製作発表会では萩尾のほか、「銀河英雄伝説」などで知られる作家の田中芳樹、そして「11人いる!」舞台版の脚本と演出を手がける劇団スタジオライフの倉田淳によるトークセッションを実施。萩尾と田中はともにSF作家であり、著作が舞台化された経歴を持つ。田中はもともと萩尾のファンだったといい、「少女マンガに愚かな偏見を持っていたが、大学の下宿仲間が持っていた『ポーの一族』に衝撃を受けて、少女マンガとはこんなに進化していたのかと見方が変わった」と萩尾作品に出会った頃のエピソードを明かした。
また自らの著作が舞台化されることをどう思うか、と尋ねられると、田中は「舞台としてお任せする以上は、小説では表現できなかったところを見せていただきたいと思って口を挟まなかった。役者さんたちの運動量のものすごさに圧倒されました」とコメント。「銀河英雄伝説」は宝塚歌劇団によるものも含め、これまでに6度舞台化されている。一方萩尾は「スタジオライフと倉田さんの演出の雰囲気が非常に好き。原作の芯になるものを絶対に壊さず構成してくださるので、全面的に信用してお任せしているんです。好きにやっていただきたい」と、舞台版の出来に太鼓判を押す。
今回が初めての舞台化となる「続・11人いる!」では、「11人いる!」の物語の後、帰郷したバセスカが統治するアリトスカ・レと宇宙大学で起こるドラマが描かれる。バセスカが暮らす星はなぜクラシカルな世界観で描かれているのか、と倉田が尋ねると、萩尾は「王宮があって、なのに宇宙船に乗ってて、というミスマッチが逆に魅力的な設定になると感じて。ロマンチックでいいなあと思い、ビジュアルから入りました」と説明した。
また田中は「11人いる!」にはミステリーの要素もあると語り、「連載当時は友人と、どのキャラクターが11人目なのかを予想したりした。『11人目というのはいざという時の食べ物なんだよ』なんて話したりして」と意外な発想を披露すると、萩尾は感心した様子で「その設定で1本描けますね」と返す。
トークセッションに続いては、「11人いる!」「続・11人いる!ー東の地平 西の永遠ー」のキャスト陣が登壇。「続・11人いる!」は劇団スタジオライフのベテラン勢、再演となる「11人いる!」は若手俳優が中心としてキャスティングされている。「続・11人いる!」でタダトス・レーン役を演じる山本芳樹は「初演から2年近くたって歳をとったが、若返られるようにがんばりたい」と笑わせる。またフロルベリチェリ・フロル役の及川健は「大好きなキャラクターなので、また演じられることをすごくうれしく思う」と笑顔で語った。
会見終了後、萩尾はコミックナタリーの取材に応じ、「11人いる!」の初演を観た感想を「舞台の作りはとてもシンプル。地球型の骨組みの舞台装置を使って、いろいろな場面をくるくると素早く交換していく演出がおもしろかったです」とコメント。キャストのビジュアルについても「原作のイメージを損なわなくて、さらにおもしろいビジュアルが生まれているという感じでした」といい、違和感なく楽しめたという。
またかつて「11人いる!」の執筆中に、キャラクターそれぞれのバックボーンを描く続編を構想していたとのこと。タダとフロルが各キャラの惑星を次々に訪問していくという流れを考えていたが、「タダが優等生すぎて動かしづらくなってしまって」中断したのだという。「うまく(アイデアが)つながれば描きたい」という言葉も飛び出したので、ファンは続編が世に出る日を願って待とう。
舞台「11人いる!」は2013年1月10日から20日にかけて、新宿・紀伊國屋ホールで上演。また「続・11人いる!ー東の地平 西の永遠ー」は2013年2月28日から3月17日まで同じく紀伊國屋ホールで、3月20日に名古屋・名鉄ホールで、3月30日に東京・かめありリリオホールで、4月6・7日に大阪・サンケイホールブリーゼにて上演される。チケットの先行予約などの詳細は公式サイトをチェックしてほしい。
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- スタジオライフ2作品連続連続公演『11人いる!』
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