「18TRIP」を彩る音楽の制作背景に迫る|Penthouseメンバー&Yu(vague)インタビュー2本立て

スマートフォン向けアプリゲーム「18TRIP」の劇中音楽を収録したカセットテープ第1弾「18TRIP Cassette #01 ‘グッドラック’」がリリースされた。

「18TRIP」は、「A3!」のヒットで知られるリベル・エンタテインメントがポニーキャニオンとタッグを組んで制作した、“国内観光”をテーマにしたゲーム。近未来の日本を舞台に、個性豊かなキャラクターたちが寂れてしまった観光地の活気を取り戻すべく日本各地を旅行して、おもてなしについて学んでいく。「18TRIP」の世界を彩るのは、さまざまなアーティストが手がけた多彩な音楽。楽曲は配信とカセットテープで発表される形で、「18TRIP Cassette #01 ‘グッドラック’」以降も順次リリースが決定している。

「18TRIP Cassette #01 ‘グッドラック’」には、「18TRIP」の主題歌「グッドラック」をはじめ、メインエンディング曲「Shall we travel?」、作中に登場する旅行会社・HAMAツアーズの社歌「我らHAMAツアーズ」にインストゥルメンタルを加えた計6トラックが収められている。

音楽ナタリーでは「18TRIP」の音楽の魅力を探るべく、楽曲制作に携わるクリエイターへのインタビューを前後編で掲載。前編では「グッドラック」を手がけたPenthouseの浪岡真太郎と大原拓真、後編では「Shall we travel?」と「我らHAMAツアーズ」を手がけたYu(vague)に、それぞれの楽曲に込めた思い、「18TRIP」の魅力について語ってもらった。

取材・文 / 小松香里

「18TRIP」とは?

ストーリー

かつて有数の観光特区だったHAMA18区を立て直すべく、立ち上がった主人公と幼なじみである0区長の大黒 可不可。2人は個性豊かな18区の区長たちと協力し、HAMAの立て直しを目指す。区長たちは「HAMAツアーズ」という旅行会社に所属し、「朝班」「昼班」「夕班」「夜班」の4つのユニットに分かれ、それぞれが抱えた問題と向き合いながらも仲間たちとの絆を築いていく。

メインキャラクター

朝班:R1ze(らいず)

「HAMAツアーズ」に設立された最初のユニット。低迷したHAMAの観光事業に夜明けをもたらすために、新たな形のパッケージツアーでもてなす。

昼班:Day2(でいず)

全員が同じ「浜あすなろ高校」に在学している現役高校生ユニット。地域活性部という部活動の一環で、HAMAの観光業の立て直しに加わることになる。

夕班:Ev3ns(いぶんず)

監獄島(通称:モンキー・ケイジ)の囚人から選ばれたユニット。ご当地アイドルとして結成され、夕暮れ時のライブをメインに活動していく。

夜班:L4mps(らんぷす)

HAMAでそれぞれの店を経営しているメンバーで構成されたユニット。自分の店舗に観光客を招いておもてなしを行う。

HAMAツアーズ

0区長の大黒 可不可が設立した旅行会社で、各班にはコンダクターの笛吹 也千代、雁金 朔次郎、北片 生行、岩渕 ダニエル 比呂士が専属でつき、主人公は4つの班すべてをサポートする。


前編:Penthouse・浪岡真太郎&大原拓真インタビュー

旅に出たくなるようなウキウキ感を

──お二人は「18TRIP」主題歌として「グッドラック」を書き下ろしました。まずはオファーを受けた際の感想から教えてください。

浪岡真太郎(Vo, G / Penthouse) これまでゲームの主題歌を作ったことがなかったので、オファーをいただいたときは驚きました。でも、スタッフの方からゲームの内容や主題歌の方向性を具体的に伺う中で、僕たちの楽曲が合いそうだなと安心しましたし、いい主題歌ができるんじゃないかと感じていました。

大原拓真(B / Penthouse) 僕たちの曲をいろいろと聴いてくださったうえでオファーしていただけたことを知り、勇気を持ってやってみようと思いましたね。

──主題歌の「グッドラック」は、作編曲を浪岡さん、作詞を大原さんが担当しています。まさに旅に出たくなるようなウキウキする曲になっていますが、方向性について何かリクエストはあったんですか?

