息子を惨殺された母が裁判で語る「ティル」新映像、ヒグチユウコのイラストも到着

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画家のヒグチユウコが手がけた、映画「ティル」のイラストが到着。著名人によるコメントと本編映像の一部も公開された。

ヒグチユウコによるイラスト。

ヒグチユウコによるイラスト。

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「ティル」ポスタービジュアル

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1955年にアメリカで起きたエメット・ティル殺害事件をもとにした本作。同事件は、アフリカ系アメリカ人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなった。「ティル」の主人公は空軍で唯一の黒人女性職員として働くメイミー・ティル。彼女は一人息子で14歳のエメットと平穏な日々を送っていたが、エメットが親戚宅のあるミシシッピ州マネーを訪れた際、白人女性に向けて“口笛を吹いた”ことで白人の怒りを買ってしまう。壮絶なリンチを受けた末に殺されたエメット。変わり果てた息子と対面したメイミーは、陰惨な事件を世に知らしめるため、ある大胆な行動を起こす。メイミーをダニエル・デッドワイラーが演じた。

「ティル」場面写真

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ヒグチは「作品を観た後どの場面を描こうか…と思った時に選んだのは愛する息子を目にした最後の瞬間です。彼女の名演技はもっと評価されるべきだと思う」とコメント。バンドGacharic Spinのメンバーであるアンジェリーナ1/3は「そもそも人1人の命の価値に違いがあるわけがない。この映画を観た方々が小さくてもいい、愛を持って自分を大切に相手を大切にできるような世界でありますように」と願いを込めた。そのほかの著名人のコメントは下記の通り。

またYouTubeで公開された本編映像には、エメットの死後、メイミーが裁判に出席する様子を収録。「エメットには旅行中の振る舞いの注意はしましたか?」と問われたメイミーは「白人との間に何か問題が起きたとしてひざまずく必要がある状況になったら躊躇なくやりなさい」と伝えたことを明かしつつ、「でも……14年間も“愛情”で育ててきたので“憎しみ”の注意が伝わりませんでした」と述べ、やりきれない表情を見せる。

シノニエ・チュクウが監督を務めた「ティル」は、12月15日に東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

映画「ティル」本編映像

アンジェリーナ1/3(Gacharic Spin)コメント

人が人として生きていくために国を超えて人種を超えて大切な事が詰まっている映画。
そもそも人1人の命の価値に違いがあるわけがない。
この映画を観た方々が小さくてもいい、愛を持って自分を大切に相手を大切にできるような世界でありますように。

ISO(ライター)コメント

「闇では闇を追い払えない 光だけがそれを可能にする
憎しみでは憎しみを追い払えない 愛だけがそれを可能にする」

キング牧師のこの言葉を一人の母の物語が立証する。
息子の尊厳と正義のために社会と対峙したメイミーの勇姿は、公民権運動を加速させ未来を変えた。その真実を映すこのフィルムは、世界に蔓延る憎悪に立ち向かうただ一つの方法を教えてくれる。

伊藤なつみ(音楽ジャーナリスト)コメント

母親メイミーが自分の見た息子の姿を世に知らしめようと決意し、悲しみから正義のために立ち上がる。意志の強さが増すほどに美しさも増していくその姿は、多くの女性にとってまさにエンパワーメントそのもの。事実を目にすることが増えても、見るばかりでは何も変わらないという絶望にも直面している今、前に踏み出そうとする人々に勇気を与えてくれる映画である。

奥浜レイラ(映画・音楽パーソナリティ)コメント

レイシズムの理不尽さ、惨さを逃げずにとらえ白日の下にさらす。劇中の「見ないと」というセリフはそのまま私たちに返ってくる。この物語は限られた個人に起きた悲劇ではなく、構造的な差別の末路である。つまり私たちも無関係ではない。互いに敬意を持つには、まずは事実を正しく知ることだ。こんなことはもう終わりにしたい。

辛酸なめ子(マンガ家)コメント

差別されても誇り高く生きようとする姿が胸を打ちます。母の愛の力、そしてファッションの力にも感動する名作です。

辻愛沙子(クリエイティブディレクター)コメント

1955年に起こった衝撃的な事件。同じ人間の尊い命が、肌の色が違うというだけでいとも簡単に奪われ、正当化された当時の社会。そこから70年が経ち、現代を生きる私たちは一体何を学び変えてこれたのだろうか。たったひとりの声で、時代が、社会が、動き出す。声を上げることの意味を、強く考えさせてくれる物語。

堂本かおる(ニューヨーク・ハーレム在住フリーランスライター)コメント

1955年。14歳の黒人少年エメット・ティルが惨殺された。BLM(ブラック・ライブス・マター)という言葉さえなかった時代に母メイミーは独りで立ち上がり、黒人の命の尊さをアメリカに教えた。

新田啓子(立教大学教授)コメント

想像を絶する悪意に無邪気な息子を奪われた母。損傷し膨れあがった遺体に語らせ、母は少年の時間を再生させる。死の不安に満ちた時間から、生を愛しむための時間へと。我々の時間? レイシズムは文化だと言い訳するのはやめないと。人種差別は歴史の所産? だから仕方がないとは言わせないのがティルの時間──我々の時間。

ヒグチユウコ(画家)コメント

作品を観た後どの場面を描こうか…と思った時に選んだのは愛する息子を目にした最後の瞬間です。彼女の名演技はもっと評価されるべきだと思う。

ピーター・バラカン(ブロードキャスター)コメント

長年続いたアメリカの人種分離体制。多くのアフリカン・アメリカンが無力だった中で、特におぞましい事件で息子を奪われた一人の母親が立ち上がるその実話は我々全員に対して、社会の一員としてやるべきことを問うています。

藤永康政(昭和女子大学教授)コメント

映画「ティル」は、残忍な殺人事件の話ではなく、レイシズムに決死の覚悟で挑みかかる黒人たちの姿を描いたドラマです。その姿は人びとの心を揺さぶり、映画の終わりには救われた感覚が残るはずです。

松尾潔(音楽プロデューサー・作家)コメント

白人女性に向けて口笛を吹いたかどで、黒人少年が白人集団に殺される。重すぎる「不敬罪」である。自分なら口笛は吹かない、自分なら殺さない……穏当だが、それでは不敬罪も差別もなくならない。「声を上げる」は生き方。「ダンマリ」は世渡り。小ざかしい静観がはびこる社会では、理不尽はいつまでも残る。踏まれても蹴られても、折れない言葉と行動が世界を変える。

この記事の画像・動画(全12件)

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読者の反応

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アンジェリーナ1/3 @Angelina__gs

映画『ティル』について
コメントさせていただきました。

1人でも多くの方がこの作品に
触れてくださることを祈ります。

https://t.co/PTGJzNs4bj

コメントを読む(4件)

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