映画「
本作は失踪した娘を探し続ける母親が、“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となりながらも、娘に会いたい一心で世の中にすがり続けるさまを描く物語。母・沙織里を石原、彼女の取材を続ける地元テレビ局の記者・砂田を中村、沙織里の夫・豊を青木が演じた。
作品を見終えた観客を前に、まず石原は「(この作品について)誰かと話すことで、合点がいったり、共感したり、ざわざわした気持ちに光が感じられるかなと思います。ぜひ語っていただけたら」と挨拶。MCから「注目してほしいシーンは?」と尋ねられると、石原は「情報提供を呼びかけるチラシの美羽の目に、画鋲が刺さっているのを見つけるシーンですね。すでに美術が整えられた状態で段取りをしたんですが、これを見て本当に苦しくなって、泣くシーンじゃなかったのですが涙が止まらなくなったんです。撮影が終わって戻ったら青木さんがいらっしゃって、『俺もあのチラシ見たよ』と」と語る。対する青木は「たまたまその場所を通りかかったときに見てしまって。演出するにもほどがあるだろうと思いました」と吉田の演出のすさまじさをたたえる。
中村は「飲み会でみんなが盛り上がっているときに、砂田が“マジレス”をして場が一瞬静かになるシーンです。台本を読んだときから“あるある”だなと思っていて、僕も同じようにマジレスモードに入って変な感じになることがあります(笑)。皆さんもあるんじゃないでしょうか? こういった共感できる部分が作品と観客を結び付けるポイントなんじゃないか」と回答した。石原が「中村さんもすごく鋭く冷静にツッコむときがありますよね」とうなずく。MCが「共通するような部分を感じて中村さんにキャスティングしたんですか?」と聞くと、吉田は「嗅覚はけっこう外さないんです。冷静に俯瞰して見ている砂田については、中村さんご本人もそういう感じですよね。青木さんも、カメラが回らないときでも“妻を支える旦那”という雰囲気で」と述べる。また青木が沙織里の弟・圭吾が映るカットに触れて「森(優作)くんの佇まいがすごいんです。とんでもないキャストを放り込んできましたよね」と言うと、中村は「監督は森くんが大好きなんですよ。かわいいかわいいって言って」と明かした。
吉田は「チラシを配っているときに女性が通りかかる場面」を注目してほしいと話し、「その女性はサボテンを持ってるんですよ(笑)。何か持たせようとなってサボテンにして。彼女の前で、石原さんが熱演をしていて……。悲しいシーンなんですが、モニタの前で笑うのを我慢していました」とエピソードを披露する。続けて吉田が「ガヤが騒いでいるシーンでもまったく石原さんはそちらを見たりせず、触れないまま演技しているのがすごいと思いました。人によっては『うるさいな』という感じで、ちらっと目線をやって戻す芝居を入れることもあるじゃないですか」と述べると、石原は「その遠くの声が沙織里の感情を逆撫でして、昂らせられて。自分の感情でいっぱいで、あちらが気になるようなことはなかったです」と回想。吉田から「(役に)取り憑かれてるんだね」と評されていた。
本作について吉田は「物事に折り合いを付ける話というより、折り合いを付けるのが無理な状況にいる人が、この先生きていくには何が必要なのかをテーマにしたいと思っていました」「このシチュエーションの場合、沙織里自身が自発的に変わらないと前に進めない。一番つらいはずの自分が他者のために行動することで、それが一周回って自分に返ってくる。そういうことが救いになるんじゃないかという願いを込めています」と述懐。そして石原は、先日家族で行った公園で、迷子になっていたほかの家の子供を一生懸命探した話をする。子供を探す母の鬼気迫る表情、自身も感じた焦りと恐怖、最後に子供が見つかって安堵の涙を流す母を見たと語り「沙織里を演じて、自分の財産となる、知らなければならない感情を知ることができました。撮影から1年以上経っても、沙織里の気持ちが私の中に住み続けています。どうか少しでも彼女の苦しさ、つらさが伝わったらいいなと思います。そして皆さんが、誰かに優しくて温かい言葉を掛けてくださるようなことが増えたらと心から願っています」と真摯な思いを観客に伝えた。
「ミッシング」は全国で公開中。
※吉田恵輔の吉はつちよしが正式表記
映画「ミッシング」予告編
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赤澤月光 @gekko_miki_a
【舞台挨拶レポート】「ミッシング」石原さとみはガヤにも動じず熱演、吉田恵輔が役への入れ込みよう称賛(撮り下ろし写真19枚) https://t.co/PBm1u8DNeg