浪岡 「オープニングナンバーらしい、明るくて元気でさわやかな曲」というリクエストでした。Penthouseの楽曲の中から「例えばこういう曲でしょうか?」といくつか例を挙げてイメージをすり合わせました。

大原 Penthouseはここまでまっすぐに明るい楽曲は多くないけど、個人的にそういう音楽は好きなので、バンドとは切り離して歌詞を書きました。Penthouseでは浪岡がすべての楽曲の作曲を担当していて。作詞は僕がアイデアを出して、それがそのまま通ることもあれば、浪岡と2人でブラッシュアップしていくこともあるんです。でも今回の「グッドラック」の作詞は僕に任せてもらって、曲は曲、歌詞は歌詞と分担して作業しました。

浪岡 普段は音と言葉のハマりを重要視しているんですが、「グッドラック」はアイドルソングっぽさのある曲なので、まずは言葉として聞きやすいほうがゲームのキャラクターが歌っていることが想像しやすいと思ったんです。それなら歌詞は大原にお任せしようと。

大原 Penthouseの曲は音と言葉のハマりを浪岡がしっかりジャッジしていて、今回もハマりが厳しいところは指摘してもらって修正しました。でも「グッドラック」は、Penthouseの楽曲より言葉の意味自体に重きを置いた楽曲ではありますね。

キャラクターたちの息遣いを感じられる曲に

──サウンド面ではどんなところにこだわりましたか?

浪岡 Penthouseの曲を聴いていただいたうえでのオファーだったので、普段のアレンジからは遠ざけずに、Penthouseの特徴の1つであるピアノがしっかり聞こえれば求められているさわやかさにつながるだろうと考えていました。あとは「18TRIP」をプレイしてすぐに流れる曲なので、おしゃれすぎると静かな印象になってしまうと思い、ホーンを足して元気さを演出しました。

──ゲームの主題歌であるということはどこまで意識しました?

浪岡 あまりゲームの曲であることは意識しないほうがいいと思ったんですよね。ゲームの内容を踏まえて、キャラクターたちの息遣いが感じられる曲のほうが合うんじゃないかと。

大原 こういうさわやかな曲は浪岡のど真ん中ではないけれど、すごくいい曲だなと思いました。曲を聴いて歌詞のイメージがどんどん広がって、サビの「そっと手を引いて」というフレーズとか、旅に連れ出していくような歌詞が浮かんでいきましたね。

「グッドラック」の歌詞にちりばめた“遊びの要素”

──歌詞には「赤レンガ」や「ハーバーライト」「観覧車」など、「18TRIP」の舞台であるHAMA18区を思わせる描写が入っています。

大原 HAMA18区のモデルは横浜なんですけど、僕も横浜の高校に通っていたからゲーム内の街を描写する言葉が自然と浮かんできて。事前にいただいたゲームの設定資料がものすごく細かく丁寧で、それを見ればどういう世界観のゲームで、どういう性格のキャラクターが登場するかが全部わかったんです。それを見ながら湧き出てきた言葉を歌詞にちりばめていったので、作詞はすごくスムーズでした。

──「グッドラック」の歌唱は、HAMAツアーズの代表・大黒おおぐろ 可不可かふかをはじめ各班のリーダー4名からなる18isあいびすが担当しています。歌割りはどのように決めていったのでしょう?

18is

18is

大原 2番のAメロの歌詞に18is全員の名前を入れているので、そこはそれぞれのキャラに歌ってもらいたかったのと、その後に出てくる「朝も 昼も 夕も 夜も」というフレーズは各班のリーダーに歌ってほしいとお願いしました。ほかは浪岡が「18TRIP」サイドと相談しながら決めていった感じですね。僕は普段、アニメやゲームの曲をそこまでたくさん聴いているわけじゃないけど、人気曲は歌詞に遊びがあるイメージがあったんです。例えばCreepy Nutsさんが手がけた「ヒプノシスマイク」のどついたれ本舗に提供した「あゝオオサカdreamin'night」とかいいですよね。自分もそういうトライをしたいと思いながら、設定資料集を見る中で「歌詞に入れやすいキャラクター名だな」という発想が生まれてやってみたら何とか形になりました。「グッドラック」が世に出たときにエゴサしてみたら、キャラクター名が入っている歌詞について言及してくれている「18TRIP」ファンが多くてありがたかったですね。

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