少ハリ、ちゃお、あしたのジョー……愛を詰め込んだ記事の一部
文 / 熊瀬哲子
この会社に入社してから、好きなものにたくさん関わる仕事をさせてもらっています。特集記事を制作するときは、いつもその作品への愛やリスペクトをもってお仕事をしていますが、下記3つの記事は、特に自分自身の愛が溢れてしまったインタビューだと思います。
ハロー!プロジェクトをはじめとする3次元のアイドルが好きな私にとって、「少年ハリウッド」は当時からとても特別な作品でした。この作品を好きな人とこの愛を共有したい、何より「少年ハリウッド」をより多くの人に知ってもらいたいという思いで、特集記事の制作に臨みました。インタビューでは思わず涙ぐむほど少ハリ愛に満ちた広瀬ゆうきさんにお話をお伺いすることができて、自分としても、とてもお気に入りの記事になっています。
ちゃおコミの特集記事では、同世代のちゃおっ娘であるつづ井さんと、予定時間を大幅に超えてしまいながらも、ちゃおの話で大盛り上がりました。つづ井さんもこの取材を心から楽しんでくださっていたようでうれしかったです。インタビュアーはあくまで聞き手の仕事ではありますが、会話のキャッチボールを楽しめる取材ができたときは、「きっといい記事をお届けできる」という確信にもつながります。
私は平成生まれのアラサーですが、20歳の頃にひょんなことから「あしたのジョー」にハマり、マンガはもちろんアニメのDVDも全巻集め、ひいてはアニメで矢吹丈役を演じたあおい輝彦さんのコンサートに行くほど作品のファンになっていました。敬愛する島本和彦さんに、「あしたのジョー」、そして同作を原案としたアニメ「メガロボクス」についてお話ができるという贅沢なお仕事は、取材が決まったときから楽しみで仕方がなかったことを覚えています。取材はリモートで行いましたが、思わず膝を叩く(物理)ほど熱のこもった島本さんの“あしたのジョー愛”が画面越しでも伝わってきました。記事でもその熱量が伝わっているとよいのですが。
自分は制作に関わっていませんが、下記2つはふとしたときに癒やしを求めに読み返しにいってしまう記事です。「学園ベビーシッターズ」はメインの写真から最高ですね。子供たち1人ひとりの表情がとても味わい深い。特集記事の最後には、子供たち、そしてパパとママからのコメントが掲載されているのですが、そちらも絶対にチェックしていただきたいです。改めて西山宏太朗さん、梅原裕一郎さん、お疲れさまでした。
「SNOOPY BOOKS」の林原めぐみさんの記事は、インタビューはもちろんのこと、最後に掲載された私物のスヌーピーグッズコレクションに注目していただきたいです。主(ヌシ)と呼ばれるスヌーピーのぬいぐるみ。ちょっとくたびれた姿から、主がとても愛されていることが伝わってきて、涙が出てきそうなほど愛おしい気持ちに包まれます。
東海オンエアてつや、無駄なヘアチェンジで見せたエンターテイナーぶり
文 / 西村萌
アニメのワンシーンなどがデザインされたアパレルアイテムを、東海オンエアのてつやさんに着用してもらいました。当時、身なりに気を使わないイメージが浸透していたてつやさんを、カッコよく撮ろうという企画です。実は当日まで準備がバタバタで、スタイリストさんにオファーしたのは撮影の2日前。たまたまてつやさんがX(旧Twitter)にご自分のサイズ表をピン留めしてくれていたので、事務所に確認する手間が省け、タイトなスケジュールの中でもスムーズにスタイリストさんとやりとりできました。
撮影は4パターンのスタイリングで行い、最後にインタビューという流れ。てつやさんにはインタビュー前に私服に着替えてもらったのですが、もう撮影は終わったのにヘアスタイルを新たに変えて登場してきてくれました。この小さなサプライズ、スタッフ陣を笑わせるためにヘアメイクさんと考えてくれたそう。普段のYouTubeで見せている姿とあまりにもギャップがなく、さすがのエンターテイナーぶりに感激しました。
大事にしたいこの姿勢──取材でグソクムシを食べた日
