ジブリの彩色テクニックを学べる「映画を塗る仕事」展、見どころを館長が解説

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東京・三鷹の森ジブリ美術館で、明日11月17日より企画展示「『映画を塗る仕事』展」が開催される。本日11月16日、一般公開に先駆けて安西香月館長による展示説明と内覧会が行われた。

安西香月館長

安西香月館長

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「『映画を塗る仕事』展」入口の様子。

「『映画を塗る仕事』展」入口の様子。[拡大]

同展では高畑勲監督、宮崎駿監督がこだわったアニメーションの色使いを、当時のセル画などを通して紹介。物の材質、質感などに実写とは異なるリアリティを追求した両監督と、彼らの要求に最大限に応えたスタッフの創意工夫を、彩色の面から解き明かす。本展示は三鷹の森ジブリ美術館にとって1年半ぶり、17回目の新規展示。安西館長は本日の朝まで慌ただしく準備が行われていたことを明かした。

映画制作に使用された580色の絵の具瓶と見張り番を務めるパン種。

映画制作に使用された580色の絵の具瓶と見張り番を務めるパン種。[拡大]

「もののけ姫」より、1枚のセルに68色の絵具が使用されたシーン。

「もののけ姫」より、1枚のセルに68色の絵具が使用されたシーン。[拡大]

企画のきっかけは、安西館長が常設展示室のセル画を取り替えようと、久しぶりに保管箱を開けたことだったという。安西館長は 「最初に出てきたのは(『もののけ姫』に登場する)タタリ神のセル画でした。そして、それまでの展示より手の込んだものが、大量に出てきたんです。宮崎監督に『昔はこれを1枚ずつ描かせてたんですか?』と聞いてみると、『そうだよ』って(笑)」とそのときのことを述懐する。スタジオジブリがセル画用の絵具で映画制作を行ったのは、1997年公開の「もののけ姫」が最後。「もののけ姫」には歴代最高となる580色のセル画用の絵具が使用されており、主人公・アシタカが矢を射るシーンでは、1枚のセルに68色もの絵具が用いられている。

「『映画を塗る仕事』展」ビジュアル

「『映画を塗る仕事』展」ビジュアル[拡大]

展示では多くのジブリ作品で色彩設計を担当した保田道世氏の仕事を中心に、実例を用いながらテーマごとにポイントを解説。「時刻によって変わる色」では、「となりのトトロ」に登場するネコバスの色が1日の時間帯でどのように変化しているのかを知ることができる。安西館長は黄昏時、夕方、街灯が当たったときのネコバスの色彩を例に挙げながら、「ジブリの作品は時間の流れを細かく表現しています。ちょっとした色の違いで時間や情景を事細かに描き分けています」と展示を解説。続けて「(高畑監督と宮崎監督は)夜を表現するときに画面を暗くするのではなく、透明感を保つため色を変えて表現しているんです。その技術は綿々と受け継がれています」と語った。

「『映画を塗る仕事』展」の様子。

「『映画を塗る仕事』展」の様子。[拡大]

「『映画を塗る仕事』展」の様子。

「『映画を塗る仕事』展」の様子。[拡大]

展示には両監督が特にこだわった、光や水の表現における彩色テクニックを知ることができる「光を塗る」「水中と空中の色を塗る」「影の役割」といったパネルも用意された。「リアリズムの追求」と題されたパネルでは、「火垂るの墓」で節子が顔に蛍の光を浴びるシーンの色彩設定を事細かに紹介。「表現のテクニックを学ぶ」では、高畑監督と宮崎監督が「長くつ下のピッピ」の制作を準備中の1971年頃に出会い、感銘を受けたというロシアの挿絵作家イヴァン・ビリービンに触れている。

パネルはテーマ別に40点が用意されており、合計196枚のセルがお目見え。安西館長は最後の挨拶で、「手の込んだセルをできる限り並べました。すべて見ると本当に疲れます(笑)」と充実の展示内容に自信をのぞかせた。

三鷹の森ジブリ美術館の入場は日時指定の予約制。毎月10日に翌月入場分チケットが全国のローソンにて販売される。「『映画を塗る仕事』展」は2019年11月まで開催予定だ。

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(c)Studio Ghibli (c)Museo d'Arte Ghibli

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安倍吉俊/yoshitoshi ABe @abfly

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