ジャニーズが性加害の事実認定、永続的な被害者救済を明言 メディアの忖度は「必要ない」

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ジャニーズ事務所が本日9月7日、創業者で数々のタレントをプロデュースした前社長の故・ジャニー喜多川による性加害問題をめぐる会見を東京都内で開催。8月29日に公表された「外部専門家による再発防止特別チーム」による調査と提言を受け、ジャニーによる性加害の事実を認定した。代表取締役社長を務めていた藤島ジュリー景子は9月5日付けで引責辞任し、所属タレントで俳優の東山紀之が新社長に就任。10月1日から経営を刷新した新体制を始動させ、東山は年内をもってタレント業を引退することを発表した。

ジャニーズ事務所の記者会見の様子。左から井ノ原快彦、東山紀之、藤島ジュリー景子、木目田裕。

ジャニーズ事務所の記者会見の様子。左から井ノ原快彦、東山紀之、藤島ジュリー景子、木目田裕。

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左から井ノ原快彦、東山紀之、藤島ジュリー景子、木目田裕。

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会見には藤島と東山のほか、事務所の所属タレントでジャニーズJr.を育成するジャニーズアイランドの社長を務める井ノ原快彦、事務所の顧問弁護士を務める木目田裕が出席。4時間を超える会見の中で、被害者の救済や新体制について、性加害を長年にわたって野放しにした事務所の問題点、マスメディアの沈黙に対する見解などを語った。

藤島ジュリー景子「ジャニー喜多川に性加害はあった」

調査報告書(公表版)表紙(ジャニーズ事務所公式サイトより)

調査報告書(公表版)表紙(ジャニーズ事務所公式サイトより)[拡大]

特別チームは8月29日に調査結果を公表し、ジャニーが、古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実を断定。藤島は事務所および個人の立場として「ジャニー喜多川に性加害はあった」と事実を認めたうえで「被害者の方に心よりお詫び申し上げます。またファンの皆様、お取引先の皆様、そして今回の件でご不快に思われたすべての方々にお詫び申し上げます」と謝罪した。5月14日時点で発表した見解では、ジャニーによる性加害について「知らなかったでは決して済まされない話だと思っておりますが、知りませんでした」と書面で回答していた藤島。その点については「あの時点では当事者も亡くなっていたので、私が事実認定をすることに至らなかった。その時点で十分な調査ができず大変申し訳なかったと思っております。これだけ多くの方が声を上げられる中で、それは事実だと認識しております」と話した。

被害者の救済措置は「できるだけ速やかに」設置

藤島は社長は辞任するものの、被害者への保証を責任を持ってまっとうすることを理由に当面の間は代表取締役には残留。性加害の被害者が集う「当事者の会」も進言し、特別チームが提言した金銭的賠償を含む救済措置については、提言に従って委員会の枠組みを構築し、永続的に行っていくことを約束した。藤島は自身の今後を「被害者の方々への保証・救済。そして所属するタレントとJr.の皆さんの心のケア以外での業務執行には関わりません」と説明。具体的な設置時期については明言を避けたが、弁護士の木目田は「できるだけ速やかに」とし、決まった際は何かしら適切な形で発表すると述べた。

藤島ジュリー景子

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藤島が100%株主として代表取締役に残留することが、抜本的な改革につながらないのではないか?と問われると「代表取締役として保証について議論していく立場であるほうが、いろいろなことを決めていくうえで、事務所の中でよいと判断しました。今後、保証が速やかに進めば、代表取締役から降りることも考えております。株についても同じくで、現時点では私が100%持っていると保証を進めやすい。ただ同族経営が問題であるという指摘もいただいており、どういう形にしていくかは新体制の皆様と相談して協議していきたい」「今すぐ株をどうできるかは簡単な問題ではなく、この場ですぐ具体的な返答はできないですが、将来的には皆様と相談して、いろいろな可能性を考えていきたい」と弁解した。

新社長の東山紀之「人生をかけてこの問題に取り組んでいく覚悟」

東山もジャニーによる性加害を認めたうえで「被害に遭われた方々、長きにわたり、心身ともにつらい思いをさせたことを本当に申し訳なく思います」と謝罪。年内をもって表舞台から退くことを決めたうえで社長に就任した。「今後は人生をかけてこの問題に取り組んでいく覚悟であります」「被害者の方々の救済・保証に誠心誠意取り組ませていただくことがすべての出発点であると考えております」と話した。また提言を踏まえて、外部からチーフコンプライアンスオフィサーを招聘し、人権侵害防止のための体制を整備し、再発防止に努めることを約束した。

東山紀之

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一方で、一部報道や書籍で自身のハラスメント行為を指摘されている東山は、社長としての適性を問われ「直接指摘を受けたことはありませんが、誤解を招くような行為はあった。思い出せない点も多々ある。自分を律し、対話を続け、そういう問題が起きないようにしていくことが使命と考えております」と回答し、自身の性加害の疑惑については否定。さらに「エンタテインメントは甘い世界ではないので、特に舞台に立つには、信念と覚悟、努力、力量が必要。そういった面で厳しかったことはある。それがハラスメントという意識はなかった。大人になって振り返ると、今の時代とはだいぶ差がある。それを反省し、そのうえでみんなとともに歩んでいきたい」と話した。

