SKIPシティ映画祭で2冠、母親を失った中学生の日常描いた「嬉々な生活」公開

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“若手映像クリエイターの登竜門”として知られるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024で審査員特別賞とSKIPシティアワードの2冠に輝いた映画「嬉々な生活」。同作が8月9日より大阪・第七藝術劇場にて1週間限定公開、8月29日より東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開されることがわかった。

「嬉々な生活」ポスタービジュアル

「嬉々な生活」ポスタービジュアル

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「嬉々な生活」場面写真

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本作は大阪の団地を舞台に、母親の急死によって、父や弟妹たちのケアを一身に背負うことになった中学生・嬉々の日常を描いた作品。父の賢介は最愛の妻を失ってから、万年床から出られなくなっていた。一家を取り巻くのは、同僚教師への嫌がらせが止められない嬉々の元担任や、賢介の行動に怒りと疑問を抱える同じ団地の住民だ。嬉々のクールなまなざしを通して、どこか不器用な大人たちが織りなす人間模様を見つめていく。

「嬉々な生活」場面写真

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嬉々を演じた2007年生まれの西口千百合は、本作の演技によって第25回TAMA NEW WAVEのベスト女優賞を受賞。YouTubeで公開された予告には、嬉々が元担任にお金を借りたり、友達と怪しいバイトをしたりと経済的に困窮する一家を支えるべく奔走する姿も切り取られた。

「嬉々な生活」場面写真

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共演は川本三吉渡辺綾子、毛利美緒、石橋優和、竹内大騎、中田彩葉辰寿広美デカルコ・マリィ時光陸内田周作。「凪の憂鬱」「夜のまにまに」でプロデューサーを務めた谷口慈彦が製作・監督・脚本を担った。SPOTTED PRODUCTIONSが配給する。

「嬉々な生活」場面写真

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このたび映画監督の横浜聡子白石和彌、俳優の川瀬陽太小川あんなど7名のコメントも到着。横浜は「矛盾だらけの人間をちゃんと理解し、かつ的確な距離をもって描く谷口監督の眼にすっかりやられてしまった。人間をしっかり描けば自ずと社会が浮かび上がってくるということを『嬉々な生活』は証明している」と推薦し、白石は「その一瞬でしか切り取ることの出来ない衝動と、谷口監督の俳優たちへの優しい眼差しが見た者の心を撃ち抜く」と語っている。

そのほかのコメントは以下の通り。

横浜聡子(映画監督)コメント

「ヤングケアラーがテーマの映画、最近多いなあ」と漠とした不安とともに映画を観始めたが、すぐにそんな不安は吹き飛んだ。矛盾だらけの人間をちゃんと理解し、かつ的確な距離をもって描く谷口監督の眼にすっかりやられてしまった。人間をしっかり描けば自ずと社会が浮かび上がってくるということを「嬉々な生活」は証明している。
映画の終わらせ方もこれまで観たことのない類の、見事なものだった。どうか観てほしい。

白石和彌(映画監督)コメント

その一瞬でしか切り取ることの出来ない衝動と、谷口監督の俳優たちへの優しい眼差しが見た者の心を撃ち抜く。映画を見終わって息遣いが荒くなるほど爽やかな、おっさんの私でさえ今すぐ走り出したくなるような余韻。
この映画のラストシーンは必見です。

川瀬陽太(俳優)コメント

どこにでも在る出来事、ひと。皆ずっと同じではいられない。時間は残酷だが救いでもあって、すべての人間に等しく降り注ぐ。要らない時間や人間なんていやしない。そう信じさせてくれる魔法がこの映画にはかかっている。

武井みゆき(配給会社ムヴィオラ代表 / SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024審査員)コメント

私は洋画配給が主な仕事なので、本当は洋画の味方でいたいのですが。谷口慈彦監督の映画にはやられました。あのラストのシークエンス。瞬間が永遠になるのを目撃し、体力ゲージもメンタルゲージも一気に爆上がりしました。誰にも撮れない映画だから、1人でも多くの人に見てほしい。

メイスク・タウリシア(映画プロデューサー)コメント

A life that is full of love that it breaks your hearts.
Beautifully made, and will not be easy to forget.
翻訳:心が張り裂けるほどの愛に満ちた人生。
美しく作られており、決して忘れられないでしょう。

荒木美也子(アスミック・エース・プロデューサー)コメント

人と同じように映画とも素敵な出会いがあるもの。「嬉々な生活」は、そんな思いを抱いた作品だ。主人公の嬉々(きき)という名前は、「魔女の宅急便」のキキが由来であることも、タイトルが「嬉々の生活」ではなく「嬉々な生活」であることも、谷口監督がこの作品に込めた思いとして、観終わった後、じんわり広がってくるものがある。ダメな父親や、境遇に負けず生き抜く嬉々の演技・演出は、お見事! 暗闇のなかで予想外の行動をとる嬉々とラストシークエンスは、圧巻です!!

小川あん(俳優)コメント

最愛の母を亡くした家族。団地の一室で過ごす生活、沈黙する父、それを支えようとしたり、遠ざけようとする周囲──そんな最小単位の家族(世界)を丁寧に映しながら、失業や孤独、喪失といった日本社会を覆う不安や孤立までもが滲み出てしまう。
しかし、谷口監督は、嬉々の「正しさ」に追い立てられた生活の脆さに焦点を当て、ベランダから覗くような限られた視界に、それでも確かに何かが芽吹こうとする気配をとらえていた。不器用ながらも差し出される手があり、言葉にされないまま寄せられる思いやりがある。誰かを思う静かな気配が、沈黙のなかに幾重にも重なっていく。
わたしは、ラストカットで駆け出す嬉々の背中姿を見送って、
ファーストカットのホームビデオで見せた嬉々の笑顔をもう一度見返した。彼女はこれから、人生の「痛み」と「願い」を一つにして引き受ける力強さをもって駆け出していくだろう。

映画「嬉々な⽣活」予告編

この記事の画像・動画(全9件)

©belly roll film

読者の反応

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磯部鉄平 @isobeteppei

編集で参加した映画「#嬉々な生活」の公開日が決定しました。
谷口慈彦監督の劇場公開デビューです!
見に来てくださいー!
https://t.co/9S5HQZR5Ai
🚲 🚲 🚲
8/9(土)~8/15(金)
第七藝術劇場 にて大阪先行上映!
https://t.co/b26NciAoc2

8/29(金)~
新宿武蔵野館
https://t.co/nXmgoJwGmS https://t.co/arl24VNZjt

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