリ』を意味するワードになってますけど、バンドを始めた我々としては『ビー・バップ・ア・ルーラ』(1956年のジーン・ヴィンセント&ヒズ・ブルー・キャップスのヒット曲)だったり、ジャズの“ビバップ”というスタイルがあることを知るわけです。きうちかずひろ先生は明らかに音楽好きですよね。何せ映画のタイトルからして『哀歌(エレジー)』『行進曲』『狂騒曲』ですもんね。

『ビーバップ』映画のサントラ盤はどれも僕のバイブルなんですけど、『この曲はきっときうち先生が自らリクエストしたんだろうな……』とか勝手に想像して聴いていましたね。中でも僕が好きなのは、きうち先生ご自身が作詞も手がけた『高校与太郎完結篇』エンディングテーマの『ビー・バップ・ドリームス』。これが『ビーバップ』シリーズを締めくくるに相応しい最高の名曲なんですよね。『♪アーガラホー、ホーガラヘー』ってやつで、僕も自分のバースデーイベントでカバーしました。

ちなみに氣志團が2000年にインディーズで出したファーストミニアルバム『房総与太郎路薫狼琉』のジャケットは、映画『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズのパンフレットを雰囲気オマージュして作りました。独特な写真の切り抜き方とサイズ感、色合いもアバンギャルドだし、サブタイトル部分のアプローチもセックス・ピストルズ感があって、好きだったんです」

映画「ビー・バップ・ハイスクール」パンフレット表紙 ©︎1985 東映 セントラル・アーツ

映画「ビー・バップ・ハイスクール」パンフレット表紙 ©︎1985 東映 セントラル・アーツ [高画質で見る]

番格には描けない世界

「氣志團のMVを作る際、基本的に『ビーバップ』はいつも下地にあります。『ビーバップ』に行くか、『湘爆』に行くかってぐらい。それらの中でも『SECRET LOVE STORY』(2011年)は異色で、昭和と平成の間のツッパリ青春ストーリーのイメージなんですけど、自分の中では『ビーバップ』の後に公開された『六本木バナナ・ボーイズ』(1989年)が敷かれているんです。この映画はヒロシとトオル役の清水宏次朗さんと仲村トオルさんが再びコンビを組んだ作品なんですけど、その中で清水さんが『俺たちのシーズン』っていう曲を歌うんです。この曲の世界観が僕は好きで。女の子を取り合って絶対譲りたくないけど、お前ならまあしょうがないよなとか言ってたら、結局どっちも振られてざまあねえよなっていうのが、まんまトオルとヒロシの世界観なんですよね。

そこを入り口に、とある男女がカップルになるよう僕がピエロになるってのが『SECRET LOVE STORY』のMVで、『ビーバップ』からちょっと外れてるのはそこなんです。“あいつらが仲がいいのが美しかった、それを見てる俺”みたいな世界観。そうしたのは、自分が主役なのはちょっと違うんだよなと思っていたから。当時の僕らはドラマっぽいMVを撮りたかったんですけど、当然ながら周囲は僕を主役にしたがる傾向があって。だけど僕はいつも主役ではないんです。曲の中でも」

氣志團「SECRET LOVE STORY」ミュージックビデオ

「“主役は別にいて僕は観察者”みたいな感覚は中学の頃からなんです。自分、もともとの気質は全然ヤンキーじゃなくて。今思えばフィールドワークというか、ヤンキーという存在があまりにも興味深かったので入り込んでみた、という感覚です。タバコを吸ったり、バイク乗ったりしたのも全部通過儀礼。やらないと仲間に入れてもらえないので。アンダーグラウンドのバンドシーンにも似たところがありましたね。彼らの刹那的な生き様に惹かれたんです。

『ビーバップ』って、番格には描けない世界があると思っていて。トオルとかヒロシじゃない、いつもそのすぐそばにいながら俯瞰で自分たちを見ることができた人間だからこその世界観なんですよね。そこに共感を持っています。だからこそ『ビーバップ』や『湘爆』の世界を具現化するときに、自分は脇役がいいという思いがあったのかなと思います」

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氣志團のファンクラブ名は「私立戸塚水産高校」

読者の反応

松本 @matsushin1978

これ「日本がバームクーヘン大国になったのは『ビー・バップ・ハイスクール』の影響」という話が面白すぎるので読んでほしい https://t.co/ZEQxItOBaV

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