WOWOWオンデマンド連載 | ドラマ「前科者」主演・有村架純が明かす壮大な冒険 / 水田信二(和牛)は“大人が本気で作る”WOWOWドラマの魅力を語る

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ナタリーではWOWOWオンデマンドの連載企画を実施中。今回は「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」で主演を務めた有村架純が、同作に込めた思いや撮影エピソードを明かす。またWOWOWドラマへの愛が深いお笑い芸人・水田信二(和牛)が登場し、ほかにはない魅力やお薦めの作品について語ってくれた。

取材・文 / 前田かおり(インタビュー)、秋葉萌実(作品解説)撮影 / 梁瀬玉実(有村架純)、TOWA(水田信二)

WOWOWオンデマンドとは?

BSの視聴環境が整っていなくてもネット環境があれば加入できる、WOWOWの番組配信サービス。テレビ、スマートフォン、パソコン、タブレットで気軽にコンテンツを視聴でき、機器は家族で5台まで登録が可能だ(※同時に利用できる端末は1台、複数契約で最大3台)。WOWOWプライム、WOWOWライブ、WOWOWシネマの3チャンネルを24時間放送同時配信(※一部の番組を除く)。さらにスポーツ・音楽・ステージ中継などのライブ配信、WOWOWで過去に放送された番組や、WOWOWオンデマンドでしか観られない番組のアーカイブ配信なども行われている。

WOWOW加入者(月額視聴料:税込2530円)は追加料金なしで視聴が可能。配信加入ルートからの申し込みは、申し込み⽉内であればいつでも解約可能の無料トライアルを実施中だ。

簡単!WOWOWオンデマンドの入り方

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有村架純 インタビュー

こんなにも人に気持ちを動かされる役柄は初めて

──「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」は保護司という職業をテーマにした作品ですが、現場ではどんなことを感じられましたか?

いろいろな役柄を演じてきて、これまでは自分の中で気持ちが揺れ動いて、演技を足し算引き算することが多かったですが、今回はなんだか違いました。人のことを思って泣いたり笑ったり、叫んだり怒ったり……。こんなにも人に気持ちを動かされる役柄は初めてかもしれないと思うぐらい。毎日こんな感じで気持ちが動いていたので、その充実感で、私、生きてるなと感じました。

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」より、有村架純演じる阿川佳代(奥)。(WOWOWオンデマンドで配信中)

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」より、有村架純演じる阿川佳代(奥)。(WOWOWオンデマンドで配信中)

──ものすごく充実した現場だったんですね。

はい。現場は本当に楽しかったんです。人と向き合うことはものすごく労力がいるし、一筋縄ではいかないことばかりでしたが(笑)。

──今回有村さんが演じた保護司は、前科者たちの更生や社会復帰を手助けする非常勤の国家公務員です。一般的にはまだあまり知られていない職業ですよね。

そうですね。保護司はボランティアだし、若い世代でやっている人は少ない。でも実際に若い保護司さんもいるということで、今回の作品によって、若い世代にも勇気を持って取り組める職業だと知っていただきたいなと思います。「前科者」はこのドラマ版でも、1月28日に公開される映画版でも、主人公の成長模様が描かれています。社会の不条理さだったり、生きにくさみたいなものが映し出されていて、とても重たい部分もありますが、岸善幸監督が描いたからこそ、エンタテインメント性のある作品に仕上がっているし、すごく観やすくなっています。

──ドラマ版のほうは“新米保護司”ということで、主人公・阿川佳代の新人時代の話ですが、映画版から先に撮られたそうですね。

佳代の保護司としての成長を描いてるので、映画版のあとにドラマ版の彼女を演じていくうえで悩むところもありました。ドラマ版のほうがちょっとマンガっぽいテイストというか、コミカルな印象があって、セリフのちょっとした違いみたいなものを意識したほうがいいのかなと思って。映画は映画、ドラマはドラマと分けたほうがいいのかなとか。実は、ドラマ版のほうも第3、4話を撮ってから、第1、2話を撮影するという順番だったんです。佳代自身の成長ぶりをどこまで出していいのか、映画版との整合性なども考えなくてはいけなかったので悩んだりして。監督たちと一緒に考えながら進めていきました。

