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ドラマ「半沢直樹」「下町ロケット」の福澤が池井戸潤の同名小説を映画化した本作は、中堅メーカー・東京建電で起きたパワハラ騒動をきっかけに、企業の矛盾や働く人々の葛藤が浮き彫りになっていく企業ドラマ。
“居眠りハッカク”と呼ばれる営業一課の万年係長・八角民夫役の萬斎は「池井戸先生と福澤監督はゴールデンコンビ。ファンの皆さんも目が肥えていらっしゃるので、(撮影現場は)非常に緊張した数ヶ月でした」と話す。
社内の絶対権力者・北川誠役の香川は、激しい言葉の応酬があるシーンの撮影を「萬斎さんは寝てるだけだし、誰がエンジンをかけるんだってことで、僕がやらないとしょうがないかなと。第1ラウンドは様子見するパターンもあるんだけど、この試合は最初から8割の力を使わないといけなかった」と振り返る。萬斎はそんな香川の芝居を「人のセリフを潰しまくってね……」と述懐し、その相手となった原島万二役の及川は「せっかく覚えてきたセリフを潰されて……(笑)。僕は第1ラウンドでノックアウトされてしまった」と笑う。及川は香川の表情筋について「まるで鉄板焼きのアワビのようによく動く」と表現し、2人で「アワビ俳優」「アワビの地獄焼き」と冗談を交わし合った。
ドラマ「半沢直樹」にも黒崎駿一役で出演し、本作ではパワハラで訴えられる坂戸宣彦役を務めた片岡。怒号を飛ばす芝居が多かったこの現場を回想し「監督がいろんな怒り方を要求するので、それに応えていたら、(監督に)『黒崎になってるよ』って笑われて。やっとオネエから普通の男性になったと思ったんですが、いけない引き出しを開けかけましたね」と笑いを起こす。また八角の元妻・淑子役の吉田は「監督は、働く男たちを下支えする女性を描くのがすごくうまいと思う。この映画にもその魅力がふんだんに盛り込まれている」と作品をアピールした。
本作で初のサラリーマン役を務めた萬斎は、次に演じてみたい役を聞かれると「ぐうたらでない役がいいかな(笑)。スナイパーをやってほしいとよく言われます」と答える。しかし及川と香川は「カッコよすぎて意外性がないかな。宇宙人とかどうですか?」「フェンシング部を立て直す選手役ってどうですか?」とそれぞれ提案。「フェンシングのお面を取ったら宇宙人、というのは?」という及川の折衷案は、香川によって即座に却下されてしまった。
福澤は、萬斎の起用理由を「前半、はっきり言って八角は活躍もせず、原作でも誰が主役かわからないくらい。でも映画には主役が必要なので、寝ているだけでも『この人が主役なんだ』という匂いのする役者さんが必要だった」と語る。すると萬斎は、大げさに自身の匂いを嗅ぐそぶりをして笑いを誘った。
ここで原作者の池井戸からの手紙が読み上げられた。「映画の八角の姿が原作のイメージとかけ離れていたので、萬斎さんはきっと小説を読んでいないに違いないと、勝手に決めつけておりました。しかし先日の対談で、原作をしっかりと読み込んで撮影に望まれたと伺い、驚きました」「それであの八角を作り上げたのは、天賦の才能以外の何者でもありません。萬斎さんの演者としての間口の広さ、奥深さに大きな感銘を受けました」という言葉に、萬斎は「恐縮至極でございます」とコメント。萬斎はさらに「変なやつが第1形態、第2形態と変わっていく部分を心がけました……ゴジラじゃないですけど(笑)。ズレた目線が実は本物を見ている、というようなことを原作から感じ取ったんです」と役作りを振り返った。
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