アニメスタジオクロニクル Vol.6 ボンズ 南雅彦

アニメスタジオクロニクル No.6 [バックナンバー]

ボンズ 南雅彦(代表取締役)

オリジナル作品を作らないと会社は死ぬ

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オリジナル作品を作らないと会社は死ぬ

クリエイター主導のオリジナル作品を志向していたボンズだったが、原作ものの『鋼の錬金術師』によって会社として軌道に乗り始める。しかし南氏は今でもオリジナル作品へのこだわりを隠さない。

「オリジナル作品を作らないと会社は死ぬと思っています。原作作品を作るだけでも、アニメの制作会社としては大きくなっていけるとは思っています。でもボンズという制作会社としては、オリジナルをやらないと、例えばスタッフとともに作品を生み出す想像力や発想力。アニメーションという映像表現を扱い、どのような作品を生み出すか。そういう部分を持っていなければいけないんじゃないでしょうか。

ボンズの社内に展示してあるイラストボード。歴代のキャラクターが描かれている。

ボンズの社内に展示してあるイラストボード。歴代のキャラクターが描かれている。

もちろん原作作品を制作するうえでも、原作者の方がその作品で表現しているドラマ、マンガとしての表現を理解し、そのうえでアニメーションとしての表現で作っていくか考えることになります。その経験は原作を理解し、どのようなアニメーションの表現をすべきか、スタッフとのイメージの共有など制作するうえでの大きな力を持てると考えています。逆に原作作品を制作することにより、はっきりとした作品の完成形をイメージできます。オリジナルは完成作品がイメージしづらく、ゼロから考えなければいけないので、経験が浅いととても難しい。だからその両方を制作していくことはボンズの設立時から考えていました」

そうしたポリシーの元、同社は原作ものを作りつつ、個性的なオリジナル作品を世に送り出し続ける。先述の「交響詩篇エウレカセブン」は人気シリーズとなり、その後も「スペース☆ダンディ」「ひそねとまそたん」「キャロル&チューズデイ」などがアニメファンから称賛を浴びた。

南雅彦氏

南雅彦氏

「オリジナルは、メインスタッフが描いていて楽しい作品になりますね。例えば『なんで「スペース☆ダンディ」を作ったの?』とスタッフからも聞かれるけど、でも『作ってて面白かったでしょ?』と聞くとみんな『面白かったです!』って言ってくれるし。まあ、『ダンディ』は自分と渡辺(信一郎)監督が作りたくてしょうがなかったのもあるけど(笑)。作るスタッフも観てくれる人たちも面白がってもらえる作品を作りたかったんですね。ちょっと窮屈な時代だったのかも。アニメーターが動かし放題だったし、総作監を立てずにいろんなクリエイターが面白がっていろんな『ダンディ』を表現してくれました。

「スペース☆ダンディ」キービジュアル
(c)2014 BONES/Project SPACE DANDY

「スペース☆ダンディ」キービジュアル (c)2014 BONES/Project SPACE DANDY

結局ボンズは、手描きのアニメーションでどれだけ自由に表現できるか、どれだけ広がりがあるものを作れるかを求めていると思います。CGでも実写でもできないことをいかに生み出すことができるか。それがアニメーションであり、オリジナル作品を企画するうえでの考え方のベースになっています。……でも、オリジナル作品は多くの人に受け入れられるのがなかなか難しいですね。日本が一番難しいかな。海外は作品によって国によって人気になる作品が違っていたり面白い観られ方もしていますね。

25周年記念作品「メタリックルージュ」、キーワードは『バディもの』と『多様性』

アニメ業界に関わり始めてから40年弱、ボンズ設立から25年が経っても南氏は気概に溢れている。インタビューの最後に、2024年1月から放送が予定されているボンズ設立25周年記念作品「メタリックルージュ」の話を向けると、その成り立ちと魅力をまくし立てるように語ってくれた。

