中国映画「春の木」(春树)のワールド・プレミアが第38回東京国際映画祭内で開催。本日10月29日に東京・ヒューリックホールで行われたQ&Aにキャストの
本映画祭のコンペティション部門に出品されている「春の木」は「キムチを売る女」「柳川」などで知られ、中国と韓国で活躍するチャン・リュルが中国で撮影した最新作。成功することができなかった女優が中国・四川省の故郷に戻り、その挫折から立ち直ろうとするさまが描かれる。中国映画「モンスター・ハント」や、中国ドラマ「氷に恋したサンシャイン -驕陽伴我-」などで知られるバイ・バイホーが主演。映画「無名」のエリック・ワン、ドラマ「開端-RESET-」のリウ・ダンのほか、中国第5世代を代表する監督で、現在はプロデューサーとして活躍するホアン・ジェンシン(黄建新)も出演している。
劇中に登場するスタジオ・四川峨眉撮影所が印象に残ったという話に及ぶと、チャン・リュルは「あそこは、過去に2作撮ったことがあるスタジオなんです。建物が美しくてとても大好きな場所です。ある日、訪ねて行ったら再開発のためにそろそろ壊されるという話を聞いて。『ちょっと待ってください。映画を撮りたいので時間をください』と頼んで、この作品を急いで撮りました」と明かした。また「2人でカンヌに行きたい」という映画に登場するセリフに絡め、本映画祭に参加した感想を尋ねられると「コンペ作品に選んでいただいて、東京国際映画祭には心から感謝を申し上げたいです。上映できて素晴らしい! カンヌで上映できるかどうかはわかりません(笑)」と述べ、会場の笑いを誘う。これにエリック・ワンは「私も監督に同感です」と笑みをこぼした。
「私は日本と縁があるんです」と話すリウ・ダンは「1995年に舞台出演のために初めて、日本に来ました。中国、日本、韓国の役者が同じ舞台でパフォーマンスしたんです。その後、2013年から2年間、日本で勉強をする機会を与えてもらいました。当時はまさか、自分の出演映画が、東京国際映画祭で上映されるとは夢にも思っていませんでした。最高です!」と喜んだ。
本作では、主人公が故郷を離れているうちに地元の方言を話せなくなっていることが、物語の重要な要素となっている。バイ・バイホーは「役者として映画に関わる際には、万端の準備をしなければなりません。脚本を読んだとき、故郷の言葉を忘れてしまうなんて、そんなことありうるのか?と疑問を持ちました。監督に聞いてみると『あるかもしれないよ』と答えてくれたんです」と回想。そして「よくよく考えてみると、故郷の言葉というのは媒体のようなもの。主人公は成都を離れて仕事をする中で、次第に故郷の言葉から遠くなり、それとともに媒体としての役割も薄れていった。そういうこともあるかもなと思ったんです」と語り、「言葉はある種の表現方法であり、アイデンティティを表すようなもの。だから主人公は生まれ育った土地の言葉に、改めて親しみを持つようになっていく。私自身もそうですが、迷ったとき、心が落ち着かないときはやっぱり故郷に帰りたくなるものです。私も同じように、故郷を離れたことがある人間。最終的に主人公の心境に近付くことができてうれしかったです」と伝えた。
第38回東京国際映画祭は11月5日まで東京の日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアで開催。
第38回東京国際映画祭 概要
会期・会場
開催中~2025年11月5日(水)東京都 日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリア
風小僧 @7n55
TIFF「春の木」
成功せずに故郷に帰ってきた女優さんのお話。静かに物語が進む。中国の四川省・成都という街を堪能した。
それはそうと、上映後のQ&Aで中国語通訳の方が凄い上手で驚いた。瞬間で細部まで翻訳し、日本語がすごく丁寧。調べたら、サミュエル周さんという方らしい。これは収穫。 https://t.co/4NgTW73jjX https://t.co/htPhGB9jzy