ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第51夜 [バックナンバー]
選者 / SCANDAL RINA「イノセンツ」
「どうなる?」「どうして?」“隠れた力”に目覚めた無邪気な子供たちがたどる結末
2023年9月29日 21:00 5
ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。
第51回は
文
通じ合うこと、会話することに宿る“特殊能力感”
大人が思うよりよっぽど速いスピードで子供は成長していて、大人には想像もつかないような好奇心を持っていたりするのだと思う。その中には、きっとユーモラスなものから恐ろしいものまで。
夏の終わり、久しぶりに映画館でみるホラーは最高だった。ポスターのビジュアルが素敵で、気になっていた作品だった。
団地の前にある公園で、タイヤが椅子になったブランコに寝転がって世界を逆さに見る少女。
これだけで、なんだか惹き込まれるものがあった。
母親の運転する車に、並んで座る姉妹。
妹は、母親に気付かれないよう自閉症の姉の体を指でつねってみるが反応はない。
こんなシーンから物語りはスタートする。
家に帰っても両親共にどうしても姉に使う時間の方が多くなっていて、それは仕方ないことだと分かるからこそ、余計に寂しくて。
妹の表情はいつも曇っていて、どこにも逃せない気持ちを抱えている感じがした。
そんなとき森の中で、とある少年に出会う。
この少年もまたひとりぼっちだった。
彼は「念じるだけで物が動かせる」と言い、石を動かしてみせる。
その不思議な遊びにお互い高揚して、一気に仲が深まった。友達の存在や、親の目の届かない外の世界は心を自由にしてくれて、やっと見つけた居場所になった。
ふたりは毎日会うようになり、その遊び方も日に日にエスカレートしていった。
高い場所から猫を落としたらどうなるだろう?
意地悪なあの子にどんな悪戯をしてやろう?
自分の親から愛を感じないのはなんでだろう?
「どうなる?」と「どうして?」で、子供たちの頭の中はいっぱいだ。
比較的静かにゆっくり進むお話しなのだけど、中盤から裏の世界にワープしたようなシーンが挟まってきたり、(なんだか少しストレンジャーシングス感?があって高まった!)ハラハラする展開に最後まで退屈することなく楽しめた。
言葉で会話しなくても分かり合えることがあったり、空気を読み合えたり、虫の知らせと言う言葉があったり。そもそも通じ合い方っていろんな可能性や方法があって、“会話の仕方”自体に特殊能力感があるよなぁなんてことを思った。
まだまだ小さな子供。
そんな風に思う大人を上手くコントロールしてるのは子供の方かもしれない。誰がどんな秘密を持っているのか、本当のところは分からない。
体にまとわりつく湿気がぐんと重くなったみたいで、館内をなんとも言えない空気にさせるパワーのある作品だった。
RINA
SCANDAL RINA
1991年8月21日生まれ、奈良県出身。2006年にHARUNA(Vo, G)、MAMI(G, Vo)、TOMOMI(B, Vo)と結成したガールズバンド・SCANDALでドラムとボーカルを担当。2008年にシングル「DOLL」でメジャーデビューを果たし、翌2009年にシングル「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞した。2019年にはSCANDALのプライベートレーベル・herを設立。デビュー15周年記念ツアー「SCANDAL TOUR 2023 『感謝祭 vol.2』」が10月に大阪のZepp Osaka Bayside、愛知のZepp Nagoya、東京のZepp Haneda(TOKYO)で開催される。
「イノセンツ」(2021年製作)
本作はノルウェー郊外の住宅団地を舞台に、4人の子供たちが隠れた力に目覚める北欧発のサイキックスリラー。引っ越してきた9歳の妹イーダと自閉症で口を利けない姉アナは、同じ団地に暮らすベンとアイシャと親しくなる。魔法のようなサイキックパワーの強度を高めていく子供たちだったが、無邪気な遊びは次第にエスカレートしていってしまう。
監督は、「テルマ」「わたしは最悪。」で共同脚本を担った
映画「イノセンツ」60秒予告
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