「アクターズ・ショート・フィルム」特集|俳優が短編映画を監督!磯村勇斗、柄本佑、白石隼也、津田健次郎、森山未來が参加したWOWOW開局30周年記念プロジェクト幕開け

WOWOWが開局30周年を記念して、5人の俳優と短編映画を制作! 磯村勇斗、柄本佑、白石隼也、津田健次郎、森山未來が参加した「アクターズ・ショート・フィルム」の配信が、1月13日にWOWOWオンデマンドでスタートした。1月23日よりWOWOWプライムでも放送される。映画ナタリーでは各々が個性を爆発させた各作品の見どころを紹介。5人が一堂に会した座談会の模様もお届けする。

文 / 奥富敏晴

本気で面白いショートフィルムを!目指すは国際短編映画祭のグランプリ

商業や自主の形態を問わず、俳優が監督を務める機会が増えている日本映画界。池田エライザ、斎藤工、菅田将暉、染谷将太、のん、若葉竜也など若手俳優が積極的に作品を発表している。2021年、開局30周年を迎えるWOWOWは5人の俳優とショートフィルムプロジェクトを発足。映画・ドラマの第一線で活躍する磯村勇斗、柄本佑、白石隼也、津田健次郎、森山未來に映画制作の場を提供した。制作上のルールは以下の4つ。

  • 「尺は25分以内」
  • 「予算は全作共通」
  • 「原作物はなし」
  • 「監督本人の出演」

注目したいのは、意外にも今回の企画で誰1人として監督デビューを果たした人物がいないこと。5人はそれぞれ自主制作の短編映画やドラマ、ドキュメンタリーなどを過去に手がけており、今回の監督業が初めてではない。すでに監督経験のある俳優にオファーしていることからも、“映画のWOWOW”が本気で面白いショートフィルムを作ろうとしていることがうかがえる。

5本のうち視聴者や審査員の投票によって選ばれた1本は、2021年のショートショート フィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)へ正式出品。20年以上の歴史を誇る米アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭でのグランプリを目指す。

※視聴者投票は「アクターズ・ショート・フィルム」公式サイトで受付中。2月14日までに集まった票を集計し5作品の中で1位を決定する。

個性爆発!俳優が生み出した短編5本

磯村勇斗「機械仕掛けの君」

生粋のジャンル映画好きが描く近未来ディストピアSF

磯村勇斗は学生時代に自主映画を制作していた映画好き。特にゾンビ映画のファンとしてイベントに登壇する機会も多く、ジョージ・A・ロメロを深く敬愛している。そんな磯村が手がけたのは、5本の中でもっともジャンル映画の匂いを漂わせるSF「機械仕掛けの君」。企業が人間とそっくりな新型アンドロイドの雇用を拡大するため、法改正を急ぐ近未来のディストピアを舞台とした作品だ。労働環境の悪化と失業者の増加を懸念する人々が激しい反対運動を繰り広げる中、ある秘密を抱えた兄弟と旧式アンドロイドの少年のはかない友情を描く。脚本を手がけたのは、劇団・地下空港を主宰する伊藤靖朗。泉澤祐希がAI技術者という立場でありながら、反対運動に身を投じる主人公・伊賀照康を演じた。

柄本佑「夜明け」

18年越しの映画化!「正義」にこだわる下北沢の男

俳優一家に生まれ、幼い頃から映画漬けの毎日を送ってきた柄本佑。俳優として多方面で活躍するかたわら、「ムーンライト下落合」などの自主制作の短編も多数発表している。本企画では16歳のときに書いた脚本を18年越しに映画化。「夜明け」の舞台に選んだのは、自身が知り尽くした地元の下北沢だ。主演は、下北沢にほど近い代々木上原の音楽一家に生まれ育った森山直太朗という宿命的な組み合わせ。職なし、金なし、女なし、それでも「正義」にだけはこだわる庶民派ヒーロー・田中が、穴の空いたスーツで下北沢の街を奔走するさまを描く。撮影では「とにかくシンプルに自分の欲望と向き合っていた」という柄本が描く現代のヒーローとは。田中の夜明けは近い。

白石隼也「そそがれ」

少年時代の淡い甘美な記憶と罪の意識

2012年「仮面ライダーウィザード」の主演で一躍脚光を浴びてから、映画・ドラマ・舞台など幅広く活躍する白石隼也。過去に映画コラムを連載していたほどの映画好きとして知られる白石は、2016年に監督業初挑戦。主演を務めたドラマ「グッドモーニング・コール」のスピンオフで監督、脚本、出演の3役をこなした。自ら脚本も手がけた「そそがれ」は、ある男の少年時代の甘美な記憶と罪の意識を巡る1編だ。主な舞台は、吉村界人演じる主人公が、幼い頃に通っていた絵画教室。彼の脳裏によぎるのは、白いワンピースが似合う美しい先生の包み込むような繊細な筆遣い。神野三鈴が匂い立つような色香を漂わせる先生役に。ある秘密を共有した2人のみずみずしいひと夏を描く。

津田健次郎「GET SET GO」

死ぬまで生きろ!自殺を図った男が直面する異様な世界

ハリウッド大作からアート映画まで片っぱしから観ていくタイプの映画青年だったという津田健次郎。映画監督を志し明治大学で演劇を学んでから舞台役者の道へ進み、現在はアニメやゲーム、吹替、ナレーターなど声優としても幅広く活躍している。監督業には2019年公開の「ドキュメンターテイメント AD-LIVE」で初挑戦を果たした。竜星涼と大東駿介がダブル主演を務めた「GET SET GO」で描かれるのは、命を娯楽として消費するロシアンルーレット賭博の世界だ。ビルから飛び降り自殺を図った男・慶(竜星)と、それを引き止めたホームレスの隼人(大東)。生きる理由が見つからない男と金さえもらえればいい男が、拳銃の引き金を引いた先で見たものとは。津田自ら脚本も執筆した。

森山未來「in-side-out」

人間の想像力が試される、引きこもりの妄想と過剰な自意識

幼少期からダンサーとして活動しながら、俳優として映画・ドラマの第一線で活躍する森山未來。演劇、映像、パフォーミングアーツなどジャンルに縛られない表現者として唯一無二の存在感を発揮している。2019年には自身初の自主制作映画「Delivery Health」で監督・主演。監督2作目「in-side-out」では、20年来の親友という永山瑛太を主演に迎え、引きこもり生活が長い男の妄想と過剰な自意識を描いた。脳内にあふれる言葉をモノローグとして響かせながら、狭いワンルームに暮らす男のルーティーンを追う。男が寝ているのは万年床か森の中か、人間の想像力が現実をひっくり返す不可思議な1編。脚本はハイバイの岩井秀人、音楽は岩崎太整、振り付けは黒田育世という豪華布陣。

アクターズ・ショート・フィルムの軌跡

映画の制作過程に密着した特別番組もオンエア! 俳優が監督に奮闘した裏側とは。尺や予算との闘い、そして監督として向き合う撮影と編集。エネルギーがほとばしる現場の模様を最速、独占でお届け。16日の初回は無料放送となるのでお見逃しなく。

  • WOWOWプライム 2021年1月16日(土)15:15〜 ※無料放送

2021年1月29日更新