中里ふくがPFFアワードのグランプリ受賞、監督作「空回りする直美」はTIFFで特別上映

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第47回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2025のメインプログラムである自主映画コンペティション「PFFアワード2025」の表彰式が、9月19日に東京のコートヤード・マリオット銀座東武ホテル「桜の間」にて行われ、各賞が発表された。

「PFFアワード2025」表彰式の様子。プレゼンターの山内マリコ(左)、「空回りする直美」でグランプリに輝いた中里ふく(右)

「PFFアワード2025」表彰式の様子。プレゼンターの山内マリコ(左)、「空回りする直美」でグランプリに輝いた中里ふく(右)

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“映画の新しい才能の発見と育成”をテーマに1977年より行われてきたPFFアワード。今回は史上2番目に多い795本の応募作品の中から、約4カ月にわたる審査を経て22作品が入選し、映画祭期間中は会場の東京・国立映画アーカイブにて各2回ずつスクリーン上映が行われた。コンペティション部門・PFFアワード2025の最終審査員は、俳優の門脇麦、コギトワークス所属のプロデューサー・関友彦、「山女」の監督・福永壮志、「あのこは貴族」で知られる作家・山内マリコ、「ナミビアの砂漠」を手がけた山中瑶子が務めた。

「PFFアワード2025」表彰式の様子。受賞監督とプレゼンターたち

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グランプリに輝いたのは、「空回りする直美」の監督・中里ふく。同作は、発達障害とチック症を抱える兄・慎吾を見守り、持ち前の明るさで日々を楽しく生きる直美の物語だ。東京都出身、20歳の中里は「私自身が未熟で、いろんなものが足りない状況のなかで映画をつくっていたので、まさかそれを人前に出せて、しかも賞をもらえると思ってなく、私のことを支えてくれた人や怠惰な自分を動かしてくれた人のおかげだと思います」とスピーチし、喜びをあらわにした。なお「空回りする直美」は、エンタテインメント賞(ホリプロ賞)にも選ばれた。同作は、10月27日から行われる第38回東京国際映画祭で特別上映される。

「空回りする直美」場面写真

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中里ふく

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準グランプリは、「BRAND NEW LOVE」を手がけた岩倉龍一に贈られた。審査員特別賞は「アンダー・マイ・スキン」の監督・細川巧晴、「紅の空」の監督・瀨川翔、「ロ-16号棟」の監督・井上優衣へ。一般審査員による映画ファン賞(ぴあニスト賞)は、「惑星イノウエ」の監督・鈴木大智が受賞。観客の人気投票による観客賞には、「黄色いシミ」の監督・野村一瑛が輝いた。入選作品は、10月31日まで映画祭特設サイトまたは U-NEXTで有料配信中のほか、11月13日から16日まで京都・京都文化博物館で開催の京都ぴあフィルムフェスティバル2025でも上映される。

プレゼンターの関友彦(左)、「BRAND NEW LOVE」で準グランプリに輝いた岩倉龍一(右)

プレゼンターの関友彦(左)、「BRAND NEW LOVE」で準グランプリに輝いた岩倉龍一(右) [拡大]

門脇ら最終審査員による審査総評コメントは下記にまとめた。

門脇麦 コメント

映画づくりに関わっている一人の人間として、皆さんの作品を観た時間が、あまりにも幸福すぎて凄く幸せな時間でした。
これからも映画づくりを一緒にしていきましょう! おめでとうございます!

関友彦 コメント

約800本の中から22本に入選したことですら、本当に素晴らしいと思います。その全てを拝見させていただいてどの作品もすごくクオリティが高くてびっくりしました。
その反面、パッションみたいなものがズバッと突き刺さるかといえば、全部が全部そうではなかったと思います。
ただ、皆さんが精いっぱいつくっているのは、全部の作品から伝わってきました。
PFFらしい、力のこもった作品たちで、22本全部を観るのが楽しかったです。
個人的には「黄色いシミ」は緊張感がたまらず、大好きな作品でしたし、「あの頃」も大好きでした。
このお二人の監督とは今後も仕事をしたいなと思っています。監督の皆さん、おめでとうございます。

福永壮志 コメント

PFFアワードの審査に入る前にわりと予算の潤沢にあるドラマの現場にいまして、その直後に皆さんの作品を拝見させていただきました。映画を観ていたなかで、本当に大事なものは予算や技術ではないことを改めて確信しました。
それぞれ個性豊かな作品のなかで、熱意や、映画に真摯に向き合っていることが伝わりました。
賞というものは審査員の意見やメンバーで変わるものなので、まずは800本もの中からここに選ばれたことを励みにして頑張っていって欲しいと思います。
賞が得られなかった、映画祭に入選できなかったとか、僕のなかでも一喜一憂することはありますが、僕個人として大事なことは“誰かの心に残ったかどうか”だと思います。
それというのは数字にも残らない、例え大きな賞を獲得し歴史に残ったとしても誰にも分からないことです。
それをつくり手として信じ続けられるか、誰かに届ける何かを自分自身が持ち続けられるか、それを作品という形にできるかどうかが、続けていくことの鍵ではないかと思います。おめでとうございます。

山内マリコ コメント

初めて審査員をさせていただいて、「賞」というものは本当に気まぐれだなと感じました。
皆さん、何で自分の作品が選ばれなかったのだろうと不服な方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、賞に振り回されないということはすごく大事なことだと思います。
つくりたいものを、たとえ評価されなくてもつくり続けることが大事なんだと思います。
私は大学で映画を学びましたが、一作も自主制作映画をつくれなかった。映画は仲間がいないとつくれません。
凄く皆さんの作品が、まぶしく見えました。
自分で映画をつくってPFFに応募した、ということは誇らしく思ってよいことだと思います。
皆さんには変わらず、自分の好きなこと、やりたいことを貫いてください。
本日はおめでとうございました。