東山は性加害が起こり、それが放置されていた問題の背景として、ジャニーと経営面を取り仕切った姉である故・メリー喜多川(藤島メリー泰子)の2人が、すべての決定権を握る独裁体制があったことを認識。事務所が果たしてしまった役割と責任を追求され「喜多川氏と藤島氏(メリー)の絶対的な存在を正しいと信じていた。それを今は恥じています。エンタテインメントの世界において、絶対的な存在がいると、下の者たちは、それを信じて行動していかなければならない状況がある。それが被害を生んだ。下からの意見を上げられない状況があった」と答える。さらに当時の自身の立場を「恥ずかしながら何もできず、なんの行動もしておりませんでした。ただ、うわさとしては(性加害を)認識しておりました。自分自身は被害を受けたこともなく、受けている現場に立ち会ったこともない。先輩や後輩からの相談もなかった。自ら行動することはできなかった」と省みながら、「喜多川氏とそれを隠蔽した藤島氏(メリー)。あのお二人には父のような、母のような思いを感じていましたから、(性加害の事実が)あってほしくないという思いがありました。ただ仕事をしていく中で、そういうことも忘れていく。その繰り返しでした。その間も被害者の方はトラウマに苦しみ、心身ともに不調を訴えていた。今後は救済し、保証し、ともに携えて歩んでいくべきだと思っています」と続けた。

井ノ原快彦「触れてはいけない空気があった」

井ノ原快彦

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井ノ原は、かつてジャニーズJr.だった立場から「当時から(暴露)本は出ていて、仲間たちでも、うわさはしていました。『そうなったらどうしよう?』とも話してました。ただ被害に遭われた方が相談できない空気もあったと思います」「言い訳になるかもしれませんが、なんだかえたいのしれない。それには触れてはいけない空気はありました」と当時を回想。現在はジャニーズJr.を育成する立場として「僕は性加害をしませんが、権力を持ってしまうことはあり得る話。そこはすごく気を付けています。オーディションではどういう子に実力があるのか、これからどうなっていくのか、いろんな大人たちの目で見る。今後は親御さんも不安にならないように話し合いをしていきたい。僕や僕の部下が権力を持ってしまわない仕組みを考えていかなければらない、そのことは常日頃から話し合っています」とも明かした。

現時点では「ジャニーズ」の名称は継続

会見では、ジャニーの名前を冠した事務所の名称に関して、現時点では変更しないことを明言。東山は「大変議論しました。どうすべきなのか。これだけの犯罪ですから。これを引き続き名乗るべきなのか。いろんな解釈がありました。ジャニーズというのは創業者の名前であり、初代グループの名前でもある。何より大事なのは、これまで数多くのタレントが培ってきたエネルギーやプライド。その表現の1つとして(残しても)いいのではないかと思っています」と変更しない理由を説明。そのうえで「ジャニーズ」の名前を存続させるという対応の甘さを指摘されると、東山は「提言を受けてからの短期間で何ができるのか?と探っている状態です。大変な事件で、この道のりはとても長い。まずはその一歩を踏み出さないといけない。現実的に、すぐに答えを出すのが難しい。今日の会見を行って初めて見えることもあると思います。何が正しいのか探りながら、踏み出していきたい」と話す。会見の終盤には、現在の所属タレントの思いを汲んだうえで、今後、名称を変更することも検討課題の1つであると語っていた。

メディアの忖度は「必要ない」

ジャニーズ事務所の記者会見の様子。

ジャニーズ事務所の記者会見の様子。[拡大]

特別チームは所属タレントの番組出演や雑誌掲載などへの影響を懸念し、性加害など事務所に不都合な事実の報道を控えてきた「マスメディアの沈黙」の問題も指摘していた。今回、主に取材対応などの宣伝業務を担っていた副社長の白波瀬傑が引責辞任したことも明らかに。会見に出席しなかったものの、記者からは白波瀬の責任を問う声も多く上がった。事務所として、現在はメディアコントロールの事実はないとしたうえで、過去にメリーが強権的な手腕でメディア側に自社タレントを出演させないなどの圧力をかけていたことがうわさレベルであったことは認識。特にテレビ局はドラマやバラエティ、情報番組、映画など数多のコンテンツで横断的にジャニーズ事務所と密接に関わっていることから、事務所に対する過剰な忖度があったと見られる。

東山は「今後はメディアとの対話が必要。深いところはわかりませんが、おそらくうちの事務所がすべて悪い。そう思わせてしまった、そう感じさせてしまった。僕自身が社長になることで対話を深めていきたい」と吐露。現在の忖度状況について「必要ないと思っています」「これまでは本音でお話しすることもできなかった。メディアの方にはメディアで考えていただき、その意見を伺いたい」「今後はどのような関係性を築くのかが大事。皆さんとお話しして、どういう関係性を作っていくかが課題です」と強調した。

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