「VORTEX」ギャスパー・ノエは観客に泣いてほしい、塚本晋也はアルジェントの演技を称賛

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VORTEX ヴォルテックス」の先行プレミア上映が本日11月14日に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開催され、監督のギャスパー・ノエ、ノエと親交の深い映画監督・塚本晋也が登壇した。

「VORTEX ヴォルテックス」の先行プレミア上映イベントの様子。左からギャスパー・ノエ、塚本晋也。

「VORTEX ヴォルテックス」の先行プレミア上映イベントの様子。左からギャスパー・ノエ、塚本晋也。

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本作は、人はどのように死んでいくのかという誰もが目を背けたくなる現実を、真正面から冷徹に見つめた作品。画面を分割するスプリットスクリーンによって、老夫婦の日々が2つの視点から同時進行で映し出されていく。「サスペリア」を手がけたダリオ・アルジェントが映画評論家の夫を演じ、「ママと娼婦」のフランソワーズ・ルブランが元精神科医で認知症を患う妻に扮した。

ギャスパー・ノエ

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まずノエは「今回の映画はこれまでのようにセックス・麻薬・暴力をテーマにしていない、センチメンタルな作品です。皆さんに泣いていただきたいと思います」と冗談めいた口調で挨拶。制作を回想し「小規模な撮影チームで、登場人物が2、3人の映画を作らないかと話をもらったのが始まりでした。老夫婦がいて、妻はアルツハイマーを患っている。息子は何の役にも立たないという家族の設定です。2週間くらいで撮影場所のアパルトマンを見つけました。それで2021年2月にシナリオを書き、3月に撮影、4月5月で編集、7月初旬にカンヌ国際映画祭で上映しました。猛スピードでできた映画なんです。2021年当時はコロナの影響で外出禁止になっていて、パリの通りには誰もいない状況。『コロナに感染したくない』とみんな怖がっていて、撮影中も緊張感があったので、独特な雰囲気で撮影が進みました」と語った。さらにノエは「今までとは違い、今回は非常に真面目な作品になっています。撮影ではシーンのシチュエーションを説明し、あとの会話はすべてアドリブにしました。ダリオさんもほかの方もみんなアドリブなので、ドキュメンタリーに近いような感覚です」と付け加える。

塚本晋也

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イベント途中で登場した塚本は、「1992年にフランスのアヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭でギャスパーと出会いました。お互い自己紹介をして『僕の映画を観に来て』と言われて観たのが『カルネ』。素晴らしい映画で、度肝を抜かれました。それから映画祭に行くたびにギャスパーに会って親睦を深めて、いろんな経験をさせてもらいました」と振り返る。「VORTEX ヴォルテックス」の感想を尋ねられると「本当に絶句するような映画。僕は母と父を10年ほど前に亡くしているのですが、そのときの感じが生々しくよみがえってきます。かなりハードな映画なんです、はっきり言って。ただ、歯ぎしりするような深い愛情も感じました」と丁寧に言葉を紡ぐ。対するノエは「(塚本の)最新作の『ほかげ』も私の『VORTEX ヴォルテックス』も、それぞれの歴代作でもっとも真面目な作品になっているのではないでしょうか。ホラージャンルではないけど、心理的・現実的なホラー要素がある作品だと思います」と話した。

左からギャスパー・ノエ、塚本晋也。

左からギャスパー・ノエ、塚本晋也。[拡大]

また、MCから「塚本監督を主演にした映画を作るつもりはありますか?」と聞かれたノエは「マーティン・スコセッシの『沈黙-サイレンス-』で彼が演じているパートが大好きなんです。スコセッシの映画で十字架に縛り付けられた俳優の中で、最高の俳優だと思います(笑)。もし将来日本で映画を作ることになったら、ぜひ晋也さんに出演していただきたいです」と展望を述べる。続けて、アルジェントのキャスティング意図を尋ねられると「彼は非常にフレンドリーな人で、カメラにも慣れています。私の父と似て身ぶり手ぶりが大きいところが好きなんです。最初にキャスティングを考えたとき、彼しか考え付かなかった。彼のお嬢さんのおかげで承諾していただけました。『暴力もセックスシーンもないので安心してください』とお伝えしましたよ」と答えた。

「VORTEX ヴォルテックス」場面写真

「VORTEX ヴォルテックス」場面写真[拡大]

アルジェント作品が大好きという塚本が「『シャドー』を若いときに観て、映画はこんなに自由でいいんだと思わされて。『鉄男』を作るときにも影響を受けました。今作のアルジェントの演技があまりに素晴らしいのでびっくりしました」と話すと、ノエは「シナリオが短く、台本に会話のセリフが書かれていないという点でオファーを承諾しやすかったでしょうね。ダリオさんに『役の人物像を作ってくれ』と話したら『じゃあ浮気してもいいかな?』とおっしゃったので、ガールフレンドがいる設定にして。非常に少ない人数で作ったので、衣装係の人が彼の恋人役になったんです(笑)。彼と一緒に作り上げたという印象が強いですね。彼は映画界のロックスターのようで、カリスマ性のある方です」とたたえる。

最後にノエは「この先行上映が終わったあと、ここにいる皆さん全員が泣いていることを祈っています。泣かない人が何人かいたら失敗作になりますからね」とジョークを飛ばしてイベントを締めた。

「VORTEX ヴォルテックス」は12月8日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

※塚本晋也の塚は旧字体が正式表記

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(c)2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA

「VORTEX ヴォルテックス」30秒予告

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