ちゃおっ娘のみんな集まれー!「ちゃおコミ」リニューアル記念“ちゃおから生まれた”つづ井と止まらぬ思い出トーク

小学館のちゃお作品を無料で読めるWebサイト・ちゃおコミが、今年8月にオープンした(参照:「ミルモ」に「めちゃモテ委員長」も、ちゃお作品が無料で読めるWebサイト始動)。ちゃおコミでは「こっちむいて!みい子」「ミルモでポン!」「きらりん☆レボリューション」などの懐かしの作品から、新作のオリジナル作品までを無料で楽しむことができる。

コミックナタリーではこのちゃおコミのサイトのリニューアルに合わせ、生粋のちゃおっ娘だったというつづ井にインタビューを依頼。「エンジェル・ハント」「ぷくぷく天然かいらんばん」「こっちむいて!みい子」など、思い出の作品を語ってもらった……のだが、懐かしさに浸るあまり現場は大盛り上がり。予定していた取材の時間を大幅にオーバーするほど、花が咲きに咲きまくったちゃおトークの模様をお届けする。なお最後には、つづ井による描き下ろしマンガと、つづ井が敬愛するおおばやしみゆきの描き下ろしイラストもあるのでお見逃しなく。

取材・文 / 熊瀬哲子

ちゃおコミ

ちゃおコミビジュアル

おのえりこ「こっちむいて!みい子」、篠塚ひろむ「ミルモでポン!」、中原杏「きらりん☆レボリューション」、にしむらともこ「極上!!めちゃモテ委員長」、八神千歳「オレ様キングダム」、やぶうち優「ドーリィ♪カノン」など、懐かしのちゃお作品70タイトル以上が無料で読めるWebサイト。またオリジナルの新作も取り揃えている。

12月には、より快適に作品を楽しめるよう仕様をちゃおランドとともにリニューアル。12月28日からは中原杏特集で「きらりん☆レボリューション」の無料話が増量されるほか、中原とアニメで月島きらりを演じた久住小春の対談が掲載される。2022年2月3日からはおのえりこ特集、3月3日からは篠塚ひろむ特集を展開。さらに今後、ジュニア文庫のコミカライズだけでなく小説自体も配信される予定だ。

生粋のちゃおっ娘!つづ井インタビュー

ちゃおに情操教育を受けた

──今回つづ井さんにオファーをさせていただいたのは、つづ井さんが自身のTwitterで何度かちゃおに対する愛を投稿されているのを拝見したからだったのですが、聞いたところによると今回のオファーも喜んで引き受けてくださったとか。

本当にちゃおが好きなので、お話を聞いたときに「こんなことあるんだ!」と思って! だいぶ前のめりで受けさせていただきました。

──自身のことを「ちゃおから生まれたちゃお太郎」とツイートされていたこともありましたもんね。

そうですね。本当にちゃおを見て育ったので、根本にちゃおがあるというか、私のすべての起源みたいな存在なんです。今でも新しく好きになった作品で、当時ちゃおで読んでいたマンガっぽさを感じることがあると「おおっ」となることもあって。そういう意味で「ちゃおから生まれたちゃお太郎」なんて言ってたんですけど、本当にちゃおに情操教育を受けたという感じです。

──私もアラサーで、つづ井さんと同世代のちゃおっ娘だったので、今日はお話できるのをとても楽しみにしていました。また今日は私たちが読んでいた当時、ちゃおの編集部に在籍していた小学館の方に来てもらいました。

ええっ! すごい!

(元ちゃお編集者) 今は宣伝を担当しているんですが、つづ井さんがお読みいただいていた前後ですね、8年ほどちゃおの編集者をやっていましたので、今日はお話をお伺いできるのをうれしく思っております。

──なので今日はみんなでわいわいちゃおトークで盛り上がれればと思います。

同窓会みたい(笑)。楽しくなってきました。

──つづ井さんとちゃおとの出会いはいつ頃だったか、記憶にありますか?

