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岩手県大槌町に設置された“風の電話”をモチーフに、少女ハルが広島から故郷・岩手にたどり着くまでの道のりと心の救済を描いた本作。東日本大震災で家族を失い、広島に移り住んだハルをモトーラが演じた。
大まかな設定はありながらも、基本的には台本がない状態で行われた本作の撮影。オーディションで役を手にしたモトーラは「最初はきちんと台本があったので、その中で抜粋シーンを覚えてオーディションに行ったんです。でも私はいただいた台本を読んで、やりたくないと思って」と告白。その理由を「小さい頃から家族が亡くなってしまう話を読むと悲しい気持ちになってしまうのですが、今回はピンポイントでそういった作品だったので……。でもオーディションの日が来てしまって」と説明すると、諏訪は「よかったです、来てくれて」と笑みをこぼす。
さらにモトーラは「つらい気持ちが出てきてしまってなんにもできなかった」と言いつつ、2回目のオーディションでは即興芝居に挑戦した。「1回目のときはつらいという思いが前に出てきてしまったんですが、このときは自然に相手のことを感じられました」と回想した。モトーラを抜擢した決め手を尋ねられた諏訪は、同じくモトーラが主演する「恋恋豆花」の監督を務めた今関あきよしの話を引用し、「彼は2000人が集まったオーディションの中でモトーラさんを選んだそうなんですが、『彼女だけがまったく違う存在感だったんで』と」と説明。続けて「今日はたくさんしゃべっているけど、普段は1つ質問すると数分は考え込んで返事がない。その様子は見ていて飽きないというか、ずっと見ていられるというか。彼女は本当に映画的な存在」と称賛する。
震災で被害に遭った人々に話を聞いて撮影に臨んだという西島は「モトーラさんに現場で会ってすぐ『あ、この人は諏訪監督の現場でやらなければいけないこと、やってはいけないことがはっきりわかっている』と気付きました。この現場の進み方や、何が大事とされているかを彼女を通して知りたいと思ったほどです」と振り返った。また三浦が「今日はこういう“モデルさん”という雰囲気がありますが、撮影では役に違和感なくスッと入っていける人です」と話すと、モトーラはじっとその横顔を見つめる。対する三浦は「見ないでください! この人に見られると緊張するんです(笑)」と慌てて会場の笑いを誘っていた。
約20年ぶりに日本で撮影したという諏訪は「日本って今どうなっているんだろうという気持ちもありました」と述懐。「この作品は、何か大きなことを言うものではなく、1人の傷付いた女の子と一緒に旅をしていく物語。日本を見ていく中で、いろんな人がいろんな困難の中で生きていると感じました。そこにそっと寄り添いたいという思いで作っています」と語った。
第70回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に正式出品された「風の電話」は、全国で公開中。
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椿原 敦一郎 @teamokuyama
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