「TBSレトロスペクティブ映画祭」のアフタートークが4月26日に東京・Morc阿佐ヶ谷で行われ、企画・プロデュースを担当したTBSの
TBSに収蔵された貴重なドキュメンタリーフィルムの数々をデジタル修復し、およそ60年の時を経て劇場公開する本映画祭。第1回目となる今回は歌人、劇作家、映画監督など多彩に活動した
寺山が構成を担当した「あなたは……」「日の丸」の上映後に行われた本イベント。大島は、道ゆく人に「日の丸の赤は何を意味していますか?」といった質問を矢継ぎ早に投げ続ける街頭インタビューの手法に触れ「インタビュアーの女性たちが気の毒で……。自分がやらされたらどうしようと、いたたまれなくなりながら観てました(笑)」と述べる。自身の監督作の中で「あなたは……」のインタビュアーに話を聞いた佐井は、「ディレクターの萩元晴彦さんからは『機械のようにインタビューしなさい』と言われていたそうです。また、普通のアナウンサーだと相手の反応との間にコミュニケーションが生まれてしまうんですが、これを排するために当時女子大生だった彼女を起用し、とにかく記録用紙のように質問を投げることで、相手に内的な変化を引き出そうとしたと言っていました」と語った。
本映画祭の上映作品である「中西太 背番号6」「サラブレッドーわが愛ー大障碍の記録ー」「勝敗 第一部・第二部」も観たという大島は、「面白かったです。寺山修司は勝負ものが好きで、そこから勝者と敗者の幸せに差はあるのかというところに焦点を移していく中で、『あなたは……』という(幸福論に関する)作品が生まれたのではないかと言っていましたよね」と佐井に話を振る。佐井は「寺山は1964年、65年はスポーツのエッセイを多く書いていて、そのあとに『幸福論』という本を出し、主宰した劇団・天井桟敷でアイデンティティについて言うようになっていく。彼の作家性の変遷が見えるなと思います」と述懐。続けて「寺山は“どれだけ想像をふくらませられるか”ということに価値を見出していた。『これが天皇』『これが国家』『これが幸せ』という、すでに存在する基準を無意識に信じ込んでしまうことが彼にとっての悪で、それをとにかく壊したかったんだと思うんですよね」と分析すると、大島は「でも想像力が人間を苦しめているところもあるんじゃないかな。幸福も人と比較してしまう、なんてことを(作品を観て)考えてしまいました」と話した。
1967年版の「日の丸」を、2022年に舞台を置き換えてリブートしたドキュメンタリー「
観客から「次回作は?」と質問を受けた佐井は、「準備中です。次は芸術系の人物ものをやりたくて、TBSのアーカイブを掘っております」と回答。また、ほかの観客からの「TBSのアーカイブがすごく興味深くて、もっと観たいです」という声に対しては「NHKとかだと『NHKアーカイブス』で過去の素晴らしいドキュメンタリーなんかを放送しているじゃないですか。同じような財産が民放局にもあるのでやっていきたいし、それが地上波の枠で成立しないのであればテレビというメディアを飛び出してスクリーンで向き合おうというのがこの映画祭なので、僕も心は同じです!」と笑顔で述べ、イベントを締めくくった。
「TBSレトロスペクティブ映画祭」はMorc阿佐ヶ谷ほか全国で順次開催。
「TBS レトロスペクティブ映画祭」予告編
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てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
佐井大紀&大島新、TBSレトロスペクティブ映画祭で寺山修司の思考の変遷たどる https://t.co/mGFlY6cSRE… https://t.co/5iyTFiIWcE