山中瑶子 コメント

入選された皆様、そして受賞された皆様、本当におめでとうございます。
たくさんの勇気を出して、こうして映画を見せてくれて本当に感謝しています。
今回の受賞作はどれも、監督のもつ言語のようなものがこちらに響いて、共鳴して、この人の次の映画を見てみたいと思わせてくれました。
とは言え、映画祭の入選や受賞は、審査員との相性が大きいと私個人の実感として思うので、もちろん思い切り喜んでもらってから、あまり考えすぎずにまた次に向かうくらいがちょうど良いと私は思っています。
私は8年前の2017年に「あみこ」という映画でPFFに入選しました。
映画をつくるということには、社会や人間と繋がりたいという欲求が水面下には必ずあると思いますが、当時の私は表面的に興味があることしか興味がなくて、傲慢だったのだと思います。今振り返ると他者とろくに会話もできなくて、人前に出られる人間ではありませんでした。それでも、映画祭で出会った人々によって、非常に人間らしくしてもらえたと思っています。
どんな映画もつくり手がどのように世界を見ているか、ということがどうしても出ます。
皆さんが今持っている魅力を大切にすることはもちろんですが、この社会、世界とは一体何なのかを常によく見つめてほしいと思います。
自分が何に好奇心を持ち、興味があるのか、何を嫌悪し、何を許すべきではないのか、それは何故かを考え見つめながらも、自分自身が変化していくことを恐れずに、この社会と繋がって欲しいなと思います。
とは言え、理不尽で苦しく世界が壊れていくような現実もありますので、心に負荷がかかっていると思ったら心が壊れる前に立ち止まって休んで欲しいです。
心を壊してまでやるべきことは何もないので、特に映画づくりは全く焦らなくてもよいので、一人で考え込まず、周りを頼って、時には迷惑をかけながら、それぞれのペースで、行けたらよいのかなと思います。
改めておめでとうございました。

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第47回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2025」表彰式映像

第47回ぴあフィルムフェスティバル2025

PFFアワード2025 入選作品

  • 「あの頃」監督:戸田遥太(18歳 / 埼玉県出身 / 埼玉県立松山高等学校 映像制作部)
  • 「アンダー・マイ・スキン」監督:細川巧晴(21歳 / 富山県出身 / 京都芸術大学 芸術学部 映画学科)
  • 「カクレミノ」監督:澤田晴(22歳 / 福井県出身 / 長岡造形大学 視覚デザイン学科)
  • 「空回りする直美」監督:中里ふく(20歳 / 東京都出身 / 東放学園映画専門学校 映画制作科)
  • 「黄色いシミ」監督:野村一瑛(29歳 / 東京都出身 / フリーター)
  • 「傷ついた天使」監督:田辺洸成(21歳 / 福岡県出身 / 青山学院大学 総合文化政策学部)
  • 「Caravan」監督:庄司皓(23歳 / 宮城県出身 / 同志社大学)
  • 「屈折の行方」監督:鴨林諄宜(25歳 / 大阪府出身 / フリーター)
  • 「紅の空」監督:瀨川翔(17歳 / 東京都出身 / 三田国際科学学園高校)
  • 「CROSS-TALK」監督:原田捷(24歳 / 神奈川県出身 / 会社員)
  • 「郷」監督:伊地知拓郎(27歳 / 鹿児島県出身 / 映画監督)
  • 「人生はいつだってHARDだ」監督:笠原崇志(30歳 / 宮城県出身 / 俳優)
  • 「名前をつけるのは、これから」監督:直林水悕(29歳 / 福岡県出身 / 会社員)
  • 「ノイズの住人」監督:アンドレス・マドルエニョ(30歳 / メキシコ出身 / 武蔵野美術大学大学院 映像・写真コース)
  • 「PEAK END」監督:シン・チェリン(26歳 / 韓国出身 / 京都芸術大学 芸術学部 映画学科)
  • 「BRAND NEW LOVE」監督:岩倉龍一(22歳 / 神奈川県出身 / 東京造形大学 造形学部 映画・映像専攻)
  • 「僕はガタロウ」監督:久保地穂乃(24歳 / 東京都出身 / フリーター)
  • 「マイ スモール ワールド」監督:丸岡優月(21歳 / 愛知県出身 / 名古屋学芸大学 映像メディア学科)
  • 「宮沢さんは剥がさせないっ!」監督:金澤誠人(16歳 / 東京都出身 / 東京都立工芸高等学校 マシンクラフト科)
  • 「ロ-16号棟」監督:井上優衣(21歳 / 東京都出身 / 武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科)
  • 「惑星イノウエ」監督:鈴木大智(22歳 / 東京都出身 / 東京造形大学 造形学部 映画・映像専攻)
  • 「ワンダリング・メモリア」監督:金内健樹(35歳 / 東京都出身 / フリーター)

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おおとも ひさし @tekuriha

中里ふくがPFFアワードのグランプリ受賞、監督作「空回りする直美」はTIFFで特別上映
"準グランプリは、「BRAND NEW LOVE」を手がけた岩倉龍一に贈られた。審査員特別賞は「アンダー・マイ・スキン」の監督・細川巧晴、「紅の空」の監督・瀨川翔、「ロ-16号棟」の監督・井上 https://t.co/e3mQiTzMpS

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