右薙光介によるライトノベルを原作としたTVアニメ「Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。」が、2025年1月より日本テレビ系で放送される。
TVアニメ「Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。」は、実力派赤魔道士と駆け出しパーティによる“配信系ダンジョン攻略ファンタジー”。仲間たちからバカにされ堪忍袋の緒が切れた主人公・ユークが、5年間在籍したAランクパーティを離脱したことから物語が展開される。
本作にはユークがもともと所属していたパーティ、サンダーパイクのメンバーである戦士・バリー役で世界(EXILE、FANTASTICS)が出演する。さらに、オープニング主題歌は、川村壱馬(THE RAMPAGE)がソロアーティスト「零(L.E.I.)」としてリリースする楽曲「Enter」。零はこの曲でソロデビューを果たす。
今回、音楽ナタリーでは声優として出演する世界とオープニング主題歌を歌う零にインタビュー。世界にはアフレコ現場の様子や着実にキャリアを重ねている声優業に対する意気込みを、零にはソロデビューを果たす心境や自ら作詞した主題歌に込めた思いを話してもらった。アニメ愛の強い2人ならではの作品解説、オンエアの楽しみ方などもたっぷり語られているので、視聴時のサブテキストとしても楽しんでもらいたい。
取材・文 / 清本千尋撮影 / はぎひさこ
雑な部分が1つもない丁寧な作品
──「Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。」では世界さんがサンダーパイクの戦士・バリーの声優を、零さんがオープニング主題歌を務めています。本作はサンダーパイクというパーティにいた赤魔道士のユークがメンバーからの不当な扱いを理由に離脱し、クローバーという新たなパーティに加入して活躍していくという内容で、ジャンルとしては異世界アニメの位置付けだと思うんですが、原作を読んでみた感想を教えてください。
零 ジャンル的にはそうだと思うんですけど、型にハマってないというか、ちょっとほかの異世界ものとは読後感が違いました。一発逆転できる無双系ではなくて、再出発してからもたくさんの困難があるところが物語に深みを与えているというか。
世界(EXILE、FANTASTICS) 「エパリダ」は人間臭い話が多いんですよね。人と人の関わり合い方をすごく丁寧に描いている印象がある。ダンジョンものとしてもすごく面白くて、この作品ならではの用語もたくさん出てくるし、世界観の徹底の仕方が素晴らしい。キャラクター1人ひとりもそうですし、この作品の世界がすごく綿密に作られていて、雑な部分が本当に1つもないなと思いました。
──気になったキャラクターはいましたか?
零 こんなこと言っていいのかわからないですけど、サイモン(サンダーパイクのリーダー)が嫌すぎました(笑)。あんなにムカつく奴と一緒にパーティを組んでるユークはすごすぎる。
世界 我らがボス、サイモンさん(笑)。バリーから見るとかわいい奴なんですよ。サイモンさん率いるサンダーパイクは視聴者から嫌われるパーティなんですけど、根はいい奴が多いと思っていて。そういうところが垣間見えると、なんだか憎めないんですよね。
──サンダーパイクから脱退したユークが新たに参加するクローバーというパーティは、ユークの元教え子のマリナ、シルク、レインという女子3人からなるチームです。サンダーパイクは全員クセが強いメンバーでしたが、クローバーも個性的なメンバーがそろっていますよね。
世界 そうそう。クローバーのメンバーの関係性って本当に四つ葉のクローバーみたいな感じ。四方向に向かっていても根本の部分でつながってるみたいな……。
零 いいこと言いましたね。今。
世界 敵という立場なはずなのにクローバーを理解してしまった(笑)。
アニメ主題歌を担当するのは理想とする“発信”
──零さんは今回THE RAMPAGEとしてではなく、ソロアーティストとしてオープニング主題歌を担当することになりました。これまで俳優業やモデル仕事でソロ活動はありましたが、今回ソロアーティストとして「エパリダ」オープニング主題歌へのオファーを受けたときの心境を教えてください。
零 めっちゃうれしかったです。僕にとってアニメは数少ない趣味で、ルーツの1つなので、ソロのアーティスト活動の一発目でアニメ主題歌を歌えることが特別にうれしくて。僕らが所属するLDHって世間的にはゴリゴリでマッチョのイメージだと思うんですよ。もちろん僕もそういう属性を持ち合わせてはいますが、昔からアニメやマンガが大好きなので、それを自分の活動を通して広められるのは本当に幸せなことですね。
──ソロだからこそ自分のアイデンティティを発揮できるというか。
零 そうですね。僕は美容も好きで、昔から身近なものだったというか、当たり前に接していたことなんですけど、今やっと男性も手を出しやすいものになってきたじゃないですか。それで最近は美容のお仕事もソロで受けるようになってきていて、アニメが好きだと発信するのもそれと同じ感覚。僕が何かを発信することで、「自分がやっても変じゃない」と気付いたり、「自分が好きなものを好きでいていいんだ」と思ってくれる人が増えたらいいなと思っているんです。だから自分が好きなアニメに本業であるアーティストとして関われることが本当にうれしいです。僕が理想とする“発信”ってこういうことだよなと改めて思いました。
──零さんをきっかけにアニメを好きになる人が増えるといいですよね。
零 僕の影響力なんて大したことはないですが、アニメ作品の持つパワーを少しでも後押しできたらうれしいです。
イチからゼロに……零というソロ名義について
──「エパリダ」の主題歌「Enter」を皮切りに“零(L.E.I.)”という名義でソロ活動をスタートさせます。川村壱馬ではなく、“零”として活動することになった経緯を教えていただけますか?
