WANIMA・KENTAインタビュー|幅広い音楽性提示した攻めのEP完成

WANIMAの新作EP「Sorry Not Sorry」が12月18日にリリースされた。

昨年11月に新事務所・Crisp Junkを立ち上げたWANIMA。今年に入ってからアコースティックミニアルバム「1Time」、シングル「Rolling Days」、会場限定販売のEP「Bear Book」、そして「Sorry Not Sorry」と、怒涛の勢いで作品を世に送り出し、歩みを止めることなく前に進んでいる。そんな精力的な彼らの新作EPには、ヘビーなサウンドのダンスナンバー「爛々ラプソディ」、言葉遊びのようなラップ調の歌唱が光る「Do Gang」、スケール感のある「DISCOVER」などバラエティ豊かな全5曲が収録され、WANIMAの攻めの姿勢が感じ取れる。なお、「爛々ラプソディ」はAmazon Prime Videoで配信されている実写ドラマ「【推しの子】」の第6話主題歌、「Do Gang」はメンバーの地元である熊本のテレビ局・KKT熊本県民テレビ「くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」のテーマソング「Do Gang」として使用され、それぞれドラマや番組を盛り上げている。

今回音楽ナタリーではフロントマンのKENTA(Vo, B)にインタビューし、「Sorry Not Sorry」の制作エピソードを聞いた。

取材・文 / 酒匂里奈撮影 / 後藤倫人

変化を恐れずやっていこう

──少し前ですが、「Rolling Days」のミュージックビデオ撮影で髪をばっさり切られていましたね。ずいぶん印象変わりましたがお似合いです。

ありがとうございます!

──何か心境の変化があったんですか?

去年の11月から新チームになったし、「変化を恐れずやっていこう」という気持ちを率先して表すために切りました。トレードマークだった自分の髪型を変えるタイミングをずっと探していたので、「今や!!」と思って「Rolling Days」のMV撮影で思い切って。切るギリギリまで迷いはあったけど……。

──実際に切ってみてどうですか?

今思うと、「なんでロン毛やったんかな?」って。ロン毛のときの写真を見返しても「あれ……これ俺……?」って思う。今の短髪の自分がすごくしっくりきてます。

──そこまでの影響があるんですね。

あります。些細なことかもしれんけど、見える景色が変わるぐらいのことでした。人生に変化を付けたいときはぜひ思いっきり髪型や髪色を変えてみてください。

──そして、11月には2年半におよんだツアー「Catch Up TOUR -1Time 1Chance-」が幕を閉じました(参照:WANIMAの2年半におよぶツアーついに終幕へ、有明アリーナ熱狂の一夜「これからも旅を続けようぜ」)。

今回のツアーは、「ともに作り上げる、いろんな人たちを巻き込みながらやっていく」というのが大きなテーマでした。新しいチームでイチから作っていきながらも、今まで通ってきた道へのリスペクトを忘れずに愛と情熱を持って動きました。こんなに長いツアーでも、1カ所たりともセットリストを同じにせずに回れたのはよくやったなと思います。

WANIMA

WANIMA

ギター小僧たちが弾きたくなるリフ

──新作「Sorry Not Sorry」はこれまでのWANIMAにはないようなさまざまなサウンドの楽曲が収録されていて、挑戦的な“攻め”の1枚だなと感じました。タイトルは「謝らない、悪くない」というような意味合いの言葉ですね。

「ごめんねと思ってないよ」という、ちょっと皮肉っぽい感じです。ジャケットでも、半分に割れた僕の顔から“怒りのKENTA”が出てきていて「Sorry Not Sorry」を表現しています。時に自分が悪くなくても謝らないといけない場面がある。僕らのライブは、さまざまな気持ちを押し殺して生きてるみんなが一旦それを忘れて発散して、会場を出たら「やったるぞ!」という気持ちになれるものを目指しています。来年のホールツアーでは内に秘めた「Sorry Not Sorry」という思いをみんなと共有できたらなと。

WANIMA「Sorry Not Sorry」ジャケット

WANIMA「Sorry Not Sorry」ジャケット

──タイトル曲の「Sorry Not Sorry」は、まさにライブで盛り上がりそうなパワフルな楽曲ですね。この曲はどのように作っていったのですか?

