冒頭、新井は「インタビューの類は受けない」「トークショーは生涯やらないと思っていた」と明かす。しかし引きこもってマンガを描き続け20数年経ち、外に出てさまざまな経験をするようになってから「来るものはできるだけ全部受け入れる(ようになった)」ということで本イベントが実現。新井による乾杯の音頭で、シンガーソングライターの
第1部には、著書「超歌手」で新井の「ザ・ワールド・イズ・マイン」に触れていた縁で大森が登場。花沢健吾が好きと語っていたことから新井を知った彼女は、まず「宮本から君へ」を読んだという。そのヒロインである中野靖子について「靖子は屈強なヤリマン。他人が学んできて得たものを一緒にいることで吸い取って、すぐに次に行くところが自分に似ている」と語る。そして新井作品を「女性の強さを、女性にも男性にも加担せずに描いている」と分析。「私は(心に持つ)ちんこで負けないと思って生きてきた。新井作品の女性も、屈強なちんこを持っている感じがするのがいい」と続けた。
一方、今回のイベントでの共演をきっかけに大森の楽曲を聴き始めた新井は、「大ハマリしている」「今、(大森に)恋をしています」と照れ気味に告白。特に感銘を受けた楽曲「TOKYO BLACK HOLE」については歌詞を拡大コピーして作業机の前に貼り、「超歌手」も「俺が書いたんじゃないかと思った」「『綺麗なものを、汚いものをすっ飛ばして言うな』と書いてあって。おっしゃる通り」と賞賛するなど、強いシンパシーを感じていることを明らかにした。
大森が「愛しのアイリーン」で一番好きな場面として、主人公・岩男の母親である高齢のツルが息子たちのセックスを見て生理が再開するシーンを挙げると、新井はそのシーンの秘話を語る。新井によると、そのエピソードは映画評論家の小森和子が大好きなジェームス・ディーンの墓参りをしたところ生理が再開した逸話が元ネタ。そしてツルを始めとする女性キャラクターについて「女の人が描きたくて描いた『アイリーン』は、脇役に至るまで全員好き」「お母さんとして描いたツルは例外として、全員とやれる」と思い入れたっぷりに断言した。
さらに話題は女性論へ。新井は「最近、遊んでいても(男性より)女性のほうが面白い。女性の方が地べたに足が付いている人が多いし、シモの話もえげつなくって」と語り、大森は「女のほうが、なんでも自分で作っていかなきゃないといけない風潮のせいかもしれない」と同調する。そして新井が日本の男社会を変えるために、女性が女性器の名称を叫んで男をドン引きさせるしかないと主張すると、大森も「絵も、女性器を描いたら捕まるけど男性器を描いても捕まらない」という現状への不満を隠さない。初対面ながら、2人はすっかり意気投合した様子だった。
第2部では、新井をジャッキー・チェン、塚本晋也と並ぶ「自分の神様」と例える吉田の鋭い舌鋒が続く。「監督になる前から、絶対自分が映画化すると夢見ていた」とコメントするほど「愛しのアイリーン」を映画化したかった理由を問われると、吉田は「(『愛しのアイリーン』は)ぶっ飛んでるけどいい話。性描写が多かったりするけど、俺を泣かした作品だから」ときっぱり。さらに「原作ものの映画をやるなら、原作は花嫁で監督は花婿。結婚をして子供(映画)を作るならウェディングドレスを脱がして犯す必要がある。そこに愛があるかどうかで、子作りになるかレイプになるか(決まる)」と熱っぽく語り、原作愛を表明する。そんな吉田による熱心なラブコールに、新井は「映画の『アイリーン』は吉田監督からのラブレターをもらった気分です」と恥じらいの表情を見せた。
しかし熱烈な新井ファンである吉田も、近作の「KISS 狂人、空を飛ぶ」「ひとのこ」には戸惑いがあるようで、「『SCATTER』辺りから『新井先生どうしたの?』と思っていたけど、最近の作品のおかげで『SCATTER』がまともに見え始めてきた。(作品に世間が追いつくために)あと20年ください」と素直な心情を語る。それを受け、新井は「20年後は(描きたいことが)届いてくれる自信はある」と言い切った。
映画好きの新井は、「マンガですごく売れたらその延長で映画が撮れるかも」との思いからマンガ家になったと語る。しかし映画作りについて見聞きし、人とお金の管理が大変だと思い知って「死んでも無理」と悟ったという新井に、吉田は「俺が新井さんのプロデュースをしたい。映画界以外の人が監督をすると技術屋にいびられるけど、俺が守るから」と声をかけた。それでも新井は「映画作りが無理だと思ったもう1個の理由が、濡れ場の存在。もちろん濡れ場は撮りたいけど『お前、自分が見たいだけだろう』と思われることを想像すると恥ずかしい」と頭を振る。吉田に「思われましょうよ。照れちゃ負け」と言われて観念したか、メガホンを取ることへの意欲をふたたび問われた新井は「流れに身を任せます」とつぶやいた。
MCの九龍ジョーが「映画『愛しのアイリーン』は美しい」と話を向けると、新井は「冬の現場でラストのあるカットを撮影しているときに、モニターで観ていたらあまりに(役者の)表情が素晴らしくて泣きそうになった」と感慨深げに振り返る。すると吉田は「(撮影中に)奇跡ってある。冬や雪のシーンなんて俺らは選べないし。今回は映画運があった」「(映画化決定まで長年かかったものの)『愛しのアイリーン』が自分の2本目や3本目の段階で成立していたら、アイリーン役のナッツはいなかったし。これまで9本撮ってきた経験があるからこそできたもの。撮るべきときに撮れた」と手応えを語る。そして「今の20~30代は通っていない作風だから新鮮なはず。しかもフィリピンとか山奥とかミクスチャーな感じで、日本映画の歴史上でもあまりない系統だから観てほしい」と観客にアピールしていた。
なおナタリーでは、「愛しのアイリーン」の特集記事を展開中。コミックナタリーでは新井が歴代の著作をじっくり振り返るロングインタビューを、映画ナタリーでは吉田監督と映画で主人公・岩男役を務めた安田顕の対談、ツル役の木野花へのインタビューを掲載している。関連する特集・インタビュー
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- 「愛しのアイリーン」予告編
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松本 @matsushin1978
新井英樹が大森靖子を聴き始めて、「(大森に)恋をしています」って言ったりTOKYO BLACK HOLEの歌詞を机の前に貼ったり「『超歌手』は俺が書いたんじゃないかと思った」って言ってるのいい話だなー
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