第一印象は「よくわからないアニメ」でした
──広瀬さんは各所で「少年ハリウッド」のファンであることを公言していますが、「少ハリ」とはどのように出会ったのでしょうか。
もともと私はアニメが好きで、アニメが好きな女の子たちが集まるA応Pというユニットでも活動しているので、「少年ハリウッド」も新作アニメの1つとして観始めたんです。アイドルアニメって、「私たちはスーパーアイドルになるんだ!」っていう、夢や希望、ワクワクやキラキラが詰まった始まり方をするものだと思っていたんですけど、「少ハリ」は第1話を観て、「なんだろう、このモヤッとする感じ」と思ったんですよね。
──第1話は少ハリのメンバーがアイドルらしい自己紹介を恥ずかしそうに練習していて、見ているこっちまで恥ずかしい気持ちになってきますよね。
そうそう(笑)。カケルくんのモノローグも独特で、今までのアイドルアニメで語られてきたような言葉ではないし、「よくわからないアニメだな」っていうのが第一印象でした。でも、観続けていくうちに「私はとんでもない作品を観ている」って気付いたんです。最初の頃はみんなキラキラしていないし、やっていることもカッコよくないし、正直推せないんですよ。だけど観ていくうちに、彼らのやっていること、発している言葉、一挙手一投足に全部意味があって、彼らがアイドルになるために必要なことをやり尽くしているんだなと。キラキラと輝くアイドルになるまでの駆け出しの期間をちゃんと見させてもらえているんだと感じました。
──それをどんなところで感じていったのか、印象に残っているエピソードをお伺いしていきたいです(※ここからは作中のネタバレが含まれるため、新鮮な気持ちで「少年ハリウッド」を楽しみたい人は、全26話を観てから読むことをオススメする)。
伝説的だなと思ったのは、「本物の握手」の回ですね。
第16話「本物の握手」
出待ちをするファン、メンバーにプレゼントを贈るファンも増えてきた少年ハリウッドは、ライブ後の握手会もそれなりの盛況を見せていた。そんな状況をうれしく思うメンバーがいると同時に、違和感を覚えるメンバーの姿も。そんな中、ある日シャチョウは「劇場での握手会を当分休みにする」と発表。その代わりに、1日中原宿を歩いているメンバーと偶然会ったファンは握手ができるという「ばったり握手会 野外 in原宿」と題したイベントを計画する。シャチョウは“本物の握手をするのが今回の仕事”だというが……。
「俺、ライブよりずっと握手だけしていたいくらい」って言い出すメンバーが出てくるほど、みんな握手会に慣れちゃうんですよね。それを見ながら「ああ、この子たち悪い方向に行ってるな」と。あくまでメインディッシュはライブであって、握手会はデザートみたいなものだと思うんですよね。私もA応Pの活動の中で握手会はやりますし、ファンの人と触れ合う時間がなくなったら死ぬっていうくらい握手会は大好きなんです。だけど、ファンの人と友達みたいになったり、恋人のようにベタベタしたりするのも違うんじゃないかって、そう感じるのはなぜなんだろうって考えていたんです。そんなときに観た「本物の握手」の中で、カケルくんと握手をしたファンの子がこう言ったんですよね。
「カケルくん。握手できないぐらいになってください。武道館とか、ドームとか、なんか、すっごくすっごく大きなところでお客さんをいっぱいにしてる、少年ハリウッドが……カケルくんが見たいです。そしたら今日のこの握手が、もっともっと宝物になるから」(カケルのファン)
それを聞いて、カケルくんは「今日したのが本物の握手かどうかは、今はまだ誰にもわからない。俺たちが本物じゃないから」「俺たちは、今日した握手を宝物にしてもらうために、本物にするために、1回の握手をずっとずっと大切にしてもらうために、本物にならなきゃいけない……のかもしれない」と気付くんです。
──それを受けて、劇場での握手会の再開を決めたシャチョウが「今は宝物の欠片をたくさんまきましょう。いつかその欠片が宝となって、広い客席で一斉に何百万という輝きに変わる瞬間を、私は見たい」と言うのも素敵ですね。
私もこのエピソードを観てから、「ファンの方と仲良くなろう」とか「もっと好きになってもらおう」と思うだけでなく、今日のこの握手をファンの人が10年後に思い出したとき、その思い出が宝物になっているような、そんな存在になろうと思いながら握手をするようになったんです。そうすると自分自身、仲良くなって人気を得ればいいんじゃないと気付いたし、もっとパフォーマンスを磨いていこうとか、具体的なビジョンが広がっていく。そうすると、ファンの方も「もっとこの子に伸びてほしい」と思ってくれるんじゃないかなって。そう思ってもらえたらいいなと感じながら握手するようになりました。
──触れ合いがメインになってしまうとその瞬間を楽しむだけで終わってしまいますけど、なぜアイドルが握手をするのかを考えたとき、その理由がこのエピソードにはある気がします。
そうなんです! なので「少年ハリウッド」は全アイドル好きもそうですし、全アイドルの方にも観てほしい。だから仲のいいアイドルの子には勧めているんです。「少年ハリウッド」はホントに私の教科書みたいな存在で。活動していて迷ったり困ったり、スランプになったりすると、「少年ハリウッド」を観るようにしてるんです。そうすると答えがそこにあるんです。