有村架純

有村架純

──佳代はどんな女性だと思いますか? 彼女のどんなところにポイントを置いて演じられたのでしょうか。

佳代は、消えない過去や癒えない傷が原因で社会ともうまく付き合えずに生きてきた女性です。誰かのために何かをすることで、自分の存在価値を探しているような人だなと感じました。そんな彼女が、保護司として対象者と向き合っていく中で、たくさんの気付きを得て成長していく。未熟さがあるけれど、懸命に向き合ってがむしゃらに葛藤しながら生きているところを表現できればいいなと思いました。

──共感された部分や有村さんご自身に似たところはありますか?

佳代はおとなしいだけではないし、だからと言って根暗でもない。でも、怒りの沸点が普通の人とはちょっと違いますね。そこが佳代らしさというか、彼女の不器用さと言えばいいのか。劇中ではそんな佳代の一生懸命さが正義にまっしぐらな方向に行ってしまうんですが。でも、私自身の日常生活ではそういうところがあまりないんです。私は佳代とは似ていないから、彼女の気持ちをどう持っていけばいいのか悩みましたが、とにかく現場で一回、思い切ってやってみるのが一番いいかなと考えていました。

──喜怒哀楽、という言葉では簡単すぎますが、すごく振り幅の広い演技を要求されたと思います。感情の変化にどうグラデーションを付けていったのでしょうか。

緩急を自分の体の中になじませるのはどうしたらいいんだろうかと考えることもありましたが、ああしようこうしようと考えると意図的になってしまう。それは違うなと感じました。とにかく、佳代の中の衝動を大切にして、その衝動がすごく大きな炎になるのか、青い炎になるのかは現場で相手の方とやり取りしながら素直な気持ちで演じました。

私ってお芝居が好きなんだな

──誰と対峙するかで佳代の心の動きが変わる作品だと思いますが、このドラマに登場した3人の対象者の中で一番、印象に残っているのは誰でしょうか?

(石橋静河扮する斉藤)みどりさんですね。佳代にとっては、初めての対象者。まったく違うタイプだけど、心に抱えている傷は似ているんです。そういう感覚で歩み寄っていく役柄だったので、第3、4話の(大東駿介演じる)石川二朗や第5、6話の(古川琴音扮する)田村多実子との感覚とはまた違ったものがある。もちろん、佳代はそれぞれの人物に対して一生懸命なんです。でも、みどりさんにはそれとはまた違う、一歩二歩踏み込んだお互いが支え合っている感覚がある。友情とも取れるし、不思議な関係でしたね。

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」より、有村架純演じる阿川佳代(左)と石橋静河演じる斉藤みどり(右)。(WOWOWオンデマンドで配信中)

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」より、有村架純演じる阿川佳代(左)と石橋静河演じる斉藤みどり(右)。(WOWOWオンデマンドで配信中)

──不思議な関係ですか?

保護司は対象者との間に一定の距離があって、家族やプライベートなことに必要以上に踏み込んではいけないという決まりがあるんです。でも、佳代はどんどん踏み込んでいく。それはまだ新米だからなんですが、佳代の中では一番正しい距離感がわからないまま、全力で向き合った人がみどりさんだった。だから不思議な関係というか、特別な存在なのかなと思います。

──現場では、みどり役の石橋静河さんと、その場で生まれるセッションみたいなものを大切にされて演じていたのでしょうか?

とにかく、みどりさんが傷付くのが本当に嫌だなという思いがずっとありました。

──それほど、佳代に気持ちが同化していたんですね。

だから、佳代はものすごく怒るんですね、私自身も言葉で説明できないものが生まれてきたように思いました。今回の「前科者」では、そんな感情がドラマ版にしても映画版にしても、ものすごく生まれて……。でも、その答えはまだ見つかっていないんです。それだけ役にのめり込んだんじゃないかなと思います。

──保護司という役を演じて影響されたところはありますか?

