日本の映画・ドラマの第一線で活躍する5人の俳優たちが、同条件の予算や撮影日数で25分以内のショートフィルムを監督する「アクターズ・ショート・フィルム」。映画ナタリーでは永山瑛太の「ありがとう」、玉城ティナの「物語」、青柳翔の「いくえにも。」、千葉雄大の「あんた」に続いて、前田組の現場の模様をお届けする。「理解される体力」は小さな喫茶店を舞台に、とある女性の怒りと食欲の奔流を描く会話劇。大声で泣きながら巨大パフェをむさぼるキエ、そんなキエを古い友人ならではの冷めた距離感で優しく見守るユミのひとときが紡がれる。
撮影は2021年11月上旬、東京・表参道の小さな路地にある老舗カフェを借り切って行われた。天井も低く、迷路のように入り組んだ空間は屋根裏部屋のような隠れ家的雰囲気。長年のたばこの煙で黄ばんだ石造りの壁と、天井からむき出しの大きな梁が老舗ならではの空気を醸す。キエとユミが座るのは、壁紙の一方をモノクロ写真が覆う店内でもっとも広い一角。芝居の段取りが始まると、最初は椅子に座っていた前田が降りて、テーブルより低い位置から2人を見上げる。かと思えば、おもむろに立ち上がって徐々にテーブルから離れ2人の芝居を遠目で見つめるなど、さまざまなアングルと距離感を探った。
柳演じるキエと三浦演じるユミという2人の女性の友情が軸となる本作。10年来の友人である柳を起用した前田は「親友の柳英里紗を主演にしたいと思っていたので、普段の彼女の魅力を存分に発揮できるような題材にしたかった」と明かす。前田は初監督にあたり、かねてからファンだった劇作家、演出家の
撮影はキエがショートケーキの丸ごと乗った巨大パフェを号泣しながら頬張るカットから始まった。テーブルには落ちたフルーツが散乱。柳の目は涙で赤く、口の回りはクリームだらけ。キエはお世辞にもきれいとは言えない食べ方でケーキや大量の果物を口に詰め込みながら、わんわんと泣く。最初のテイクが終わると、前田は「すごくかわいい。でも、もっとめちゃくちゃで始まりたい。もう1回いけたりする?」とリクエスト。自ら泣き方を演じて見せつつ「興奮してるけど、食べながら泣いてるうちに、だんだんと落ち着いてくる」とキエの感情の流れを説明する。
柳は大量のパフェを一気にかき込む大変なカットに再度挑戦。テイク2で前田が「OK、かわいかった!」と納得の表情を見せ、柳も「監督が褒めてくれるからうれしい」と笑みをこぼした。キエを描くうえで「女の子にはかわいく映ってほしい」という思いを強く抱いていたという前田。現場での心構えを「英里紗がかわいく映るように意識しています。キエの表情がしっかり映る作品なので、彼女の演技に迷いがあると感じたときは、英里紗と一緒にどう演じたらいいのかを考えました」と話す。
前田と柳の共通の友人でもある三浦は、ユミという女性の役に挑戦。女装ではなく女性のユミを男性の三浦が演じるのは、柳のアイデアだったそう。柳は「その提案を取り入れる前田監督はとても魅力的で、日本映画界に必要な人材だと感じます。三浦貴大くんの女性としての所在の秀逸さを楽しんでいただければと思います」とアピール。三浦は性別の違いに多少のハードルを感じつつも「特にそれを意識せずに当たり前のようにキエの古くからの友人としてそこにいる、というなんとも難解で面白みの詰まった役でした」と回想した。撮影にはすね毛を剃って臨んだが、足下が映る機会はなかったことも教えてくれた彼は「不思議な世界に迷い込んだかのような感覚と、心地のよい違和感との調和をこの作品でぜひお楽しみください」と述べた。
完成を迎え「全体を通してすごく楽しかった」と振り返る前田は「キャスト・スタッフの皆様に助けていただき形にすることができました。監督らしいことはそんなにしていないような気もします(笑)。でも、やりたいことはすべてできたと思うので、とてもすっきりした気持ちです」と充実の表情を浮かべ、「一緒に笑ってくれたら一番幸せですし、『前田敦子ってこういう作品を撮るんだ』という意外性を楽しんでくれたらうれしいです」と期待を込めた。
アクターズ・ショート・フィルム2
WOWOWプライム、WOWOW 4K、WOWOWオンデマンド 2022年2月6日(日)17:00~放送・配信
※動画は現在非公開です。
関連する特集・インタビュー
映画ナタリー @eiga_natalie
【制作現場レポート】前田敦子が親友・柳英里紗を主演に迎え初監督に挑戦「意外性を楽しんで」
https://t.co/kHkmKatyIg
#アクターズ・ショート・フィルム2 #理解される体力 #前田敦子 #柳英里紗 #三浦貴大 #野間口徹 https://t.co/010F0eytta