このツアーは、9月にリリースされた最新アルバム「少年少女」のレコ発ツアー。彼女が“再スタート盤”と位置付ける作品の世界観を体感しようと、会場にはさまざまな年齢のオーディエンスが大勢集まった。
定刻を5分ほど過ぎた頃、客電が暗転し、オープニングSEのTHE ROLLING STONES「悪魔を哀れむ歌」が鳴る中、バンドメンバーが登場。続いて、バックパックを背負った旅人姿の中村が踊るようにステージに現れると、観客の期待感を表すように大きな拍手が鳴り響いた。
この日のライブは、アルバム「少年少女」の鍵となる「人間失格」から開始。ミディアムテンポのこの曲を、彼女は歌詞の内容を会場に叩きつけるように熱唱する。
中村の歌声は楽曲ごとにさまざまな表情をみせ、「独白」では孤独を抱える女性の思いを、「家出少女」ではおびえながらも広い世界に足を踏み出す決意を持った少女の言葉を代弁する。そして歌いながらステップを踏んだり、大きな身振りをしたりする様子は、まるでそれぞれの歌の主人公を演じわけているかのよう。
また、観客を楽しませるエンターテイナーとしての一面も披露。初めのMCでは「ツアータイトルは『捜索願い』です。今夜なんばHatchに集まってくださったみなさんは、何を探し、何を見つけるのでしょうか」と期待感をあおる。そして「ここは、風の街」では右腕を振り上げ会場を熱狂の渦に巻き込み、「帰れる場所なんて、ない」では恋に夢中な主人公の気持ちを表すキュートな振り付けでオーディエンスを魅了した。
さらに、アルバムで表現した“少女”と“少年”の物語を具現化するかのように、ライブ前半は少女が主人公の歌を中心に演奏。後半は衣装をすっきりとしたロングパンツスタイルに変更し、少年の思いを歌うナンバーを次々と披露した。昔同級生だった、臆病でいじめられていた男子のことを思い出して作ったという「ともだちになりたい」、思春期の心をつづった「青春でした。」などが、ときに美しく、ときに鬼気迫る声で歌い上げられていく。
また、既発曲も惜しみなく披露し、以前からのファンを喜ばせる演出も忘れない。そして本編ラストの曲では、中村が振り絞るように歌う姿に、観客は息をのんで見入っていた。
本編とは打って変わり、アンコールは陽気な雰囲気でスタート。彼女のライブでアンコールを求める際の定番となっている「残業!」というかけ声があちこちからかかると、笑いながらステージに現れ「あんなに感動的なライブをしたのに“残業”しろとはどういうことかと」と口にする。しかしその顔はうれしそうで、観客に向かって「中村中流正しいアンコールの求め方」を指南するなど、リラックスした顔をのぞかせた。
そして「“サービス残業”ありがとうございます!」と大きな声で宣言すると、やわらかいピアノの音と中村の透明な歌声が印象的なバラード「初恋」などを演奏し、この日のライブは幕を閉じた。
「捜索願い」ツアーはこのあと3公演を実施。本日12月3日に愛知・名古屋DIAMOND HALL、12月25日に神奈川・よこすか芸術劇場を回り、12月30日の東京・東京国際フォーラム ホールCでファイナルを迎える。彼女が紡ぐ物語に興味のある人は、ぜひ足を運んでみよう。
中村中 Concert Tour 2010「捜索願い」
2010年12月3日(金) 愛知県 名古屋DIAMOND HALL
OPEN 18:30 / START 19:00
2010年12月25日(土) 神奈川県 よこすか芸術劇場
OPEN 17:00 / START 17:30
2010年12月30日(木) 東京都 東京国際フォーラム ホールC
OPEN 17:00 / START 17:30
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- 中村 中「中屋」
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音楽ナタリー @natalie_mu
中村中全国ツアー初日で2時間強の壮大なストーリー紡ぐ http://natalie.mu/music/news/41521