近未来の日本を舞台に、75歳以上の高齢者に死を選ぶ権利を保障し支援する制度“プラン 75”に人々が翻弄されるさまを描いた本作。倍賞がホテルの客室清掃員・角谷ミチを演じ、磯村はプラン 75の加入促進の窓口を担当する市役所職員・ヒロム、アリアンは同じくプラン 75に携わる職員・マリアに扮した。また本作はカンヌ国際映画祭では「ある視点」部門に出品された。
カンヌ国際映画祭には思い入れがあるため参加を熱望し、2泊4日のスケジュールで現地入りを果たした磯村。フォトコールに登場すると、海外メディアからの大きな声援とともに、世界各国から集まった100台以上のカメラのフラッシュが一斉にたかれ、「イソムラーー!!」のコールが巻き起こった。
公式上映終了後には、場内の観客は5分以上にわたりスタンディングオベーション。感激した観客が早川に駆け寄り、「素晴らしい映画だった」とハグする姿も見られた。日本メディア向けの記者会見で早川は「今回上映していただいたドビュッシー劇場は音の環境がいいと聞いていたのですが、初めて大きなスクリーンで素晴らしい音響の中で上映していただき、それに立ち会うことができてとても感無量です」と感慨深げに振り返る。また磯村は「世界の人たちと一緒に映画を観ることが初めてだったのですごく光栄でした。観客の反応を見ながら映画を観ていたので少し緊張もしましたが、非常にいい経験をさせてもらえたと思います」と感謝の言葉を述べ、アリアンも「多くの方々が心を込めて作った作品でカンヌ国際映画祭に参加できたことに大変感謝しています」と伝えた。
映画祭に参加できなかった倍賞への思いを問われた早川は「すぐにでも電話をして声を聞きたいですね。上映中も、撮影時の倍賞さんのことを思い出しながら観ていました。ミチを演じていただき、ありがとうございますという思いでいっぱいです」「倍賞さんからは『(カンヌは)若い人たちに任せたからがんばってきて!』とおっしゃっていただいたんです」と笑顔で語った。続いて磯村は倍賞について「共演シーンは少なかったのですが、目が魅力的でした。役を超えて、倍賞さんが今まで生きてこられたすべてがミチという役に投影されているように感じるほど、とても自然体で、醸し出す空気が人生を物語っていました」と尊敬の念を語った。
本作が海外から高く評価されている理由を尋ねられた早川は「人間の生と死、どう生きるか死ぬかや尊厳については普遍的な問題だと思います。特にコロナ禍になってからは世界中でより多くの人が、どうやって生きるのか、人間の尊厳を保っていくのかと考えるようになったのではないでしょうか」と分析。若い世代として、高齢化社会への危機感を持っているのかと質問を受けた磯村は「作品のオファーをいただく前から、現代の社会問題の1つとして高齢化問題については考えていました。若い人たちだけに責任が押し付けられてしまわないか、一生懸命働いても負担が減らないのではないかと常々、解決策がないかと思っていました」と明かし、その感情を役に込めたという。
また磯村は、本作が長編映画デビュー作となる早川の印象について「演出が丁寧で俳優に寄り添ってくれる方。俳優のアクティングスペースに入って、監督自身が実際に動作を見せてくれ、時にはディスカッションを交わしながらの撮影でした。安心して信頼できる現場だったと思います」と振り返り、アリアンも「監督が何を求めているのかをはっきりと言ってくれ、私の意見もしっかりと聞いてくださったので、とてもやりやすかったです。また、私の母国であるフィリピンの文化に対して、リスペクトを持って描いてくれたことにも感謝しています」と感謝の念を明かした。
最後に、カンヌ国際映画祭に参加したいという長年の夢が叶った磯村は「カンヌに来て、映画を愛している人たちが世界にはこんなにもたくさんいるんだなと改めて感じることができました。そういう方々を見て、もっと自分もがんばれると思えましたし、これからも映画に対して愛を持って取り組んでいきたいと思いました」と今後の俳優人生への決意をにじませ、会見を締めくくった。
「PLAN 75」は、6月17日より東京・新宿ピカデリーほか全国でロードショー。
磯村勇斗の映画作品
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本当におめでとうございます㊗
磯村勇斗の長年の夢叶う、「PLAN 75」でカンヌ国際映画祭に監督らと参加
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