黒澤明賞の受賞者が決定、「国宝」の李相日と「ノマドランド」のクロエ・ジャオ

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第38回東京国際映画祭が今年度の黒澤明賞の受賞者を発表。「国宝」で社会現象を巻き起こしている李相日、「ノマドランド」でアカデミー賞監督賞に輝いたクロエ・ジャオに贈られることがわかった。

黒澤明賞の受賞が決まった李相日

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黒澤明の業績を長く後世に伝えるため、世界の映画界に貢献した映画人に贈られる同賞。昨年は「夜明けのすべて」の三宅唱、「本日公休」のフー・ティエンユーが受賞した。今年の選考委員には映画監督の山田洋次、キャスティングディレクターの奈良橋陽子、評論家の川本三郎、東京国際映画祭プログラミングディレクターの市山尚三が名を連ねている。

「国宝」ポスタービジュアル ©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

「国宝」ポスタービジュアル ©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会[拡大]

選考委員は李相日への授賞理由について「しばしば社会の矛盾や人間の罪の問題を扱った重厚なテーマを描きつつ、それを多くの観客の共感を呼ぶヒューマニズム溢れる人間ドラマとして昇華させてきました」と述べつつ、「国宝」での商業的な成功をたたえ「今後の日本映画、そして世界の映画を牽引することを期待し、李相日監督に黒澤明賞を授与します」と発表した。

李相日は「御多分に洩れず、私の中でも黒澤明という名は永久に超えられない壁として君臨しています。映画をめぐる環境がいかに変わろうとも、人間の本質に迫るその力強さは色褪せることなく、映画が社会や個々の人生に多大な影響を及ぼすことを示しています。その名を冠した賞を背負う意味を、この先も自らに問い続けたいと思います」と受賞の喜びを語る。

黒澤明賞の受賞が決まったクロエ・ジャオ

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中国・北京出身であり、アジア系女性として初めてアカデミー賞監督賞を受賞したクロエ・ジャオ。選考委員はその活躍を「通常のハリウッド映画とは一線を画した詩的かつリアリスティックな作品を発表してきました」と評し、「その成功はアジア系女性監督たちに大きな勇気を与えました。その功績と今後の世界映画への更なる貢献を期待し、クロエ・ジャオ監督に黒澤明賞を授与します」とコメントしている。

受賞を受けて、クロエ・ジャオは「黒澤明の作品には、自然のもっとも広大なスケールと、人間の心理のもっとも深い真実が共存しています。この系譜に連なることは、本当に謙虚な思いを抱かせられます。物語の語り手は、文化、国境、過去と未来、光と闇、喜びと苦痛、愛と死を結び結ける架け橋です。私たちは経験を錬金術のように変容させ、それらに意味を与え、カタルシスを得ることを願っています」と語っている。

第38回東京国際映画祭は10月27日から11月5日にかけて開催。黒澤明賞の授賞式は11月3日に東京・帝国ホテルで行われる。

コラム

李相日

授賞理由

李相日監督は、しばしば社会の矛盾や人間の罪の問題を扱った重厚なテーマを描きつつ、それを多くの観客の共感を呼ぶヒューマニズム溢れる人間ドラマとして昇華させてきました。最新作「国宝」はカンヌ監督週間を始めとする多くの国際映画祭で上映されるとともに、日本国内でも幅広い観客層に支持され、商業的な成功をおさめました。今後の日本映画、そして世界の映画を牽引することを期待し、李相日監督に黒澤明賞を授与します。

本人コメント

敬愛する山田洋次監督はじめ、審査委員の皆さま、並びに東京国際映画祭に感謝申し上げます。なにより、スタッフ・キャストの献身なしにこのような賞に浴すことは叶いませんでした。そして、これまでの作品に関わってくださった皆さまに深く感謝いたします。
御多分に洩れず、私の中でも黒澤明という名は永久に超えられない壁として君臨しています。映画をめぐる環境がいかに変わろうとも、人間の本質に迫るその力強さは色褪せることなく、映画が社会や個々の人生に多大な影響を及ぼすことを示しています。
その名を冠した賞を背負う意味を、この先も自らに問い続けたいと思います。
この度は誠にありがとうございます。

クロエ・ジャオ

授賞理由

クロエ・ジャオ監督は、通常のハリウッド映画とは一線を画した詩的かつリアリスティックな作品を発表してきました。特に「ノマドランド」はヴェネチア映画祭金獅子賞、アカデミー賞(R)作品賞を受賞するなど世界的に高い評価を受け、その成功はアジア系女性監督たちに大きな勇気を与えました。その功績と今後の世界映画への更なる貢献を期待し、クロエ・ジャオ監督に黒澤明賞を授与します。

本人コメント

本賞を受賞することとなり、光栄に存じます。黒澤明の作品には、自然のもっとも広大なスケールと、人間の心理のもっとも深い真実が共存しています。この系譜に連なることは、本当に謙虚な思いを抱かせられます。物語の語り手は、文化、国境、過去と未来、光と闇、喜びと苦痛、愛と死を結びつける架け橋です。私たちは経験を錬金術のように変容させ、それらに意味を与え、カタルシスを得ることを願っています。東京国際映画祭、選考委員会、そして観客の皆様に、私たちを支えてくださり、私たちの目的を思い起こさせて下さったことに、心から感謝申し上げます。

第38回東京国際映画祭(2025)開催概要

開催期間

2025年10月27日(月)~11月5日(水)

会場

日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区

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