「『メタリックルージュ』で原作・総監修の出渕裕さんはもちろんデザイナーとしてのトッププレイヤーですし、尊敬する業界の先輩です。サンライズ時代からデザイナーとして大変お世話になっていましたが、ちょっとうるさいというか(笑)、自分が制作している作品に対し演出的な部分での批評をするんです。それで『なら出渕さんが監督やってみてよ』と半分冗談で話していたのですが、いろいろと企画とか作品の話とかをしている中で『ラーゼフォン』を監督してもらうことになりました(笑)。その後も定期的に会ったりメカデザインをやってもらったりしている中で『また何か新しい作品をやりたいね』という話をしていたけど、なかなかその機会がなかったですね。

「メタリックルージュ」キービジュアル
(c)BONES・出渕裕/Project Rouge

「メタリックルージュ」キービジュアル (c)BONES・出渕裕/Project Rouge

出渕さんの長期のプロジェクトが動いていましたし、ボンズも制作ラインを作るタイミングが難しかったこともあります。何より出渕さんの思い描く作品を実現するには今までのTVアニメの制作費では充分ではないことがネックでした。でも近年、国内、海外ともに動画配信サイトが製作への参入によって制作費が全体的に上がり、また2D、3Dともにデジタル技術のアニメーションでの表現が広がってきた。あと海外ではSF作品も人気があることもあり、ようやく出渕さんと新しい作品にチャレンジできる状況になりました。

それで、まず作品を作るうえでさまざまなチャレンジが可能なプラットフォームとしての世界観を作り上げるところからスタートしました。『カウボーイビバップ』のときにも『賞金稼ぎもの作品』というところから始まって、それを太陽系を舞台でやろう、じゃあ太陽系はどうやってテラフォーミングされているか……と、言わば世界観の横軸を作っていったのですが、『メタリックルージュ』ではさらに歴史という縦軸も作りました」

TVアニメ「メタリックルージュ」は人造人間の少女ルジュ・レッドスターが、バディのナオミとともに“政府に敵対する9人の人造人間の殺害”という任務に挑むバトルアクションだ。

「出渕さんがこの世界観を舞台に、最初に映像化するうえでのキーワードは『バディもの』と『多様性』でした。『メタリックルージュ』はルジュとナオミの2人の主人公であり、ルジュが人造人間であるということにフォーカスした作品になっています。ただ事前に作り上げた世界観はもっと壮大で、人造人間が生まれた経緯や、過去に起きた太陽系内での大規模な宇宙戦争とか、今回の作品世界の後の話も考えています。1つの世界観の中でいろんなジャンルの作品が作れるようになっています。

南雅彦氏

南雅彦氏

『カウボーイビバップ』でも同じように新しい作品を作れるような世界観を作っていましたが25年も経ったのに新しい作品ができていません。『メタリックルージュ』は『©BONES』さえ入れてくれれば世界観を好きに使っていいので、まずは今回の作品を観てもらって、視聴者がこの業界に入り、クリエイター、プロデューサーとしてこの作品の世界を自由に遊んでもらえるものになってくれるとうれしいですね」

南雅彦(ミナミマサヒコ)

1961年8月24日生まれ、三重県出身。株式会社ボンズ代表取締役。1984年に日本サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)に入社。「疾風!アイアンリーガー」「機動武闘伝Gガンダム」「天空のエスカフローネ」「カウボーイビバップ」といった作品をプロデュースする。1998年にサンライズから独立し、逢坂浩司、川元利浩とともにボンズを設立し、代表取締役に就任した。

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読者の反応

Geth @PurpleGeth

Some interesting points (not necessarily new knowledge) from this Masahiko Minami itw:
-Studio C was formed to accommodate FMA (2003)
-Eureka 7 was originally planned as a 2 cour series but early in development went to 4
-"If we don't make original anime, the company will die" https://t.co/EqciK6dOrV

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