道を踏み外した人の手助けをする。そんな保護司という仕事から、人とは本当に真摯に向き合わなくてはいけないと学びました。家族であっても夫婦であっても、友達であっても、その人のことを知り尽くすことは一生掛かってもできない。だからこそ面白いなと感じます。もっともっと人の奥底をたどることがその人に寄り添う一歩になるし、表面的なところでは何も判断できない。だから、想像することが本当に大切だなと改めて思いました。

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」(WOWOWオンデマンドで配信中)

──有村さんにとって、この「前科者」はどんな作品になりましたか、あるいはなりそうですか?

お芝居って楽しいな、私ってお芝居が好きなんだなと改めて思わせていただいた作品なんです。「お芝居が楽しい」という思いが更新されていくことが、自分にとって幸せで。そう感じさせてもらえる出会いがまだまだ先にもあるんだなと思えることも幸せです。そういう気持ちで満たされた作品になりました。お芝居ってこういうことだなって感じられたことが、自分のモチベーションにもなりました。

有村架純

有村架純

WOWOW作品は壮大な冒険

──「前科者」に出演されて、女優としてまた新たな思いを抱いたということですが、WOWOWではこれまでもいろんな作品に出演されていますよね。WOWOWオンデマンドでは過去の出演作を観ることもできて、有村さんの女優としての成長をたどることができます。

うれしいけれど、恥ずかしいですね。

──WOWOWに出演された初めての作品というと「ドラマW チキンレース」ですが、どんな思い出がありますか?

女優として、初めて本格的な役柄をいただいた作品です。看護師の役でしたが、ものすごく緊張して現場に入って。緊張しすぎてセリフが出てこなかったり、噛んじゃったり。共演した岡田将生さんにすごくご迷惑をおかけしました。スタッフさんにも「セリフぐらい覚えてこい」って注意されましたし……。WOWOWオンデマンドでは、そんな頃からの私が見れるんですね(笑)。

──「連続ドラマW 海に降る」は、有村さんにとって連続ドラマの初主演作品でした。有人潜水調査船の日本人初となる女性パイロットの役でしたね。

神奈川県の横須賀のほうにあるJAMSTEC(海洋研究開発機構)という施設をお借りしての撮影でした。初めての主演でいっぱいいっぱいだった記憶がありますね(笑)。撮影スケジュールもかなり詰まっていたんです。それまで、民放局のドラマでは第1話から順に撮っていく感じでしたが、この作品は1話、3話、6話の順でした。クランクインして3日目ぐらいで大事なシーンに入って……。そういった経験はこのときが初めてだったので、現場では付いて行くのに必死だったと思います。でも、共演させていただいたエンケン(遠藤憲一)さん、井上(芳雄)さん、皆さんがすごく素敵な方たちで、私もなんとかやり遂げられた気がしています。

「連続ドラマW 海に降る」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「連続ドラマW 海に降る」(WOWOWオンデマンドで配信中)

──「WOWOWオリジナルドラマ 有村架純の撮休」はとてもユニークな作品で、有村さんの素の表情はこんな感じなのかな?などいろいろなことを想像させてくれます。WOWOWの作品に出演されるときはどんな気持ちで臨んでいるのですか?

WOWOWさんの作品は、台本を読むたびにすごく壮大な冒険物語に触れたような気持ちにさせてくれて。これを演じたら、私にとって新しい扉が開けるかもしれないという淡い期待や、わくわくを感じさせてもらえるんです。「連続ドラマW そして、生きる」もそうでした。WOWOW作品に出演しているときは、自分の中で何にも代えがたい時間を過ごさせていただいている気がします。

「WOWOWオリジナルドラマ 有村架純の撮休」(WOWOWオンデマンドで配信中)

「WOWOWオリジナルドラマ 有村架純の撮休」(WOWOWオンデマンドで配信中)

──女優としていろいろな作品を演じられていますが、今後の目標は?

1つひとつを丁寧に作っていきたいという、お仕事に対する取り組み方はこの先も変わらないと思います。ただ30歳に向けて、より一層質が問われるようになっていくなと。そこに対して自分がどんなものを提示していけるかなというプレッシャーはありますね。とにかくやり続けることが、何かを見出すきっかけになると思うので、歩みを止めずにがんばっていきたいです。いろんな人と出会って、感化されて生きていきたいなと思います。