ボンズ、J.C.STAFF、CWF 三者三様のスタジオから見たアニメの歴史と現在

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ボンズ代表取締役の南雅彦氏、J.C.STAFF執行役員制作本部長の松倉友二氏、コミックス・ウェーブ・フィルム代表取締役会長の川口典孝氏によるトークショーが、「第3回新潟国際アニメーション映画祭」の一環として、本日3月16日に新潟・日報ホールで開催された。

左から司会の鳩岡桃子氏、J.C.STAFF執行役員制作本部長の松倉友二氏、ボンズ代表取締役の南雅彦氏、コミックス・ウェーブ・フィルム代表取締役会長の川口典孝氏。

左から司会の鳩岡桃子氏、J.C.STAFF執行役員制作本部長の松倉友二氏、ボンズ代表取締役の南雅彦氏、コミックス・ウェーブ・フィルム代表取締役会長の川口典孝氏。

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今回の映画祭での上映作品を手がけたアニメスタジオ3社の代表が揃い、歩みを振り返るこのトークショー。予定では南氏と松倉氏、プロダクションI.G代表取締役会長の石川光久氏の三者で行われる予定だったが、石川氏が欠席となり、観客として会場を訪れていた川口氏が急遽登壇する運びとなった。司会は月刊ニュータイプ(KADOKAWA)副編集長の鳩岡桃子氏が務め、約1時間半にわたりフランクな雰囲気でトークが展開された。

まずは世代も出自も異なる3人のキャリアをそれぞれ振り返っていく。数年ゲーム業界で働いたのちJ.C.STAFFへ入社し、30年以上となる松倉氏、富野由悠季作品への憧れから当時の日本サンライズへ入社し、その後1998年にボンズを立ち上げた南氏、そして伊藤忠商事からの出向でコミックス・ウェーブに参加したところから、新海誠との出会いをきっかけにアニメ業界に足を踏み入れた川口氏。川口氏が業界の先輩である2人に時折質問を投げかける形で、南氏や松倉氏の過ごしてきた1980年代から1990年代の、アニメの激動の時代をたどっていった。

南氏は「今は配信や海外展開など、映像自体がビジネスになってますよね。自分が入ったときは映像がビジネスになっていたのは劇場映画くらいで、TVシリーズはプラモやおもちゃを売るためのものだった。おもちゃが売れないから打ち切りになることもあった」と振り返る。その後ビデオレンタルの発展とともにOVAブームが到来。J.C.STAFFもOVA専門のスタジオとして設立された。松倉氏は「それまでTVアニメはコマーシャルメディアで、すごい作画をする人もいたけど、あくまで一過性のものだった。俺たちはこういう企画をやりたい、おもちゃに縛られない映像表現がしたいというムーブが起こった」とOVAブームへの流れを説明。「その時代をがらっと変えちゃうのが南さん。OVAでTVシリーズよりがんばっているつもりでいたら、『カウボーイビバップ』が出てきた」と、南氏がプロデューサーを務めた「カウボーイビバップ」のインパクトを語った。そして「新世紀エヴァンゲリオン」のヒットによりTVアニメのパッケージ販売が広がり、松倉氏は「売ることに対して問題ないクオリティをテレビで作らなきゃいけない時代に突入した」と回顧した。

2人の話に感心しながら、「自分たちは皆さんが整えた道を歩かせてもらった」と語る川口氏。南氏と川口氏の出会いは新海誠監督作「ほしのこえ」で、神戸のアニメーションイベントに参加したときだという。「アニメ業界に1人も知り合いがいない状態で、そのとき初めてアニメ会社の社長さんに会った」という川口氏。南氏は「新海誠という名前は業界内では話題になっていて、プロデューサーの川口くんが何をしてるんだろう?というのに興味がありました。我々とは全然出自が違うから」と振り返る。当時はテレビ局やメーカーから門前払いを喰らい、自ら配給やDVD事業を始めた川口氏。「“風下に立ったら終わり”だと思っていました。テレビ局の風下、出版社の風下に立ったら終わると。対等でいられるように、僕が振る舞わなきゃいけないと思っていました」と語ると、南氏と松倉氏は「すごいねえ」と感心したように顔を見合わせる。川口氏は「それができたのも、先輩方が道を作ってくれたからだと、ここ10年くらいで理解しました」と再び先達への感謝を口にし、「だから今日もこうしてお金を払って皆さんの話を聞きに来たんですよ。隣で貴重な話が聞けてうれしいです」と笑った。

昨今では海外配信も当たり前のものとなったが、アニメを作るうえで変化はあったか?と問われると、松倉氏は「今は結局、国内向けに作りつつ、海外もちょっと意識しようか、ぐらいでやるのがいいんじゃないかと。現場は意外と変わらないかも」と回答。川口氏は「やはり海外の方も日本でヒットしたものが観たいので、自信を持って日本の人たちが喜ぶものを作るのが大事だと思います」と述べる。規制が厳しい国もあるが、「気にして作ったところで結局通らなかったりする」と、昨今はあまり気にしなくなっているようだ。南氏は「アニメーションの制作自体はあんまり変わってないんだけど、企画を通すうえでの選択肢が増えたとは思います。いろんなことができるようになってきたのは幸せかな」とポジティブな変化を述べた。

南雅彦氏

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なおこのトークショーに続いて、同会場ではフランス発のボンズのドキュメンタリー「BONES 25: DREAMING FORWARD」が上映された。上映前に再び登壇した南氏は、「制作会社は裏方で、一番は作品を観てもらいたい。自分たちでこういうものを作ろうとは思わなかったんですが、今回はクランチロールさんが作ってくださるということで、いい機会ということで作りました」と制作経緯を伝え、「インタビューはうちの会社の作品に携わってくれたクリエイターの方、テレビ局の方、メーカーの方、いろんな人のインタビューが入っています。面白くできあがっているので、楽しんでいただけたらうれしいです」と挨拶した。

「第3回新潟国際アニメーション映画祭」は3月20日まで新潟市内で開催中。長編アニメーション中心の映画祭で、国内外の長編作のコンペティションや、ゲストを招いた上映プログラムが展開される。

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貝さんさん @morikai3

【イベントレポート】ボンズ、J.C.STAFF、CWF 三者三様のスタジオから見たアニメの歴史と現在

>プロダクションI.G代表取締役会長の石川光久氏の三者で行われる予定だったが、石川氏が欠席となり、観客として会場を訪れていた川口氏が急遽登壇。

観客側だった川口氏。
https://t.co/6WkpEFBBHi

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