Pick Up!
28号 ao
新たなオルタナの可能性を秘めた“青い原石”
文 / 森朋之
1990年代オルタナの影響を感じるインディーズバンドが続々と登場し始めたのは、おそらく2020年頃だろうか。それは同時にギターロック復権の兆しであり、その系統の音楽が好きな筆者はとても興味を持っていたのだが、28号というバンドもそのうちの1つ。バンドのプロフィールがほとんど公開されていないが、活動スタートはおそらく2022年頃。翌2023年に1stシングル「若者讃歌」、2024年2月に1st EP「28号の音漏れ」をリリースし、都内を中心にライブ活動を展開している4ピースバンドだ。
2024年10月に発表された楽曲「ao」には、このバンドの特長がよく表れている。力強く打ち鳴らされるドラムで曲が始まり、2本のギター(アルペジオとメロディ)が心地よく絡み合う……と思ったら、いきなり轟音が炸裂する30秒以上のイントロののち、「あの空は空蝉か / 何故雲を隠すのか」という叙情的なフレーズが聞こえてくる。エモさと激しさを併せ持つボーカル、鋭利に切り込みながらもシューゲイズ的な音響を随所に感じさせるギター、シンプルに楽器のボトムを支えるリズム隊が響き合い、オルタナの新型と称すべきロックナンバーに仕上がっている。
日本語の響きを重視した、夏の終わりの郷愁と焦燥を描き出した歌詞も魅力的。オルタナを中心にさまざまなバンドの影響が伺えるが(個人的にはPixiesの音像を想起した)、どこかノスタルジックな雰囲気の旋律、青春(の終わり)を感じさせる世界観を含め、このバンドにしかないオリジナリティを獲得しつつあると思う。
[Pick Up!]28号「ao」
- 28号「ao」
- 2024年10月8日(火)配信開始 / 28号
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28号(ニジュウハチゴウ)
十時慎吾(Vo, G)、畠山大輝(Vo, G)、田中椋(B)、太和田恭市(Dr)による4人組バンド。大学の軽音楽部の同期メンバーで、2022年に結成された。2023年9月に1stシングル「若者讃歌」をリリース。2024年10月に最新シングル「ao」を発表した。