カッコいいギターリフで決めたかった。WANIMAは歌から入る曲、サビ始まりの曲が多くて、同じになってしまっても面白くないなと思って。ギター小僧たちが弾きたくなるようなカッコいいリフで始めたいなという思いで作りました。

──この曲はEP制作のタイミングで作り始めたんでしょうか?

ストックの中にあったものです。新曲がバンバンできてくると、昔作った楽曲たちを忘れてしまうからそれなら今出そうと思いました。

──ちなみに、今は曲のストックはどれくらいあるんですか?

30曲くらい。そのとき作っていたアルバムのコンセプトに合わなくてリリースを見送ったり、アルバムの流れを考えて作ったからシングルで出すのはちょっと違うかなと思ったり。もうちょっとアレンジを加えんといかん曲もあったり。初期衝動をぶつけた曲やシングルとして発表できるように狙いにいった曲などさまざまです。過去に作ってストックした曲はリリースまでたどり着けないことが多い。ライブを軸に置いているから、ライブでやったときの手応えは大事だし、それによってリリースするかどうかの判断はかなりシビアになってきます。ただ出せばいいってもんじゃないし。

──シビアに判断されつつも、かなりハイペースで作品を発表されている印象ですけどね。昨年10月に20曲入りのアルバム「Catch Up」をリリースして、今年はアコースティックミニアルバム「1Time」、シングル「Rolling Days」、会場限定で販売されているEP「Bear Book」、そして「Sorry Not Sorry」を発表しています。その合間にMONGOL800とのスプリット音源「愛彌々2」もリリースしていますし。曲のアイデアはどんどんあふれてくるような感覚なんですか?

いやいや、あふれるなんてない。必死で捻り出してます。毎日ピンチやし、毎日ギリギリ。でもそうですね。今年だけでもかなり曲を作らせていただきました。

「Do Gang」では歌に専念したい

──EPの2曲目「Do Gang」は熊本のテレビ局・KKT熊本県民テレビ「くりぃむしちゅーの熊本どぎゃん!?」のテーマソングです。童謡の「あんたがたどこさ」のメロディや熊本にまつわるワードが取り入れられていますね。

歌詞は熊本をイメージしながら作っていきました。熊本にアーケード街があって、熊本に住んでいる方からしたら景色が浮かびやすい歌詞だと思います。「さしより街にいこう って並木に髪切りいこう 友達を探しに鶴屋 角マック」とか。熊本のローカルな言葉や熊本弁を取り入れてるので、熊本の方々はアガるんじゃないかなと。

──そう言えば少し前に日本テレビで放送された番組「県民ソング栄誉賞」で、熊本県民に愛されるアーティストの1位にWANIMAが輝いていました。

「ワンチャンフェス」(WANIMA主催の野外音楽フェスティバル「WANIMA presents 1CHANCE FESTIVAL」)も熊本でやってますし、自分たちの生まれ育った街やからうれしい。熊本は熱くて頑固なヤツが多いと思っていて、僕はそこが好きですね。

KENTA(Vo, B)

KENTA(Vo, B)

──「Do Gang」はKENTAさんならではのテンポのいいラップ調の歌唱も印象的です。

僕がヒップホップやレゲエが好きなので、トラックにラップを乗せるようなイメージで作っていきました。その中で、バンドサウンドをどうやって生かすかというところを考えながら。あとはみんなで歌えるようなパートも作りたかったし、僕がベースを置いて歌だけに集中できるパートも作りたかった。ライブではお客さんに「ベース弾ける人!」と呼びかけて、弾いてもらってもいいかも。「Do Gang」では歌に専念したいなと思ってます。

──ラップ調の歌唱パートは聴いていて気持ちがいいのですが、かなり言葉が詰め込まれていて、ライブで歌うのが少し大変そうだなとも思いました。あと、ファンの方がカラオケなどで歌うのは至難だろうなと。

歌っていて口が気持ちいいと感じる曲にできたらいいなと思ったんですけど、難しくなりすぎました。WANIMAの曲……歌うのムズい。作った俺が難しいのに、みんな歌えんよな。言葉を詰め込む癖があるので、余白や間を大切にしながら作っていけたらとは思ってるんですけど。できる限り自分たちの枠や限界を決めずに、常に新しい気持ちで曲をどんどん作ってる状態です。