1996年生まれ、宮城県石巻市出身の映像作家・佐藤そのみが手がけた中編映画「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」が、12月7日より東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次上映される。
両作は、石巻市の大川地区で撮影されたもの。10代の頃から東日本大震災の被災者の1人として取材を受ける立場だった佐藤が「描かれるよりも、描きたかった」と自ら脚本を執筆し、大学の友人や地元の住民らの協力を得ながら制作した。報道番組や新聞で大きく取り上げられ、各地で評判を呼んでいたことから、このたび劇場上映が決まった。
「春をかさねて」は、震災で妹を亡くした14歳の少女・祐未を主人公に、女子中学生2人の心の揺れがみずみずしく描かれたフィクション作品。そして「あなたの瞳に話せたら」は、津波で大きな被害を受けた石巻市立大川小学校を舞台に、友人や家族を亡くした子供たちが何を感じ、どのように生きてきたのかが語られるドキュメンタリーだ。
佐藤は「故郷の変化や身内の死にどう向き合えば良いのか、またはどうすればそこから解放されるのか。映画を撮りながら、ずっともがいていたような気がします。あの日を経験した方にも、していない方にも、ぜひ見に来ていただけたら嬉しいです」と思いをつづる。映像作家の
YouTubeでは特報が公開中。2作品の配給は半円フィルムズが担当する。
映画「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」特報
佐藤そのみ コメント
幼い頃から地元の風景や人々が好きで、震災前の12歳の時には「いつかここで映画が撮りたい」と思っていました。震災でそれらのほぼ全てが遠くへ消えてしまい、途方に暮れる中、なんとか形にできたのがこの2本です。地元の方々や大学の友人たちなど、多くの人に支えられての撮影でした。あれから5年以上を経て、大好きな映画館で公開させていただけること、本当に嬉しく思います。
故郷の変化や身内の死にどう向き合えば良いのか、またはどうすればそこから解放されるのか。映画を撮りながら、ずっともがいていたような気がします。あの日を経験した方にも、していない方にも、ぜひ見に来ていただけたら嬉しいです。
小森はるか(映像作家)コメント
進んでいく時間、止まったままの時間。震災によって重ならなくなった過去と現在を抱えながら、歳を重ね、大人になっていくあの時の子供たち。彼らには「もうみんな十分苦しんだ」と、そのための物語が必要だったと、誰か気付いていただろうか。
大川小学校の校舎に差す夕暮れは、同じ光の中で過ごした人たちの記憶を映し出す。きっと、ずっとこの先も変わらないと思える光を、そのみさんは撮れる人だ。大川の記憶をそんな風に映画を観る私たちに分けてくれる。
映画も、人と同じように歳を重ねていく。この先も長く観続けられる映画として、劇場公開されることを心から祝福しています。
おおとも ひさし @tekuriha
石巻市出身・佐藤そのみ監督作「春をかさねて」「あなたの瞳に話せたら」全国で上映 - https://t.co/tXWjZqrn04