「莉の対」ロッテルダム映画祭でプレミア上映、田中稔彦が「この瞬間を夢に見ていた」

俳優・田中稔彦が初監督を務めた「莉の対（れいのつい）」が、現在開催中の第53回ロッテルダム国際映画祭でワールドプレミア上映を果たした。

東京と北海道を舞台とする本作は、出会うはずのなかった2人の男女を描く物語。自分の存在の希薄さを感じながら生きている光莉はある日、ふとしたきっかけで1枚の写真に心惹かれ、その写真を撮った風景写真家の真斗にポートレート写真の撮影を依頼。真斗が失聴者であることを知る。そして2人と周囲の人物たちの関係が少しずつ変化し、やがて脆く崩れていく。タイトルの「莉」は単独ではほとんど意味を持たず、ほかの言葉と結びつくことで初めて意味を持つ漢字だ。鈴木タカラ、大山真絵子、森山祥伍、池田彰夫、勝又啓太、田野真悠、菅野はな、内田竜次、築山万有美、永井なおき、舘若奈、和木亜央がキャストに名を連ねた。

濱口竜介の「悪は存在しない」や塚本晋也の「ほかげ」もラインナップされた本映画祭において、本作は邦画が選ばれることはまれであるとされるタイガーコンペティション部門に選出。全3回の一般上映はすべて完売となった。“チーム莉の対”はキャスト・スタッフ9名の大所帯で現地入りし、着物で日本らしさをアピール。キービジュアルのポストカードを観客に手渡すサービスも行った。上映後には拍手喝采となり、キャスト・スタッフも歓喜をあらわに。田中はTOEICで930点の成績を保持していることもあり、「プレミア上映をこの素晴らしい映画祭で迎えられることが非常にうれしく、この瞬間を長い間夢に見ていました。ここにいる皆さんと共有できることがとても幸せです」と流暢な英語で挨拶した。田中と鈴木が上映後に寄せたコメントは以下に掲載している。

※塚本晋也の塚は旧字体が正式表記

田中稔彦 コメント

エンドロールが流れている間、感動で身体がしびれる感覚がありました。
上映後のQ&Aセッションに向けて心の準備をしなければいけなかったので、それがなかったら正直泣いていたと思います。3年間、どれだけこの作品に時間を費やしてきたことかと振り返りつつ、協力してくださった方々のたくさんの笑顔や、仲間と共にした苦楽の日々が心に浮かび、その全ての想いが溢れ出すのを最後までグッと我慢しました。多くの方々から「Beautiful movie!」と言っていただけたことはとても嬉しい褒め言葉だと思っています。僕にとって最初で最高のワールドプレミアになりました。

鈴木タカラ コメント

演じたシーンがどのように編集されたのかと期待をしながら、完成した作品をようやく観ることができました。3時間超えの作品へのお客様の感想も気になりつつ、海外ならではのリアクションを上映中に感じられたのでとても新鮮でした。

映画「莉の対」予告編（インターナショナル版）