篠塚ひろむ「ミルモでポン!」第1話より。主人公の楓と恋の妖精・ミルモの出会いのシーン。

はっきりとは覚えていないんですけど、たぶん同級生の子が読んでたのを読ませてもらって、それがちゃおで、マンガ雑誌というものとの出会いだったと思います。「Dr.リンにきいてみて!」がギリギリ連載していた頃かな……。「ミルモでポン!」の連載が真っ只中っていう感じだったかなと思います。さっきちゃおコミさんで「ミルモ」の1話と2話を読んでいたんですけど、もう第1話の1コマ目を見た瞬間に「わ! 私、これ当時めっちゃ描いてた!」と思って。篠塚ひろむ先生の目の描き方がすごい好きで模写してたのを思い出しました。

──わかります、私も真似してました。

あとは今、手元に「エンジェル・ハント」のコミックスが全巻あるんですけど、いやあ、今見てもめちゃくちゃ絵がかわいいですよね。服装とかもすごいかわいくって。

──制服もかわいいですよね。リボンが後ろに付いていて、ひらひらってなっているところとか。憧れました。

おおばやしみゆき「エンジェル・ハント」より。物語は見習い天使の天音と真由の少女2人と、彼女らの前に現れた天使の浜崎、姫野、天堂の3人を中心に展開される。

わかります、めちゃくちゃかわいい! 「エンジェル・ハント」は特に設定が……私みたいなもんが好きな設定というか。「天使」とか「悪魔」とか「堕天」とか、そういう素養を植え付けられた作品。そういう文化に初めて触れた作品だったと思います。

──今回、つづ井さんには事前に「ちゃお作品で特に語りたいものはなんですか?」とお伺いしていたんですが、そこでも「エンジェル・ハント」を挙げられていました。その理由を教えてもらえますか?

当時読んでた印象として、ちゃおの中でも意外なぐらいダークファンタジー要素があったというか、設定がシリアスで重かったり、心が痛くなるような展開だったり、今大人になって読んでもちょっとウッ……ってなるような内容だったりして、たぶん当時は読むのがつらかったと思うんですよ。なのでよくも悪くも強く印象に残っていて。だけど天音と真由、2人とも好きだし、この子たちの行く末を見届けたいし、何よりめちゃくちゃ面白いし。そうやって心を痛めながらもマンガを読んだ、娯楽作品を楽しんだっていう経験が、今改めて思い返すとですけど、たぶん「エンジェル・ハント」が私にとって初めてだったのかなって思います。私、当時から天音のお父さんが好きで。

──ああ、じゃあちょっとね、中盤につらい展開がありましたよね。

「エンジェル・ハント」3巻より。“親友”の真由が浜崎に好意を寄せていることをわかっていながらも、天音の気持ちは揺らぎ始める。

つらかった覚えがあります。あとすごく覚えてるセリフがあって。天音と真由は最初こそ衝突するけど、だんだん仲良くなって、親友になっていきますよね。でも途中ですれ違いが起こり始めて。そのときに、真由が天音に「ねえ、私たちって親友だよね」って言って。そしたら天音がモノローグで「『親友』って言葉で確認したら もうちがうものなのかもしれない……」って考えるシーンがあって、ここをすごい覚えてたんですよ。当時読んでたときも「なんで違うの? 何が違うの?」って思ってて。しかもこの言葉の意味について、「なんで違うのか」「なんで言葉で確認したらもう親友じゃないのか」っていうことを、その後くどくど説明するわけでもなく、掘り下げて描いていないんですよね。天音がそうやって違和感を覚えたっていうところだけ描いて終わっていて。

──確かに。

「なんで? 何が違うんだろう?」って、当時読んでたときから引っかかったまま大人になって、ずっとそれを覚えてたんですよね。「エンジェル・ハント」といえばあのセリフって。それで大きくなってから改めて全巻読み返してみても、「なんだこのセリフ!」って。「私は当時からちゃおでこんな深い話を読んでたんだ!」って思いました。

──今読んでもちょっと考え込んじゃうシーンですよね。

そう。それを必要最低限のセリフとモノローグで、たった1ページで描かれていて。それが当時小学生で読んでた私の心に引っかかって、大人になるまでずっと跡を残していて。今でもたまに振り返って考えるような言葉になってるっていうのがすごいなって思いました。

(元ちゃお編集者) おおばやし(みゆき)先生はすごく勉強熱心な方で、マンガや小説に限らず、いろいろなものをたくさん読んでいらっしゃって。そういうところが作品に表れているのかなと思います。今のお話をおおばやし先生にお伝えしたいですね。この記事もきっと読んでくださると思いますが。

ええっ、いやいやいや……私は「エンジェル・ハント」がすごいっていう話を誰かとしたくて。ここで話ができて、ほんとにこんな幸せなことないです。今もう汗だくなんですけど。早口で汗だくになってる。

──(笑)。でも本当にあのシーンは印象的でしたね。

だから小学生のときにものすごいのを食らって、それが年々効いてくるみたいな。「エンジェル・ハント」って絵柄のかわいさと画面の華やかさでするする読めちゃうんですけど、けっこう描かれていることはシリアスで真に迫ってるというか、今読み返してもメッセージ性が強くて。最後も「みんなで手をつないでハッピーエンド! 楽しい日々は続くね!」……ではない終わり方で。そういう作品に触れたのがたぶんこの作品が初めてだったんじゃないかなって思います。なんて言うんだろう、難しい終わり方じゃないですか、ラストが。

