第25回東京フィルメックスの授賞式が、本日11月30日に東京・丸の内TOEIで行われた。
アジアの新進作家を中心に世界から選りすぐった映画を紹介する同映画祭。コンペティションのラインナップにはジョージア、パレスチナ、インド、ベトナム、シンガポール、台湾、中国、韓国の8つの国と地域の監督が制作した10作品が並んだ。
最優秀作品賞はデア・クルムベガスヴィリの「四月」が獲得。妊娠12週までの堕胎手術は本来合法であるものの、実質的には違法状態となっているジョージアで、手術・処置を行う産婦人科医が描かれる。審査員のラ・フランシス・ホイは「この大胆で冷徹な長編映画は、保守的な農村地帯で女性が直面する厳しい現実を突き付けている。彼女たちの自由は、それが身体に関わるものであろうと欲望の表現に関わるものであろうと、絶え間ない闘いである。監督は、骨太なリアリズムとシュールレアリズム的なホラーを融合させ、吸い込まれるような挑発的な体験を生み出している」と受賞理由を説明する。ガスヴィリはビデオメッセージで「私たちにとって大きな意味がある受賞です。この映画は製作に参加した全員の努力と献身の結晶。多くの制約の中作りましたが、ジョージアで制作を手伝ってくれた人々は非常に勇敢でした」と思いを口にした。
審査員特別賞と学生審査員賞に輝いたのは、サンディヤ・スリによる「サントーシュ」。インドを舞台にした本作では、レイプ後殺害された不可触民の少女の死について捜査する女性警察官が映し出される。審査員を務めたカトリーヌ・デュサールは「容赦ないストーリー展開のダークスリラー。見事に演じられた女性キャラクターを通じて、社会の硬直性と不平等を痛烈に描き出している。舞台は現在のインドではあるが、世界中に蔓延している妥協と呼応している」と評した。スリは「26年前、私は日本で1年間英語の教師をしていました。その間にたまたま山形国際ドキュメンタリー映画祭を訪れたんです。そこで観た映画にものすごくインスパイアされ、私はすぐにカメラを買って映画を撮りました。その作品で映画学校に応募して合格しました」「インドに関する問題について多くを語るとともに、非常に個人的で普遍的な映画を作りたかったんです」とビデオメッセージで語る。
スペシャル・メンションはチャン・ウェイリャン、イン・ヨウチャオが手がけた「白衣蒼狗」のもとへ。審査員である
観客賞はロウ・イエが監督した特別招待作品「未完成の映画」が受賞。ロウ・イエとともに脚本を執筆し、プロデューサーも務めたマー・インリーは「たくさんの方に観ていただき、そして投票していただき感謝申し上げます。心から、ありがとうと言いたいです」とうれしそうにコメントした。
最後にロウ・イエは「我々審査員3人は作品1本1本を十分に討論して審査を進め、それぞれ自分の好きな作品を選んでいきました。(受賞しなかった)そのほかの監督の皆さんにもお礼を言いたい。彼らの視点で世界を見ることができましたし、視野を広げてくれたことに感謝します」と述懐し、イベントの幕を引いた。
第25回東京フィルメックスは12月1日まで丸の内TOEI、ヒューマントラストシネマ有楽町にて開催中。全受賞結果は以下の通り。
第25回東京フィルメックス 受賞結果
最優秀作品賞
四月 / April(監督:デア・クルムベガスヴィリ)
審査員特別賞
サントーシュ / Santosh(監督:サンディヤ・スリ)
スペシャル・メンション
白衣蒼狗(はくいそうく) / Mongrel(監督:チャン・ウェイリャン、共同監督:イン・ヨウチャオ)
観客賞
未完成の映画 / An Unfinished Film(一部未完成的電影)(監督:ロウ・イエ)
学生審査員賞
サントーシュ / Santosh(監督:サンディヤ・スリ)
タレンツ・トーキョー・アワード2024
The Rivers Know Our Names(監督:マイ・フエン・チー)
スペシャル・メンション
The Vision of Lonely Mountains(監督:ハグヴドラム・プレヴオチル)
Dollyamory(監督:畠山佳奈)
Naked in Glendale(監督:ヤン・ハオハオ)
河添 誠 KAWAZOE Makoto @kawazoemakoto
東京フィルメックス最優秀作品賞、ジョージアで堕胎手術を行う医師描く「四月」が受賞 https://t.co/MFUdVcRbzi