文 / 鈴木俊介
“マンガに関係するものなら”と、さまざまなイベントを取材させてもらっていますが、ことあるごとに思い出すのはグルメマンガ「桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?」のコラボ企画の取材です。
マンガの再現メニューが飲食店で提供されると聞いて、その試食会にお邪魔したのですが、「桐谷さん」はヘビ、サソリといった珍食材を題材とする作品で、提供メニューも「カエルと野草のスープ」「オオグソクムシのチリソース和え」といったもの。著者のぽんとごたんださんをはじめ、試食会に集まったファンの皆さんは当然こうした食材に興味をお持ちの人ばかりだったのですが、当方ただのマンガ好き。「面白そうなイベントですね」とのんきに顔を出したものの、こうした珍グルメは初めての体験で、どの食材もマンガだとかわいらしかったのに、目の当たりにするとインパクトがあります。グソクムシのお腹側の写真を撮らせてもらったときは「あっ、これ無理かも……」という思いが心をよぎりました(いただきましたが)。マンガのニュースサイトで働いているとは思えない貴重な体験でした。
レポート記事ではそんなグソクムシの写真も見られます。
「マテリアル・パズル」が始まったのは僕がまだ中学生だった頃です。「清杉」ですでに土塚理弘ワールドに魅せられていた少年は、ギャグもありバトルもありのこのファンタジー巨編に夢中になったものでした。だから10年ぶりに連載が再開すると聞いたときは胸が熱くなりましたし、企画書を出して土塚理弘さんにインタビューをさせてもらえることになったときは「まさか」と心が震えました。インタビュー当日は中学生のときに買った「清杉」の単行本を片手に待ち合わせ場所へ向かいました。原稿は昔の自分に届けるような気持ちで書いたように思います。
まだ「マテパ」を知らない人に興味を持ってもらいたい。昔読んでいた人に思い出してもらいたい。そんな思いが、P1の相関図やP4のエピソード紹介に表れています。ページの隅にドルチルが飛んでいるのは、自分で読み返しても意味がわかりませんが、「どこかに使いたい」と相談したらデザイナーが気持ちを汲んでくれたのでしょう。
「こうすればよかった」という部分もいくつかあります。ツイートに付けたハッシュタグに変換ミスがある(正:#テンション上がってきたぜーッ)のも悔やみましたし、P3に差し込んだ「清杉」のカットも説明不足だと反省しました。土塚理弘さんの「ミカゼ」と「アダラパタ」のイントネーションが、自分が思っていたものと違い、なんとかそれを文字で皆さんに伝えたかったのですが、インタビューにうまく盛り込めなかったことも残念に思っていました。これは後年、ボイスコミックが公開されたことで解消されたのですが……。
初めてのインタビュー、初めての裁判傍聴
文 / 増田桃子
私がコミックナタリーで初めて担当したインタビュー記事です。森薫先生の仕事場にお邪魔にして、一日中カメラを回しながら作画の様子を拝見しお話を聞く、という今やれと言われてもちょっと躊躇するボリューミーなお仕事でしたが、マンガ家さんの偉大さを実感した取材の1つです。今読み返すと稚拙な文章だなと思いますが、編集長から10回以上リテイクされて心が折れそうになりながら必死に原稿を書いて、このときに指摘されたことはけっこう今でも覚えているので、私が文章を書くときのベースになっているのかなと思います。
2009年に行われた楳図かずお先生の自宅をめぐる裁判の記事で、なぜか私が楳図先生の法廷画を描きました。裁判の傍聴は、希望者が多い場合抽選になるため、ナタリーのスタッフ総出で東京地裁に行ったのですが、そんなことも含めて記憶に残っています。コミックナタリーができて1カ月ぐらいしか経っておらず、自分の仕事がなんなのかもまだ曖昧な状態でしたが、「裁判を傍聴する」というあまりにもマスコミ然としたお仕事にワクワクした思い出です。
「テニプリ」イベントは特別な時間、 ファン代表で臨んだ「D・N・ANGEL」
