映画館で待ってます 第1回 [バックナンバー]

劇場のコロナ対策最前線:TOHOシネマズ編

「映画の世界に没頭してもらうため、やれることはすべてやる」

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緊急事態宣言の解除が発表され、全国の映画館が再び火を灯している。東京都は6月1日、映画館などが対象となる休業要請の緩和措置「ステップ2」へ移行。これを受け、都内のシネマコンプレックスやミニシアターは続々と営業を再開した。

再開を待ち望んでいたファンがいる一方、まだまだ不安を感じる人も多いはず。映画ナタリーでは、さまざまな劇場で今行われている感染対策の実態をレポートする。

今回は、6月5日に再オープンした東京・TOHOシネマズ 日比谷にて、再開初日の様子を取材。感染予防の取り組みや、現場でのリアルな声を聞いた。

取材・文・撮影 / 山里夏生

ロビーの“3密”対策は

劇場ロビーの様子。足元には目印が付けられている。

劇場ロビーの様子。足元には目印が付けられている。

2018年3月にオープンしたTOHOシネマズ 日比谷は、東京ミッドタウン日比谷の4・5Fに11スクリーン、東京宝塚ビル地下に2スクリーンを有する映画館。日比谷ロビーに降り立つと、大きな窓から爽やかな光が差し込んでおり、視覚的には“3密”のうちの1つである“密閉”された印象は感じない。

実際のところ、興行場法の認可のもと営業されている映画館は、定期的に空気を入れ替えるよう法律で定められている(参照:映画館の新型コロナウイルス感染予防対策、全興連の副会長が“3密”軸に説明)。すべてのTOHOシネマズでは、館内の空気が外気と入れ替わる空調システムが使用され、上映中のスクリーンの中であっても決して密閉空間ではない。

自動券売機や発券機は1台置きに稼働する。

自動券売機や発券機は1台置きに稼働する。

それでは、“密集”についてはどうか。ロビーを見回すと、自動券売機や売店前の足元には、ソーシャルディスタンスを取るための目印が付けられており、待合ソファやハイテーブルは撤去されている。さらに“密接”を避けるために、チケット売り場や売店のレジには、飛沫感染防止用の透明パネルを設置。現金払いは可能だが、キャッシュレス決済が推奨されており、釣り銭はキャッシュトレーでの受け渡しとなる。そのほか消毒液が複数設置され、トイレのハンドドライヤーの使用中止などの措置が取られた。

劇場スタッフも万全の対策で営業に臨む。全従業員はマスクを着用し、入場口でチケットを確認する従業員などはゴム手袋とフェイスシールドを付けて対応する。

スピーディーな検温、徹底した清掃・消毒

入場口の様子。チケットを確認するスタッフはフェイスシールドを着用する。

入場口の様子。チケットを確認するスタッフはフェイスシールドを着用する。

この日、9時の劇場オープン時には10数名の来場客の姿が。平日の午前中ということもあり、客層は中高年の男女が多い。いずれもマスクを着用し、間隔を空けつつ営業開始時間を待っている。以前は予告編などが映されていたロビーのスクリーンには、退場時における観客同士の距離の確保や、会話を控えること、マスクの着用、咳エチケット、手洗いと手指の消毒といった協力願いの映像が流れており、それに目を留める人々も見られた。営業が始まると「いらっしゃいませ!」とスタッフの元気な声が響き渡り、映画ファンたちは飲食物やグッズを購入しつつ、ゆっくりと入場口に向かった。

入場口に設置されるAI検温システム「SenseThunder-Mini(センス・サンダー・ミニ)」。

入場口に設置されるAI検温システム「SenseThunder-Mini(センス・サンダー・ミニ)」。

入場口に導入されたのは、日本コンピュータビジョンが開発したAI検温システム「SenseThunder-Mini(センス・サンダー・ミニ)」。この機器では、AI顔認識技術と赤外線カメラによって、来場者の体温を0.5秒で測定することができ、マスクやメガネをしていても検温が可能だ。

スクリーン1の座席。ひじ掛けは各回ごとに消毒される。

スクリーン1の座席。ひじ掛けは各回ごとに消毒される。

入場の際には、スタッフにチケットを渡すことなく、目視確認のみで劇場内へ。スクリーンに入る前の廊下には、座席のひじ掛けなどに使用できる消毒液とペーパータオルが用意された。劇場内の客席は、前後左右に1席ずつ間隔を空けた座席指定となっており、観客はソーシャルディスタンスが確保された状態で映画を楽しむことができる。TOHOシネマズの平松義斗氏は、幕間の時間を長く確保することで、劇場内の清掃・消毒をより強化していくと説明。「扉や手すり、座席のひじ掛けなど、お客様の手が触れる場所は各回ごとに消毒します」と述べ、上映回数を減らし、座席稼働が50%になったことから「入退場時の混雑や密集が避けられるため、安全にご鑑賞いただける環境となっています。混み合う場合には適宜スタッフがご案内いたしますので、ご安心ください」と話した。

6月5日の上映スケジュール。

6月5日の上映スケジュール。

この日の上映ラインナップには「ANNA/アナ」「デッド・ドント・ダイ」といった新作のほか、「アベンジャーズ」シリーズや「ローマの休日」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「君の名は。」といった旧作も並んだ。編成について尋ねると、平松氏は「映画ファンの方にニーズがありそうなものや、喜んでいただける作品を選んでいます」と意図を明かす。そして「休業中に弊社が実施した安全対策についてのアンケートで、『再開を待っています』と応援コメントを書いてくださる方が多く、とても励みになっていました。中には具体的な対策のアドバイスを書いてくださる方もいて、お客様からの声を参考にしながら再開の準備を進めておりました」と映画ファンから届いた声を紹介した。

支配人から、観客へ思いを込めて

マスクやゴム手袋、フェイスシールドを着用しつつも、劇場で働くスタッフの表情は晴れやかだ。TOHOシネマズ 日比谷の館長である福井嘉輝支配人は、「再開前は、従業員の親御さんなどから安全について不安視する声もありました。しかし、しっかりとした安全対策を取ることで、お客様だけではなく私どもも安心して働けています。どのスタッフも営業再開の連絡をしたところ、快く戻ってきてくれました」とほっとしたような笑顔を見せる。

TOHOシネマズ 日比谷の福井嘉輝支配人。

TOHOシネマズ 日比谷の福井嘉輝支配人。

休業中、苦境に立たされた映画館のために、何ができるのかを考えた映画ファンも多いはず。「劇場支援のためにできることは何か?」と尋ねると、福井は「まずは、純粋に映画を映画館で楽しんでいただくことが私どもの一番の願いです。映画館は、作品を一番きれいに観ていただくための場所。ぜひスクリーンで映画を観ることの楽しさを思い出していただければ幸いです。映画の世界に没頭していただくために、やれることはすべてやってまいりますので、足をお運びいただければと思います。ご来場を心よりお待ち申し上げております」と来場者へのメッセージを送った。

なお、現在YouTubeのTOHOシネマズ公式チャンネルでは「紙兎ロペ『TOHOシネマズの感染予防対策』編」が公開中だ。

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