Pick Up!
The Sunnys 台北の夜
シティポップとロックの掛け合わせで香る異国感
文 / ナカニシキュウ
「台北の夜」は、“シティロック”を標榜する4人組バンド・The Sunnysが2020年にリリースしたディスコポップナンバー。The Sunnysは自称の通りシティポップとギターロックの要素がナチュラルブレンドされたような音楽性を備えるバンドで、本楽曲に限って言えば、ギターロックよりもシティポップの色合いがかなり強めになっている。
イントロでは、抑制の効いた四つ打ちドラムとグルーヴィなスラップベース、コードカッティングと単音フレーズに分かれたギターが混然となって生み出すディスコビートに、ぶっきらぼうなモノフォニックシンセのリードフレーズが重なる。全体に施されたローファイなサウンドプロダクションとも相まって、リスナーは一気に独特のレトロなムードに飲み込まれるが、なぜか懐古的には響かない。
続いて飛び込んでくるボーカルは、朴訥とした穏やかで耳馴染みのいい声質でありながらも、どこか憂いを感じさせる響き。その特性が湿り気の強いバンドの音と非常によくマッチしており、楽曲をより際立たせている。左右のチャンネルの2本のギターがいわゆる伝統的なリードギターとサイドギターの役割分担を徹底しているところも非常に味わい深いポイントだ。また、A、B、サビに相当するセクションすべてが和声的にサブドミナント始まりになっており、これによってシンプルなハーモニー構造ながらもほどよい浮遊感と緊張感を創出し、“異国感”の演出にひと役買っている点も見逃せない。
いわゆるネオシティポップ愛好家にはもちろんだが、メランコリックなギターバンドを愛聴している層にもぜひチェックしてもらいたい1曲だ。
[Pick Up!]The Sunnys 「台北の夜」
- The Sunnys「台北の夜」
- 2020年3月4日(水)配信開始 / 都市レコーズ
- 購入・再生はこちら
The Sunnys(ザサニーズ)
シティポップの要素を取り入れたバンドサウンドを“シティロック”として鳴らす4人組のロックバンド。2021年より現体制で活動している。2024年8月に最新シングル「見てみたい」を配信リリース。