文 / 粕谷太智
この仕事をしていると年間で何十ものイベントに取材で参加させてもらいます。舞台挨拶、飲み食いしながらのトークショー、幕張メッセやさいたまスーパーアリーナなどで開催される大型イベント、時には厳粛な会見なんかも。そんないくつものイベントを体験してきた中でも、「テニスの王子様」のイベントは私にとって特別です。
もちろん昔から作品が大好きだということはあるのですが、キャストそしてファンが作り出す、「テニプリ」のイベントでしか味わえない空気感は、毎回、自分を特別な気持ちにしてくれます。叶うことなら、レポートを書く手を止めて、一緒に「氷帝コール」をしたい、そんな思いを秘めながらレポートを書かせていただいています。今回は自分で担当した3本のレポートを選びました。現地で参加した「AnimeJapan 2022」では、多くのファンの方々と一緒に、不動峰戦でのリョーマの流血という懐かしい話題で大笑いできたことにまず感動。そして皆川純子さんの最後の挨拶から、ファンと作り上げてきた「テニプリ」という文化の重みをひしひしと感じ、また一段と作品が好きになったことを覚えています。また、「ジャンプフェスタ」での「テニプリ」ステージは、最後の歌、これだけでも一見の価値ありです。許斐剛先生、キャスト陣のエンターテイナーぶりには毎回に感服させられるのですが、自分が取材した「テニプリ」イベントでは初の声出しだった今年のステージでは、ファンの大声援にも感動してしまいました。
ナタリーのレポート記事は基本的に「感情を乗せない」スタイルです。しかし、思い入れが漏れ出してしまうことも。こうして見返してみると「テニプリ」のレポート、特にタイトルは本当にそれが顕著だなと。文字では伝えきれない魅力、それをどうにかしようともがいているということを、感じてもらえると幸いです。
私がイベントに取材で入らせていただくときは、会場に来れなかった人にもイベントの雰囲気が伝わる記事、そして会場に来た人が帰り道で楽しい記憶を思い出せる記事を書くことを、心がけています。そして記者にだけ許された写真撮影も、ファンを代表してこの瞬間を切り取る大切な仕事です。
2018年のアニメ「あさがおと加瀬さん。」のイベントは私が入社したばかりの頃に書かせていただいた記事です。髙橋ミナミさん、佐倉綾音さん、木戸衣吹さんの自由なトークで会場が盛り上がり、撮影では奇抜なポーズを指定して撮影させてくれるという大サービス。なんと言ってこのポーズになったのかは、記憶の彼方なのですが、早くこの写真を観てほしい!と急いで記事を書いた思い出があります。
アニメ「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。」のイベントは最近のものなのですが、写真がお気に入りの1本です。普段、ライブの撮影をできる機会は少ないのですが、貴重な機会をいただき気合いを入れて撮影しました。少しでも現場の雰囲気を感じ取ってくださるとうれしいです。
子供の頃から大好きだった「D・N・ANGEL」の完結に少しでもお力添えできたことは、この仕事を始めて一番うれしかったことかもしれません。それと同時に、「D・N・ANGEL」を読んでいるというだけで、ものすごくありがたがられる会社に入社できたことを誇らしく思えました。
記事を読んでいただくとわかるのですが、とにかく大ボリューム。自分のやりたいこと=ファンの見たいものだと自信を持って、とにかくやらなければいけないと思ったことを詰め込みました。大げさに聞こえるかもしれませんが、ずっと好きだったものが仕事につながる、自分のオタク人生を肯定できたような、そんな記事です。
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菊池健 - MANGA総研 @t_kikuchi
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