「エンジェル・ハント」最終話のラストシーン。

──そうですよね。私は確か「エンジェル・ハント」の連載の途中くらいで、もう少しお姉さん向けの雑誌に移っていったので、結末を大人になってから読んだんです。なので「えっ? こんな終わり方だったんだ」っていうことにかなりびっくりして。大人になってもけっこうな衝撃だったので、リアルタイムで読んでいたつづ井さんにはかなりインパクトがあったのではないかと思いました。

いやあ、本当に……。ラストの見開きが「どんなに遠く離れても、もう二度と会えなくても、あの日々はきっと消えないから」で終わるんだ!って。ちゃおの作品がこのモノローグで終わるんだ!?っていう。でも当時は「え!? ちゃおでこんな話を描くの!?」みたいなことまで、実際は思わなかったと思うんですよ。今大人になって読んで改めて、ちゃおでこの終わりするのってすごい決断だったんじゃないかなって、勝手に思って……すみません、ちょっと泣いちゃった。

(元ちゃお編集者) 大丈夫ですか?(笑)

本当にめちゃくちゃいい話……。

姉の本に鼻血を足らす、小学生のつづ井さんのドタバタエピソード

(元ちゃお編集者) 確かにちゃおで大団円以外で終わるっていうのは、なかなか勇気のいることで。ただ今もこうやってつづ井さんが覚えていらっしゃるということで、当時の読者にも届くメッセージにはなっていたと思うんですけど、それでも当時はやっぱりちょっと大人向けかなと感じるところもありました。ちなみに当時はちゃおとSho-Comiの間をつなぐChuChuという雑誌があったんですが、つづ井さんは読まれてました?

懐かしい! たぶん読んでたと思います。Sho-Comiは私には大人すぎて。姉がSho-Comiのコミックスを買って、新條まゆ先生とか読んでたなあって。それをこっそり盗み見してたくらいの世代なので、ChuChuも絶対読んでたと思います。

──私たちが小・中学生だった頃のSho-Comiは特に過激な描写が多かった時期かと思うので、当時の我々からするとSho-Comiはちょっとエッチな雑誌だなっていう印象で、読むにしてもこっそり……っていう感じでしたよね。

Sho-Comi2004年11号

私は少し年上の姉がいて、そのとき高校生で、当時の私からしたらだいぶお姉さんだったんですけど、その姉がSho-Comiを読んでたんですよね。それで、ある日姉の部屋にこっそり入って、新條まゆ先生のマンガだったかな。それを3冊ぐらいバッ!と、姉が部活行ってる間に読んで、「なんてものを読んでるんだ、お姉ちゃん!」と思ったんですよ。

──だいぶ刺激的でしたよね。

で、私当時から鼻炎がひどくて。鼻をこすりすぎてめちゃくちゃ鼻血が出やすかったんです。

──はい。

そのときも姉のSho-Comiのマンガを読んで「なんてものを読んでるんだ!」と思いながら鼻をこすってたら鼻血が出ちゃって、鼻血がそのコミックスに落ちちゃったんですよ。それでめちゃくちゃ焦って。「こんなエッチな本に鼻血がついてたら、私がエッチな本を読んだから興奮して鼻血出したんだと思われる!」と。こっそり読んでたのがバレるのも、本を汚したのを怒られるのも、私がエッチな本を読んで鼻血出したと思われるのも全部嫌だなと思って。

(元ちゃお編集者) それ、バレちゃったんですか?

いや。なので私、本を水で洗ったんですよ。そしたら本がビシャビシャになるじゃないですか。でも本は乾くから大丈夫と思ってドライヤーで乾かしたら今度はゴワゴワになっちゃって。全然取り返しつかなくなっちゃって。

──もうめちゃくちゃだ。

そのあと、姉には確か「お姉ちゃんトイレに置きっぱなしにしてたよ。それがなんか風で便器に落ちちゃったかも」みたいなこと言って、「汚いから捨てたほうがいいよ」「触らないほうがいいよ」って適当な嘘をついて。臨機応変な対応力でごまかした覚えがあります。

──当時のできうる限りの対応ですね(笑)。大人だったらもう少しうまく隠蔽できるだろうけども。

そうそう(笑)。こっそり新しいの買えばいいし。でももうそのときは「洗うしかない」ってなっちゃったんですよね。