零 過去に“レイ”という役名に出会う機会があって、結局そのときは使わなかったんですけど、響きが気に入っていたし、僕の名前にも「壱」が入っているので、イチをゼロにする──一度ゼロに戻してソロ活動を始めるってなんかいいなと思ったんですよ。ゼロからの挑戦という意味も込めて。あと何事もゼロから始まるので、そこからの可能性は無限大だなって。響きも見た目も意味もしっくりきたし、サブスクでの表記も考えて“零”にしました。アーティスト名に自分で意味を込めることによって、誇りを持って活動していけるなとも思ったので。
──零のデビュー曲でもある、「エパリダ」主題歌の「Enter」は、ご自身で作詞を担当されました。主人公・ユークの気持ちを代弁しているかのような内容ですよね。
零 ユークに感情移入する部分がたくさんあったんです。もともとサンダーパイクの活躍はユークの力があってこそだったわけじゃないですか。それにパーティのメンバーが気付かないもどかしさに「あー!」ってなったりして(笑)。先に主題歌のお話をいただいてから作品を読み始めたんですが、物語の要素をうまく曲に落とし込もうと思いながら読み進めていきました。あとはクローバーのメンバーとの出会いも歌詞を書くうえでキーになっていて、最終的には仲間のことについて書いた歌詞になりました。
──「クローバー」という言葉も入っていますもんね。グループの楽曲でも、ご自身のラップパートのリリックを手がけていましたが、自分で書いた歌詞をソロで歌うというのはまた違う心持ちかと思います。THE RAMPAGEの川村壱馬として歌うときと零として歌うときで、意識的に異なる部分はありますか?
零 作詞家さんが書いてくれた歌詞を歌うのと、自分で書いた歌詞を歌うときでは、そもそも意識が違うんですよ。自分の言葉を歌うときは、提供していただいた歌詞を歌うのとはまた違う責任もあって。零では1人で歌っていることを意識して、自分の表現に振り切っています。余計にカッコつける必要がないというか。
──零という名義ではありますが、より川村壱馬という人間の本質を表しているということですね。世界さんは零さんが歌う主題歌を聴いてみていかがでしたか?
世界 作品に寄り添った歌詞ですが、全体を通して伝えたいメッセージに壱馬の思いも乗っているなと感じました。すごくスタイリッシュで壱馬らしい曲。壱馬ってバランス感覚が優れてるんですよ。この歌詞も自分の思いをうまく落とし込みながら別人格を感じさせるところもあって、バランスがいい。この曲は今までの壱馬のことを知らない人やアニメから入った人もたくさん聴くことになるので、それを想像して作ったんだろうなと思いました。……本人の前で曲を評論するなんて公開処刑ですか?(笑)
零 ありがとうございます(笑)。僕はマンガだけじゃなくて小説もたくさん読むんですけど、メディアミックスされるときに原作へのリスペクトがないと楽しめないタイプなんですよ。だからリスペクトがない人はこういう仕事を絶対にやらないほうがいいくらいに思っていて。例えば、マンガが実写映画化されるときにいろんな声が挙がるじゃないですか。僕には文句を言う側の気持ちもわかるんです。だからこそ今回はユークと自分で重なる部分を歌詞にして、しっかり作品へのリスペクトを示したつもりです。「ユークだったら」を念頭において、自分だったらラップに入れちゃう「俺」とかそういう言葉はユークっぽくない、と使うのをやめてみたりして。アニメで使われない2番以降の歌詞は自由に書いていいという話だったんですけど、どうしても意識してしまって、2番の歌詞はなかなか苦戦しましたね。そういうところも考えながら、作品と自分とのバランスを意識して歌詞を書いたので、世界さんにバランスがいいと言われたのが本当にうれしいです。
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声優はずっと続けていきたい仕事