土塚理弘「マテリアル・パズル ~神無き世界の魔法使い~」 PR

「マテリアル・パズル ~神無き世界の魔法使い~」|未完のファンタジー巨編、ついに再始動! 土塚理弘が語る10年の空白とこれから

「マテリアル・パズル」は、2002年に月刊少年ガンガン(現スクウェア・エニックス)でスタートしたファンタジー巨編。辺境の村に住む少年・御風(ミカゼ)が、不老不死の魔法使い・ティトォたちと出会ったことから、星の運命をかけた戦いに巻き込まれていく。全4章と銘打たれたこの物語は、2009年に第3章の一部を見せた後、連載がストップ。それから約10年の時を経て、その続編がモーニング・ツー(講談社)にて幕を開けた(参照:土塚理弘「マテリアル・パズル」約10年ぶり始動、100ページでモーツー登場)。最終章となる本作のタイトルは「マテリアル・パズル ~神無き世界の魔法使い~」。2月22日より、3カ月連続で単行本が刊行される。

コミックナタリーは著者・土塚理弘へインタビューする機会を得て、彼が待つ長野県へと推参。満を持して再開した作品への思いはもちろん、10年にわたる空白期間の理由、マンガ家としての原点などを聞いた。また最後のページには、これまでの冒険を振り返るおさらいコーナーを用意。物語を忘れかけていた人や、初めて「マテリアル・パズル」に触れるという人にとって、新章を楽しむための手引きとなれば幸いだ。

取材・文 / 鈴木俊介

「マテリアル・パズル」とは?

1つの体に3つの魂を持つ魔法使い、ティトォ・アクア・プリセラ。ドーマローラという国が消滅した際、“星のたまご”と呼ばれる大地の力を借りて生き延びた彼らは、死ぬたびに魂が入れ替わる不老不死の体を手に入れる。それから100年後、ティトォたちが持つ星のたまごを狙って、“女神”グリ・ムリ・アが動き出した。果たして、星の運命をかけた戦いの結末は──。

ティトォ。癒しと強化の魔法“ホワイトホワイトフレア”の使い手。記憶力が高い。
アクア。アメを魔力で変換した魔法“スパイシードロップ”であちこちぶち壊す。
プリセラ。魔法は使えないが身体能力は最強。お腹に赤ちゃんがいる妊婦さん。
ミカゼ。辺境の村に住んでいた体力自慢の少年。ティトォと出会い、彼らに協力する。
グリ・ムリ・ア。女神を名乗るおばさん。別の星から来た科学者で、星の存在変換を企む。
クゥ。禁断五大魔“マザー”の持ち主。
ブライクブロイド。禁断五大魔“真紅虎龍牙”の持ち主。
舞響大天。禁断五大魔“ヘルキルデスベル”の持ち主。その正体はアクアの妹・アロア。
アダラパタ。三十指の1人だが、事実上全権を握る黒幕。魔法“極楽連鞭”で魂を操る。

土塚理弘インタビュー

この作品は自分でやらなきゃ

──「マテリアル・パズル」本編としては約10年ぶり、外伝である「マテリアル・パズル ゼロクロイツ」から数えても7年ぶりと、積年のファンにとっては待ちに待った新刊がついに発売となりました。まずは再開させた今のご心境を伺えますか?

「マテリアル・パズル ~神無き世界の魔法使い~」第1話扉ページ

一番やりたいことができる作品なので楽しいですね。ギャグもあってバトルもあって。僕、ほかの作品ではいろいろセーブしている部分もあるんですよ。アクションを控えめにしようとか、ギャグやコメディはやめようとか。「マテリアル・パズル」はそういう制限を設けない、自分の好きなことを全部詰め込める世界なんです。だから、これをやらないと自分の全部が出せないような感覚ですね。ティトォたちを描くのは久しぶりでしたけど、戸惑いとかは特になかったです。

──続きが始まるまで、これだけ間が空いてしまった理由はなんだったのでしょう。

一番は手が空かなかったからです。「ゼロクロイツ」が終わったらと考えていた時期もあったのですが、そのタイミングで他社から仕事の依頼が入ったりして。「マテリアル・パズル」は物語の筋を決めてある分、僕のほかのマンガと比べて構成にかかる時間が多いですし、1話あたりのページ数も単純に多いので、理想を言うとこれ1本だけをやっていたいくらいなんです。だから、例えば連載を3本抱えていて、何かもう1本始めることになっても、ギャグとかコメディとかならなんとかできるんですが、そこに「マテリアル・パズル」は入れることができなくて……。

──4本同時に連載ができるのはすごいと思います。では続きを描こうという気持ちはずっとあったけれど、なかなか集中してやる時間が取れなかった。

そうです。ほかの作品のファンレターなどでも、「マテパ待ってます!」という声はいただいていました。ただ自分の中では「やるけど、まだいいよね」「というか今できないよね」という気持ちで。でも講談社さんでやらせてもらうというのは、けっこう前から決まってたんです。「まんなかのりっくん」の立ち上げと同時進行だったんですけど、週刊連載の「りっくん」と同時に連載はできないから、これもタイミングを計っていた感じですね。

──逆に、間が空いてよかったこともありますか?

確かに、あの頃そのまま続けていたら、もっとせわしない感じでやることになっていたかもしれません。手が痛くなってきていたりとか、画材が足らずにバタバタしたりとか、引っ越ししたかったりとか、そういう意味でひと息入れたい気持ちもあって。今はアシスタントさんも揃ってるし、環境的にも落ち着いていて、かといってもっと間が開いちゃったら、それこそ忘れ去られちゃうと思うので、結果的に今始められてよかったと思っています。

「マテリアル・パズル」電書完全版1巻。加筆修正を施し再編集され、2018年にリリースされた。

──以前は月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)で発表されていた作品ですから、講談社から電書完全版が出る、続きも始まると聞いたときは驚きました。

スクエニさんからも「やってほしい」とは言っていただいていたんですけど、ガンガンの読者も入れ替わっているでしょうし、過去の読者がまた見てくれるかどうかわからないというのがあって。年齢層が違うガンガンの別雑誌という手もあったんですが、スクエニさんではまったく新しい連載の企画も進めていたので、それをやればいいかなと考えました。

──そちらの新連載も気になります。連載時期とかはもう決まっているんですか?

いえ、これもまた手が空かないと動けない状態でして(笑)。連載用に3話までのネームはできているんですけど、ギャグとかコメディじゃなく、ページ数もがっつりある作品になる予定なので、今はちょっと難しい。もし何かを新しく始めるとしたら、ショートコメディしかできないかな。

「マテリアル・パズル ゼロクロイツ」電書完全版1巻。「マテリアル・パズル」本編で伝説やおとぎ話として語られる、“女神と大魔王の戦い”が生まれた時代を描く。

──ではちょっと先のお楽しみですね。ちなみに「ゼロクロイツ」では作画を、今「ぐらんぶる」を描かれている吉岡公威さんにお願いされていましたよね。手が空かない場合に、本編の続きも誰かに作画を頼もうとは思わなかったんですか?

この作品は自分でやらなきゃという気持ちがありました。ほかの人に作画をやってもらうとき、一番ニュアンスを伝えるのが難しいのはギャグなんです。

──テンポや雰囲気が微妙に変わってしまうということでしょうか。

ええ。そもそも僕が原作を担当する場合、作画の人が苦手だろうなということはなるべくやめて、「この方はアクションがいいからそれを活かした話にしよう」とか、「自分じゃこれは絶対できないな」というものをお願いするんです。逆にギャグとかコメディとか、「自分でやったほうが映えそうだな」っていうものは自分でやりたい。

──「マテリアル・パズル」本編は後者だと。

そうですね。「ゼロクロイツ」はもともと「マテリアル・パズル」本編で見せる予定だったエピソードを、独立した物語にしてしっかり作ったものなんですけど、ロボットとかをカッコよく描ける吉岡先生にお願いしたからこそああいう話になった。自分でやってもあんなふうには描けないし、まるで違う話になったと思います。いや、そもそもやってないかな(笑)。